日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (35) (Ch.35)

コンビーナ:関 宰(北海道大学低温科学研究所)、コンビーナ:菅沼 悠介(国立極地研究所)、箕輪 昌紘(北海道大学・低温科学研究所)、座長:関 宰(北海道大学低温科学研究所)、菅沼 悠介(国立極地研究所)

11:00 〜 13:00

[MIS20-P09] 衛星重力データ、衛星高度計データを用いた南極氷床の長期質量変動決定

*山本 圭香1奥野 淳一2土井 浩一郎2福田 洋一2 (1.国立天文台、2.国立極地研究所)

キーワード:南極氷床変動、衛星重力観測、衛星高度計観測

南極の氷床質量バランスの推定精度は、近年の衛星測地技術の発展に伴い大きく向上した。特にGRACE、GRACE-FOといった重力測定衛星データの利用は、大スケールの氷床の時間変化を質量の変化として見積もることができる有用な手段の一つである。
しかしながら、重力測定衛星が観測するのは、鉛直方向の質量の変化の総和であり、南極においては氷床変動の他にGlacial Isostatic Adjustment (GIA)による固体地球内部の質量再分配の影響も顕著である。氷床の質量変動を得るにはGIAの影響を差し引かなければならないが、既存のGIAモデルを使用した場合、モデル間のばらつきが非常に大きく、その結果、使用するGIAモデルの違いにより得られる氷床質量変動値が大きく異なるという問題が生じる。
重力測定衛星のデータに加え、氷床表面の高度の時間変化を測定する衛星高度計のデータを使用することは、この問題を解決するための手段の1つである。原理的には、質量の時間変動、衛星高度計から得られる表面高度の時間変動の観測値から、各グリッド点における質量変化と高度変化の観測方程式を立て、時間方向の最小二乗法によって、氷床変動と、GIAによる変動を未知数として解くことで、両者のシグナルの分離をおこなうことが可能であり、既存のGIAモデルとは独立に氷床変動値の導出が可能である。本研究では、約20年間の複数の重力測定衛星(GRACE、GRACE-FO)および衛星高度計(ICESat、ICESat-2、Cryosat-2)のデータを用い、氷床変動成分と、GIA成分の分離をおこなった。発表では、得られた南極氷床の2002年から2021年までの長期氷床質量変動、およびGIAの変動の空間パターンについて、考察し報告を行う。