11:00 〜 13:00
[MIS23-P02] 二重偏波レーダーを用いた火山噴煙の解析的研究(初期解析結果)
キーワード:火山噴煙、気象レーダー、桜島
1. はじめに
鹿児島地方気象台では、二重偏波レーダーを用いた火山噴煙の解析的研究について、気象研究所火山研究部と共に取り組んでいる。
気象庁における火山の噴煙観測は、主に監視カメラに依存している。そのため、火口付近が視界不良の場合、噴煙の観測が不可能になる。そのような状況下においても、気象レーダーを用いることで噴煙に関する情報を即時的に得ることが出来る。また、気象庁が提供している降灰予報では、噴煙高度を初期値として利用しており、視界不良時の噴煙高度の把握は予報の改善にも繋がる。しかし、これまでに使用されてきた単偏波気象レーダーを用いた噴煙の観測では、雨と灰を判別するのは難しい。一方、二重偏波気象レーダーはターゲットの粒子形状に関する高度な情報を得ることが可能であるため、雨灰判別などの課題解決が期待される。気象庁が降水の監視に使用している一般気象レーダーや空港気象ドップラーレーダー(DRAW)では、現在、二重偏波化が進んでいる。
本研究では、二重偏波気象レーダーを用いて、桜島での噴火事例の解析を進めることで、雨灰判別などの課題を解決するための糸口を見つけることを目指している。
2. 解析に用いるデータおよびツール
今回の解析には、国土交通省XRAINの桜島レーダー(二重偏波XバンドMPレーダー)や気象研究所XバンドMPレーダー(MRI-XMP)のデータを用いている。データ解析は、気象研究所で開発されたレーダー解析ソフト“Draft”(田中・鈴木(2000))を用いて行っている。Draftはレーダーデータのフォーマット変換やレーダーの解析、描画までを行うコマンド群からなっている。
3. 事例解析
本研究では、桜島で発生した晴天時(2018年6月16日)の噴煙エコーと曇天時(2018年6月10日)の噴煙エコーについて、解析を行った。
反射強度はいずれの場合も、噴火開始時が最も大きく、時間の経過とともに減少している様子を確認することができた。曇天時は反射強度の低下に伴い、周辺の雨雲との差が無くなっていたため、このような場合に反射強度だけでは雨雲と判別することは困難であると考えられる。
晴天時には、時間が経過するにつれて、噴煙エコーの中の反射因子差が平均的に高まっていたことを確認した。この現象は先行研究でも確認されており、噴煙内部の粒子の落下姿勢を反映していると考えられる。一方、曇天時には、噴火発生直後の反射因子差が大きく、時間が経つにつれて、反射因子差の大きな箇所が見られなくなった。これは、火山灰が上昇しながら雨雲中の水分によって凝集し、反射因子差が小さくなった可能性が考えられる。
4. 今後の取り組み
今後も引き続き事例解析を行い、解析結果を蓄積していくことで、噴煙/火山灰雲エコーと降水エコーの違いをより明瞭化し、雨灰判別などの課題の解決を目指す。また、二重偏波一般気象レーダーやDRAWの二重偏波化が進んだ際に、特に気象庁内のレーダー気象学初学者向けの即時的な噴煙解析ツールの作成を目指したい。
参考文献
田中恵信,鈴木修, 2000 : レーダー解析ソフト"Draft"の開発, 2000年気象学会春季大会予稿集,77,303
謝辞
本研究で利用したXRAINデータは、国土交通省より提供されたものであり、利用したXRAINデータセットは、文部科学省の委託業務により開発・運用されているデータ統合・解析システム(DIAS)の下で、収集・提供されたものである。
鹿児島地方気象台では、二重偏波レーダーを用いた火山噴煙の解析的研究について、気象研究所火山研究部と共に取り組んでいる。
気象庁における火山の噴煙観測は、主に監視カメラに依存している。そのため、火口付近が視界不良の場合、噴煙の観測が不可能になる。そのような状況下においても、気象レーダーを用いることで噴煙に関する情報を即時的に得ることが出来る。また、気象庁が提供している降灰予報では、噴煙高度を初期値として利用しており、視界不良時の噴煙高度の把握は予報の改善にも繋がる。しかし、これまでに使用されてきた単偏波気象レーダーを用いた噴煙の観測では、雨と灰を判別するのは難しい。一方、二重偏波気象レーダーはターゲットの粒子形状に関する高度な情報を得ることが可能であるため、雨灰判別などの課題解決が期待される。気象庁が降水の監視に使用している一般気象レーダーや空港気象ドップラーレーダー(DRAW)では、現在、二重偏波化が進んでいる。
本研究では、二重偏波気象レーダーを用いて、桜島での噴火事例の解析を進めることで、雨灰判別などの課題を解決するための糸口を見つけることを目指している。
2. 解析に用いるデータおよびツール
今回の解析には、国土交通省XRAINの桜島レーダー(二重偏波XバンドMPレーダー)や気象研究所XバンドMPレーダー(MRI-XMP)のデータを用いている。データ解析は、気象研究所で開発されたレーダー解析ソフト“Draft”(田中・鈴木(2000))を用いて行っている。Draftはレーダーデータのフォーマット変換やレーダーの解析、描画までを行うコマンド群からなっている。
3. 事例解析
本研究では、桜島で発生した晴天時(2018年6月16日)の噴煙エコーと曇天時(2018年6月10日)の噴煙エコーについて、解析を行った。
反射強度はいずれの場合も、噴火開始時が最も大きく、時間の経過とともに減少している様子を確認することができた。曇天時は反射強度の低下に伴い、周辺の雨雲との差が無くなっていたため、このような場合に反射強度だけでは雨雲と判別することは困難であると考えられる。
晴天時には、時間が経過するにつれて、噴煙エコーの中の反射因子差が平均的に高まっていたことを確認した。この現象は先行研究でも確認されており、噴煙内部の粒子の落下姿勢を反映していると考えられる。一方、曇天時には、噴火発生直後の反射因子差が大きく、時間が経つにつれて、反射因子差の大きな箇所が見られなくなった。これは、火山灰が上昇しながら雨雲中の水分によって凝集し、反射因子差が小さくなった可能性が考えられる。
4. 今後の取り組み
今後も引き続き事例解析を行い、解析結果を蓄積していくことで、噴煙/火山灰雲エコーと降水エコーの違いをより明瞭化し、雨灰判別などの課題の解決を目指す。また、二重偏波一般気象レーダーやDRAWの二重偏波化が進んだ際に、特に気象庁内のレーダー気象学初学者向けの即時的な噴煙解析ツールの作成を目指したい。
参考文献
田中恵信,鈴木修, 2000 : レーダー解析ソフト"Draft"の開発, 2000年気象学会春季大会予稿集,77,303
謝辞
本研究で利用したXRAINデータは、国土交通省より提供されたものであり、利用したXRAINデータセットは、文部科学省の委託業務により開発・運用されているデータ統合・解析システム(DIAS)の下で、収集・提供されたものである。