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[MIS18-26] 白亜紀下部アルビアン期の海洋無酸素現象1bに伴う南半球高緯度地域の古環境変動
キーワード:海洋無酸素事変1b、南半球高緯度地域、IODP Exp.369 U1513
白亜紀は火山活動が盛んであり,現在よりもはるかに地球の平均気温が高かった(Scotese et al., 2021,Earth Science Reviews).パルス的な火成活動によって少なくとも一部の海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events)が誘発されたと考えられている.後期アプチアン期から前期アルビアン期にはOAE1bが発生したが(Leckie et al., 2002,Paleoceanography),OAE1bに関する研究は北半球低緯度地域に偏っており,その全体像を明らかにするため南半球に関する研究が求められている.そこで本研究では,白亜紀当時南半球高緯度地域に位置していた南西オーストラリアのメンテレ海盆で得られたIODP Site U1513試料を用いて OAE1b層準の調査を行った.まずOAE1bに伴う炭素同位体比変動を検出し,対比を試みた.次に炭素同位体比変動と連動する古環境変動が存在するのかを全有機炭素量(TOC), 全窒素量(TN), 有機炭素同位体比,炭酸塩の炭素および酸素同位体比分析結果を用いて考察した.その結果U1513からもOAE1b(Paquier層準)に特徴的な炭素同位体比変動を,有機炭素および炭酸塩炭素の両方から検出することができた.また酸素同位体比よりOAE1bに関連して10度以上にも及ぶ急激な温暖化が発生したこと,OAE1b終了後徐々に表層水温が低下したことが示唆された.TOC/TN比より,有機物が主に陸上植物に由来し,温暖化/寒冷化に連動して陸上植物供給量が増減していた可能性が示唆された.以上のように南半球高緯度域に位置するU1513周辺はOAE1bの影響を受けていた.OAE1bは北半球のみならず南半球にも影響を及ぼしたイベントであり,全球的なイベントだった可能性が高い.