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[MIS18-21] 中央北太平洋の古海水Os同位体記録に基づく古第三紀温室地球の化学風化と火成活動に関する考察
キーワード:Os同位体、古第三紀、hyperthermls、暁新世始新世温暖化極大 (PETM)、化学風化、北大西洋火成岩区 (NAIP)
古第三紀前期は、数百万年規模の温暖化が進行するなかで、「hyperthermals」と呼ばれるより短い時間スケール (数万〜十数万年間) の温暖化イベントが繰り返し発生した時代として知られている[1].これらの短期的温暖化イベントは,炭素同位体比の明瞭な負異常を伴っており,同位体的に軽い炭素が地球表層システムへ大量に注入されたことを示唆している[2].特に,一連の温暖化イベントの中で最も規模が大きかった暁新世−始新世境界温暖化極大 (Paleocene-Eocene Thermal Maximum, PETM) は,同時期に噴出した北大西洋火成岩区 (North Atlantic Igneous Province, NAIP) との関連が指摘されている[3,4].
海水のOs同位体比 (187Os/188Os) は,海洋に流入する大陸地殻由来の放射改変起源Osフラックスとマントル様成分 (海底熱水,玄武岩,宇宙塵) 由来の非放射改変起源Osフラックスの混合によって決定される.したがって,宇宙塵由来のOsフラックスが短期間では一定であったとすると,陸上岩石の化学風化強度の変化や大規模な火成活動に伴い,海水Os同位体比が変動している可能性がある[5-7].
陸上の珪酸塩の化学風化は,古第三紀hyperthermalsからの回復に重要な役割を果たしたと考えられる.海水Os同位体記録から,PETMにおいて陸上岩石の化学風化が促進され,大気CO2が消費されたことが,先行研究で示唆されている[5,6].また,北極海やテチス海周辺において,PETM開始直前での海水Os同位体比のネガティブシフトから,NAIPの噴出がPETMのトリガーとなった可能性が考えられている[6].しかしながら,太平洋遠洋域においては,PETMとそれに続くhyperthermalsを含む,古第三紀前期の海水Os同位体比は復元されていない.
陸上岩石の化学風化強度の変動と巨大火成岩区であるNAIPの噴出が全球的な海水Os同位体システムに及ぼした影響を明らかにするため,本研究では中央北太平洋で採取されたOcean Drilling Program Site 1215 Hole Aにおけるhyperthermals (PETM, Eocene Thermal Maximum (ETM) 2,ETM3) を記録した海底堆積物 [8] の187Os/188Osを分析した.発表では,Os同位体分析の結果に基づき,hyperthermalsに対する珪酸塩の化学風化強度変動ならびにPETMとNAIP火成活動の関係性について考察する.
[1] Zachos et al. (2008) Nature 451, 279-283. [2] Lunt et al. (2011) Nature Geoscience 4, 775-778. [3] Svensen et al. (2004) Nature 429, 542-545. [4] Gutjahr et al. (2017) Nature 548, 573-577. [5] Ravizza et al. (2001) Paleoceanography 16, 155-163. [6] Dickson et al. (2015) Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 438, 300-307. [7] Kuwahara et al. (2021) Scientific Reports 11, 5695. [8] Leon-Rodriquez and Dickens (2010) Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 298, 409-420.
キーワード:Os同位体,古第三紀,hyperthermls,暁新世始新世温暖化極大 (PETM),化学風化,北大西洋火成岩区 (NAIP),巨大火成岩区 (LIPs)
海水のOs同位体比 (187Os/188Os) は,海洋に流入する大陸地殻由来の放射改変起源Osフラックスとマントル様成分 (海底熱水,玄武岩,宇宙塵) 由来の非放射改変起源Osフラックスの混合によって決定される.したがって,宇宙塵由来のOsフラックスが短期間では一定であったとすると,陸上岩石の化学風化強度の変化や大規模な火成活動に伴い,海水Os同位体比が変動している可能性がある[5-7].
陸上の珪酸塩の化学風化は,古第三紀hyperthermalsからの回復に重要な役割を果たしたと考えられる.海水Os同位体記録から,PETMにおいて陸上岩石の化学風化が促進され,大気CO2が消費されたことが,先行研究で示唆されている[5,6].また,北極海やテチス海周辺において,PETM開始直前での海水Os同位体比のネガティブシフトから,NAIPの噴出がPETMのトリガーとなった可能性が考えられている[6].しかしながら,太平洋遠洋域においては,PETMとそれに続くhyperthermalsを含む,古第三紀前期の海水Os同位体比は復元されていない.
陸上岩石の化学風化強度の変動と巨大火成岩区であるNAIPの噴出が全球的な海水Os同位体システムに及ぼした影響を明らかにするため,本研究では中央北太平洋で採取されたOcean Drilling Program Site 1215 Hole Aにおけるhyperthermals (PETM, Eocene Thermal Maximum (ETM) 2,ETM3) を記録した海底堆積物 [8] の187Os/188Osを分析した.発表では,Os同位体分析の結果に基づき,hyperthermalsに対する珪酸塩の化学風化強度変動ならびにPETMとNAIP火成活動の関係性について考察する.
[1] Zachos et al. (2008) Nature 451, 279-283. [2] Lunt et al. (2011) Nature Geoscience 4, 775-778. [3] Svensen et al. (2004) Nature 429, 542-545. [4] Gutjahr et al. (2017) Nature 548, 573-577. [5] Ravizza et al. (2001) Paleoceanography 16, 155-163. [6] Dickson et al. (2015) Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 438, 300-307. [7] Kuwahara et al. (2021) Scientific Reports 11, 5695. [8] Leon-Rodriquez and Dickens (2010) Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 298, 409-420.
キーワード:Os同位体,古第三紀,hyperthermls,暁新世始新世温暖化極大 (PETM),化学風化,北大西洋火成岩区 (NAIP),巨大火成岩区 (LIPs)