11:00 〜 13:00
[MIS24-P01] 日本海東縁酒田海丘(仮称)における掘削調査で採取されたメタンハイドレートと堆積物間隙水の地球化学的特徴
キーワード:掘削コア、ガスハイドレート、メタン、間隙水
メタンハイドレートは、将来の天然ガスの安定供給につながる資源として注目されており、日本周辺海域においても資源量評価と生産技術開発が進められている。日本周辺海域のメタンハイドレートには、主に太平洋側に分布する砂層型と、主に日本海側や北海道周辺に分布する表層型の2種類がある。このうち、日本海東縁の酒田海丘(仮称)では、掘削同時検層(LWD)によって表層型メタンハイドレートの胚胎が推定されていた(Tanahashi et al., 2017)。2021年8月、産業技術総合研究所が中心となって、酒田海丘の海底地盤強度に関わるデータを採取する目的で海底地盤強度調査航海(PS21航海)が実施された。本航海では、海底下60 mまでの海底掘削を行い、酒田海丘で初めてメタンハイドレートを採取した。本発表では、掘削調査の概要と採取されたコア試料およびメタンハイドレートの地球化学分析結果を速報し、メタンハイドレートに含まれるメタンの起源、およびそれに関連した堆積物間隙水の特徴を述べる。
掘削地点は、海底疑似反射面(BSR)の分布域内でハイドレート胚胎が推定されている海丘頂部(胚胎地点RC2102A、水深530 m)と、基準地点としたBSR分布域外の海丘北西側斜面(RC2101A、水深555 m)の2地点である。このうち胚胎地点では、海底にバクテリアマットが分布し、海底下8 m、16 m、21 mでフレーク状または塊状のメタンハイドレートが見つかった。基準地点では硫酸イオン濃度が約20 mMから深度方向に減少し、海底下6 mで0 mM付近まで達したのに対し、胚胎地点では海底下1 mで硫酸イオンがほぼ0 mMであった。このことは、胚胎地点では基準地点よりも海底下深部からのメタンや流体のフラックスが高いことを示唆する。胚胎地点のハイドレート層準では、塩化物イオン濃度の顕著な減少が認められた。採取したハイドレートを分解させて得た水の酸素・水素安定同位体比と、ハイドレート–海水間の同位体分別係数から、ハイドレート形成前のオリジナルな間隙水の同位体比を推定した。推定された同位体比と実測した間隙水の値を比較すると、両者はほぼ同じか実測値の方がやや高かった。間隙水の塩化物イオン濃度の減少とやや高い酸素・水素同位体比は、ハイドレート分解によって放出された水の影響を受けていると考えられる。堆積物中のメタン濃度は、2サイトとも同様な範囲内にあり、硫酸イオンが約0 mMに達する硫酸–メタン境界(SMI)の直下で極大を示し、深度方向に減少する傾向を示した。メタンの炭素・水素安定同位体組成、および溶存無機炭素(DIC)の炭素同位体組成より、2サイトの堆積物中メタンはいずれも主に水素資化型のメタン生成経路によって生成されたと解釈された。胚胎地点で採取したメタンハイドレートに含まれるメタンも、堆積物中メタンと同様な同位体組成を示した。今後はメタン生成活性評価および遺伝子解析を通して、微生物起源メタンの生成深度や、メタンハイドレートの形成機構を解明していく。
謝辞:本研究は経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施しました。
掘削地点は、海底疑似反射面(BSR)の分布域内でハイドレート胚胎が推定されている海丘頂部(胚胎地点RC2102A、水深530 m)と、基準地点としたBSR分布域外の海丘北西側斜面(RC2101A、水深555 m)の2地点である。このうち胚胎地点では、海底にバクテリアマットが分布し、海底下8 m、16 m、21 mでフレーク状または塊状のメタンハイドレートが見つかった。基準地点では硫酸イオン濃度が約20 mMから深度方向に減少し、海底下6 mで0 mM付近まで達したのに対し、胚胎地点では海底下1 mで硫酸イオンがほぼ0 mMであった。このことは、胚胎地点では基準地点よりも海底下深部からのメタンや流体のフラックスが高いことを示唆する。胚胎地点のハイドレート層準では、塩化物イオン濃度の顕著な減少が認められた。採取したハイドレートを分解させて得た水の酸素・水素安定同位体比と、ハイドレート–海水間の同位体分別係数から、ハイドレート形成前のオリジナルな間隙水の同位体比を推定した。推定された同位体比と実測した間隙水の値を比較すると、両者はほぼ同じか実測値の方がやや高かった。間隙水の塩化物イオン濃度の減少とやや高い酸素・水素同位体比は、ハイドレート分解によって放出された水の影響を受けていると考えられる。堆積物中のメタン濃度は、2サイトとも同様な範囲内にあり、硫酸イオンが約0 mMに達する硫酸–メタン境界(SMI)の直下で極大を示し、深度方向に減少する傾向を示した。メタンの炭素・水素安定同位体組成、および溶存無機炭素(DIC)の炭素同位体組成より、2サイトの堆積物中メタンはいずれも主に水素資化型のメタン生成経路によって生成されたと解釈された。胚胎地点で採取したメタンハイドレートに含まれるメタンも、堆積物中メタンと同様な同位体組成を示した。今後はメタン生成活性評価および遺伝子解析を通して、微生物起源メタンの生成深度や、メタンハイドレートの形成機構を解明していく。
謝辞:本研究は経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施しました。