日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 歴史学×地球惑星科学

2022年5月27日(金) 13:45 〜 15:15 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、コンビーナ:芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、コンビーナ:玉澤 春史(京都市立芸術大学)、座長:芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、加納 靖之(東京大学地震研究所)

15:00 〜 15:15

[MIS22-05] れきすけ:カード型モデルを用いた歴史資料のための異分野協働型情報共有プラットフォーム

*市野 美夏1,2増田 耕一3北本 朝展1,2 (1.情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター、2.国立情報学研究所、3.立正大学)

キーワード:歴史資料、分野間連携、情報共有システム、メタデータ、時空間情報、歴史気候学

日本には、自然や人間および社会に関するさまざまな事象(気象、地震、火山噴火、収穫、相場、飢饉など)を記述した歴史資料(以降、史料)が数多く残っている。これらは、地震学、気候学、天文学などの自然科学、社会科学、人文科学など、多分野の研究に利用されてきた。これらの史料にある情報を利用するには、資料の探査と入手、手書き文字の読み取りとデジタルテキストへ変換、フォーマットの標準化、研究に関連する現象の記述の抽出、さらにそれらを統合したデータセットの構築などが必要である。特に、歴史学者以外の研究者にとって、このデータ構造化を進めることは困難である。史料の高い重要性以上に、どこに適切な研究史料があるのかを確認すること自体が容易ではなく、史料を利用した研究への参加を阻んでいる。そこで、本研究では、史料に含まれる情報について、多分野で共有するためのシステム「れきすけ」を開発した。まず、2018年にプロトタイプを構築し、2019年には現在のれきすけの原型であるversion1を公開した。そして、2020年にカード型モデルによるデータスキーマを用いたversion2を開発し、さらに、ユーザビリティなどの改修を重ねている。特に、課題であった複数の情報提供者からの登録が可能となった。また、原資料にはじまり、翻刻データ、解析用の統合されたデータなどの、さまざまな形式や、気候学、地震学など各分野に特化した情報を抽出したデータなど、多分野における多様な史料やデータに関する情報が記述できるデータベースとなった。
れきすけは、史料の書誌情報や学術情報だけではなく、研究者の経験や知識も含めて、学際的な協働の基に、共有することを目指したプラットフォームである。れきすけは、研究者が研究目的のために有用な史料をより容易に特定し入手することを支援する。さらに、史料やそれに関する情報だけではなく、これまでの研究における史料に関する経験や専門的な知識を共有する。それにより、異分野の研究者同士の協力、協働を促進することが期待できる。現在、れきすけには歴史気候学で利用されている史料をはじめ、地震に関する史料が登録されている。これらは、地球惑星科学の研究に利用され、歴史的な事象の背景となる自然現象を復元するために重要である。これまでの史料ポータルとの大きな違いは、これら地球惑星科学のデータを扱うための時空間情報を取り扱っている点である。時間情報については、HuTime (http://www.hutime.jp/)を利用し、西暦和暦に対応させている。また、地名カードで位置情報を扱い、地名データベースであるGeoLOD (https://geolod.ex.nii.ac.jp/)とリンクさせた。これらの工夫により、これまでの研究の知見を活かしながら、自然と人間社会の時空間的なつながりの理解を促進し、地球惑星科学と人文・社会科学との学際的な協働作業によって新しい知識を創出に貢献していけると考えている。一方で、日々多くの史料が失われつつあり、史料の多様な活用は史料の価値を上げ、その保全につながる。本報告では、歴史気候学研究におけるれきすけの活用事例を示すとともに、利点、使いやすさ、その他の残された課題を議論する。