日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 歴史学×地球惑星科学

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (28) (Ch.28)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、コンビーナ:芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、コンビーナ:玉澤 春史(京都市立芸術大学)、座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)

11:00 〜 13:00

[MIS22-P04] 1596年9月に近畿地方で発生した地震に関する震度の検討

*大邑 潤三1加納 靖之1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:歴史地震、震度、GIS

1596年9月に近畿地方でM7.5程度とされる地震が発生した(いわゆる慶長伏見地震).本地震はトレンチ調査や考古学的な地震痕跡の調査により,有馬-高槻断層帯の活動によって引き起こされたことが確実とされる.本研究では史料から改めて震度分布図を作成し,公表されている有馬-高槻断層帯の地震動予測地図と比較した.その結果,有馬-高槻断層帯の活動により史料に基づく震度をある程度説明できることを明らかにした.一方で記録が詳細さを欠く点などから,本地震に六甲・淡路断層帯が関与したかについては判断できないとの結論に至った.
本地震に関しては史料をもとに起震断層を特定しようとする研究が長年行われてきた.その内,1980~90年代に行われた一連の研究に対して,大阪平野および大阪湾岸地域の震度を低く見積もっているとの指摘がなされている.この指摘を受けて当該研究における震度判定プロセスの何が問題であったのか検証を行った.その結果,京都-奈良地方が震源であるとの先入観のもと,それに矛盾する地点については,地盤による地震波の増幅や液状化現象,崖崩れが発生したと憶測して強引に被害を説明し,震度を低く見積もっていることが明らかになった.被害が判明する地点や史料が偏在することが,先入観をもたらした一因と考えられる.
 歴史地震の震度判定プロセスには研究者の主観が入り込みやすく,史料の多寡や質の違いによって得られる震度の信頼度が変わってくる.そのため第三者が検証可能な形で震度判定プロセスをデータとして提示することが必要である.これは本分野の発展にも繋がると考える.データの提示にあたっては,シミュレーション分析に利用できる精度の位置情報と,史料解釈の結果などを付し,二次利用が容易なオープンデータとして公開されることが望ましい.こうしたデータの作成には集合知を利用することや,分野を越えた議論をもとにデータを整備できるようにする仕組みが必要である.

1596年畿内の地震(推定震度付き座標データ) https://github.com/ohmurajunzo/1596_Fushimi