日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 水惑星学

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、コンビーナ:渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)

15:30 〜 15:45

[MIS17-07] 陸惑星大気大循環モデルを用いた太陽定数増大実験

*石渡 正樹1中島 健介2高橋 芳幸3林 祥介3、水野 陽太1 (1.北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻、2.九州大学大学院理学研究院、3.神戸大学大学院理学研究科)

キーワード:陸惑星、大気大循環モデル、太陽定数、液体の水の存在条件、生命存在可能性、完全蒸発

陸惑星は表層における水量が地球の海洋に比べて非常に少ない惑星であり (Abe et al., 2005), 系外惑星のありえる 1 つの姿であると考えられている. Abe et al. (2011) は陸惑星設定を用いた大気大循環モデル (GCM) 実験を実施することにより, 惑星の自転傾斜角を0とした場合に, 太陽定数がおよそ 1500W/m2 から 2300W/m2 の範囲内では惑星表面上に液体の水が存在可能であるという結果を示した. この結果は, 全球が海洋で覆われた水惑星よりも少量の水しか存在しない陸惑星の方が広い太陽定数で惑星表面に液体の水を保持するということを示すものとなっており, 惑星表層における水の存在を条件を考える上で陸惑星が重要な研究対象であることを示すものである. 本研究では, 陸惑星表面における液体の水の存在条件が何によって決定されるのかを理解することを目指して GCM 実験による陸惑星気候の再検討を行う.

用いるモデルは大気大循環モデル DCPAM5 (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam, Noda et al., 2017) である. その力学過程は 3 次元球面プリミティブ方程式系から成る. 水平離散化には球面調和関数を用いたスペクトル法を適用し, 鉛直座標には σ (表面気圧で規格化した圧力) を採用し, Arakawa and Suarez (1983)の方法を用いて離散化を行なう. 放射計算には, Chou et al. (1996)および Chou et al. (2001) の地球大気用スキームを使用する. 積雲過程には、Relaxed Arakawa and Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) を, 鉛直乱流拡散過程には Mellor and Yamada (1974) level 2.5 の方法を, 地表面フラックスの計算には Louis et al. (1982) の方法を用いる. 水蒸気および雲水の移流は Kashimura et al. (2013)のセミラグランジュ法物質移流スキームを用いて計算する. 地表面モデルとして、バケツモデル (Manabe, 1969)を惑星表面全体に適用する. 太陽定数の値として 1366 W/m2 から 2400 W/m2 の範囲を考える. 自転角速度は地球の値を用いる. 初期に与える土壌水分量は, 水の深さにして 40 cm とする。解像度については, 水平方向には球面調和関数展開の切断波数を 21 とし, 鉛直層数 は 26 とする. 自転傾斜角として, 23.4 度 (地球の値) と 0 度の 2 通りを用いる.

我々が Abe et al. (2011) と同様の, 自転傾斜角を 0 とした実験を行ったところ, Abe et al. (2011) とは異なり, 太陽定数が 2400 W/m2を超えても表層には液体の水が保持され, 土壌水分の完全蒸発が起こらないという結果が得られた. 講演では, 自転傾斜角を変更した実験も含めて, 陸惑星表面に液体の水が保持される条件について議論する.