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[MIS20-09] 南大洋子午面循環における中規模渦による水平拡散
キーワード:南大洋子午面循環、水平渦拡散、南極周極流
南大洋子午面循環の構造に与える渦構造の効果を明らかにするため、南極周極流(ACC)の南限付近に位置する110E61S4340mの地点で2017年1月から2018年1月の一年間にわたる係留観測データを解析した。水温、流速ともに鉛直方向にほぼ同位相で振動する順圧的な構造が顕著に見られた。流速変動の周期は夏から秋では80日程度、冬季には60日程度で流速自体も少し弱まる様子が認められた。係留系で得られた流れは、衛星の海面高度から推定される準地衡流の流れとよく対応していることから、この流速変動は、海面高度に顕著に見られる中規模渦に伴う流れを反映したものと考えられた。年平均および季節平均流には、いわゆる子午面鉛直循環を示すような流速構造、すなわち底層での北上する流れは見られず、東西方向の傾圧的な流れと夏季~秋季に顕著な3.2㎝/s程度の重圧的な南下流を示した。この平均流の構造の変化と季節海氷域の低緯度側への張り出し、海面高度の変動との間には密接な関係があることが認められた。力学的なバランスを調べた結果、順圧的な南下流の変動は、スベルドラップ輸送とボトムプレッシャートルクによってほぼ説明できることが分かった。準地衡流的な特徴を持つ渦の水平スケールを調べた結果、1000dbar以深では海底上まで約50㎞でほぼ同じであることが示された。この渦運動による水平温度フラックスは、乱流等による鉛直方向のフラックスと比べ、1桁程度大きいことが示された。南大洋インド洋セクターは他のセターと比べ、季節海氷域の渦エネルギーが高いことが分かり、当該海域においては、子午面循環を示唆すような水塊分布が形成される理由として、準地衡流渦の水平拡散による水温や塩分の分布構造によるものと考えられた。