11:30 〜 11:45
[MIS24-04] 外側陸棚の冷湧水場 –横浜市の下部更新統大船層・小柴層の例-
★招待講演
キーワード:冷湧水、第四紀、外側陸棚
横浜市瀬上に露出する下部更新統大船層から小柴層は陸棚域の冷湧水環境を保存している.これまでの研究(間嶋ほか,1996; 舘・間嶋,1998; Kitazaki and Majima, 2003; Majima et al., 2005; 坪井ほか,2010; Nozaki et al., 2014)と新たに得られた露頭とコアの研究から以下の結果を得た.
メタン冷湧水に伴う活発な嫌気的メタン酸化の結果,13Cに枯渇した自生炭酸塩と硫化水素イオンに依存した主にツキガイ類からなる化学合成二枚貝が多量に産出する.自生炭酸塩はアラゴナイト,高Mgカルサイト,ドロマイトからなり,ドロマイトの起源は高Mgカルサイトのドロマイト化である可能性が高い.
湧水中心部
湧水中心部では,著しく破砕された貝類と顕著な浸食面が観察され,小規模なポックマークの存在が示唆される.
湧水縁辺部
自生炭酸塩は,現在のメタン冷湧水場の溶存無機炭素の炭素安定同位体比の鉛直プロファイルと同様な炭素安定同位体比鉛直プロファイルを示す.著しく13Cに枯渇した古細菌と真正細菌のバイオマーカーが最も多産する層準は,自生炭酸塩の炭素安定同位体比が最も低い層準と一致し,過去のMSI(Methane Sulfate Iinterface)層準が特定できたことを示す.この結果は,湧水縁辺部の自生炭酸塩の沈殿がスナップショットモデルで説明できることを示す.
湧水活動の時代とテンポ
湧水活動は有孔虫の酸素安定同対比に基づく年代モデルから1.68Maから1.48Maにかけて断続的に継続していた.湧水活動は氷期間氷期サイクルに同期し,湧水活動が活発だったのは氷期である.この結果は,現在の陸棚に湧水活動があまり発見されていないことと整合的である.氷期の湧水活動の痕跡は陸棚の高い堆積率によって地層に覆われてしまっているに違いない.
文献
間嶋隆一・舘由紀子・柴崎琢自,1996.横浜市の上総層群から発見された現地性化学合成化石群集.化石, 61号,47-54.
舘由紀子・間嶋隆一,1998.外側陸棚の冷湧水性化学合成化石群集 –下部更新統上総層群小柴層の例-.地質学雑誌,第104巻,第1号,24-41.
Kitazaki, T. and Majima, R., 2003. A slope to outer-shelf cold-seep assemblage in the Plio-Pleistocene Kazusa Group, Pacific side of central Japan. Paleontological Research, vol. 7, no. 3, 279-296.
Majima, R., Nobuhara, T. and Kitazaki, T., 2005. Review of fossil chemosynthetic assemblages in Japan, Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 227, 86–123.
坪井美里・中村栄子・間嶋隆一・北里 洋・菅 寿美・力石嘉人・加藤和浩・和田秀樹・大河内直彦・佐藤蓉子・浜名徳明, 2010. 分子化石による過去の湧水活動の復元 ―更新統小柴層と大船層の例―. 化石,87号,5-21.
Nozaki, A., Majima, R., Kameo, K., Sakai, S., Kouda, A., Kawagata, S., Wada, H. and Kitazato, H., 2014. Geology and age model of the Lower Pleistocene Nojima, Ofuna, and Koshiba Formations of the middle Kazusa Group, a forearc basin-fill sequence on the Miura Peninsula, the Pacific side of central Japan. Island Arc, 23, 157-179.
メタン冷湧水に伴う活発な嫌気的メタン酸化の結果,13Cに枯渇した自生炭酸塩と硫化水素イオンに依存した主にツキガイ類からなる化学合成二枚貝が多量に産出する.自生炭酸塩はアラゴナイト,高Mgカルサイト,ドロマイトからなり,ドロマイトの起源は高Mgカルサイトのドロマイト化である可能性が高い.
湧水中心部
湧水中心部では,著しく破砕された貝類と顕著な浸食面が観察され,小規模なポックマークの存在が示唆される.
湧水縁辺部
自生炭酸塩は,現在のメタン冷湧水場の溶存無機炭素の炭素安定同位体比の鉛直プロファイルと同様な炭素安定同位体比鉛直プロファイルを示す.著しく13Cに枯渇した古細菌と真正細菌のバイオマーカーが最も多産する層準は,自生炭酸塩の炭素安定同位体比が最も低い層準と一致し,過去のMSI(Methane Sulfate Iinterface)層準が特定できたことを示す.この結果は,湧水縁辺部の自生炭酸塩の沈殿がスナップショットモデルで説明できることを示す.
湧水活動の時代とテンポ
湧水活動は有孔虫の酸素安定同対比に基づく年代モデルから1.68Maから1.48Maにかけて断続的に継続していた.湧水活動は氷期間氷期サイクルに同期し,湧水活動が活発だったのは氷期である.この結果は,現在の陸棚に湧水活動があまり発見されていないことと整合的である.氷期の湧水活動の痕跡は陸棚の高い堆積率によって地層に覆われてしまっているに違いない.
文献
間嶋隆一・舘由紀子・柴崎琢自,1996.横浜市の上総層群から発見された現地性化学合成化石群集.化石, 61号,47-54.
舘由紀子・間嶋隆一,1998.外側陸棚の冷湧水性化学合成化石群集 –下部更新統上総層群小柴層の例-.地質学雑誌,第104巻,第1号,24-41.
Kitazaki, T. and Majima, R., 2003. A slope to outer-shelf cold-seep assemblage in the Plio-Pleistocene Kazusa Group, Pacific side of central Japan. Paleontological Research, vol. 7, no. 3, 279-296.
Majima, R., Nobuhara, T. and Kitazaki, T., 2005. Review of fossil chemosynthetic assemblages in Japan, Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 227, 86–123.
坪井美里・中村栄子・間嶋隆一・北里 洋・菅 寿美・力石嘉人・加藤和浩・和田秀樹・大河内直彦・佐藤蓉子・浜名徳明, 2010. 分子化石による過去の湧水活動の復元 ―更新統小柴層と大船層の例―. 化石,87号,5-21.
Nozaki, A., Majima, R., Kameo, K., Sakai, S., Kouda, A., Kawagata, S., Wada, H. and Kitazato, H., 2014. Geology and age model of the Lower Pleistocene Nojima, Ofuna, and Koshiba Formations of the middle Kazusa Group, a forearc basin-fill sequence on the Miura Peninsula, the Pacific side of central Japan. Island Arc, 23, 157-179.