11:00 〜 13:00
[MIS17-P06] スメクタイト層間主要陽イオンの分光学的キャラクタリゼーション
キーワード:パーシビアランス、スメクタイト、赤外分光測定
現在の火星は、寒冷で乾燥した惑星だが、かつては表面に液体の水が存在していたことが明らかになっている(Ojha et al 2015)。また、過去の海洋水の大部分が、現在でも凍土や含水鉱物として地下に存在している可能性も示唆されている(Vaniman et al., 2013)。含水鉱物の存在は、水の指標として捉えられるだけでなく、かつて含水鉱物が接触していた間隙水の水質を知る手掛かりとなるため、惑星に存在した海洋や湖沼の水質を記録するものとして重要視されている(Fukushi et al., 2019)。NASAの火星探査ミッションMars2020の探査車パーシビアランスは、火星のかつて湖沼があったジェゼロクレーターを探査している。ジェゼロクレーターには、湖沼堆積物に含水鉱物であるスメクタイトが存在する (Ehlmann et al 2008)。スメクタイトは溶液中で層間陽イオンを溶液の陽イオンと交換する性質を持つ。したがって、スメクタイトの層間陽イオン組成から、かつて接触していた間隙水の水質を制約することが可能である(Fukushi et al 2019)。本研究では、パーシビアランスのスメクタイトに関する測定データからジェゼロクレーターのスメクタイトの層間陽イオン組成を見積もる手法を開発することを目的とした。パーシビアランスはラマン・可視近赤外分光測定を行う装置を搭載しており、含水鉱物に対して詳細な分析を行う。パーシビアランスの測定データから層間陽イオン組成を見積もる方法を確立するために、本研究では、実験室で作成した層間陽イオン種の割合が既知なスメクタイトのラマン分光・赤外分光測定を行い、ピーク面積の増減や、ピーク位置のシフトについて分析することによって、今後パーシビアランスが火星で測定したスメクタイトのラマン分光・赤外分光測定の結果から、火星のスメクタイトの層間陽イオン組成を決定することができるのかについて検討する。