09:00 〜 09:15
[MIS25-01] 月の線状重力異常の成因の地質学的検証
キーワード:月の火成活動、線状重力異常、貫入岩、月周回衛星かぐや、クレーター
月のマグマ活動は最後の衝突盆地形成の時期 (38億年前) よりも前から始まっていたと考えられるが、月初期のマグマ活動の規模やその時間変化についてはよくわかっていない。NASAのGravity Recovery and Interior Laboratory (GRAIL)により行われた重力測定により、ブーゲー重力場に線状に延びる正の重力異常、線状重力異常(LGA)が発見された(Andrews-Hanna et al., 2013)。これは層序学的に月初期(約38億年前)に形成されたと推定されているものであり、現在明らかになっていない月初期の熱進化の履歴を持つと期待できる。形成仮説としては月の半径が増加することによりリソスフェアが伸張し、形成された伸張場にマントル溶融物の玄武岩質マグマが貫入したと考えられている。
天体衝突によるクレーター形成において、地下からの掘削物をクレーターの周辺に堆積・露出させる。そこで本研究では月周回衛星かぐや(SELENE)搭載のマルチバンドイメージャ(MI)の反射率マップを用いて、LGA上に形成されたクレーター周辺の鉄・チタン量、鉱物の相対量を求め、貫入岩物質の探索を行うことで、LGA形成仮説の検証を行った。
解析にはLGA形成後に大規模なマグマ噴出のない月裏側北半球にある2つのLGA(LGA1,LGA20)を用いた。LGA1では鉄量・チタン量ともに高い領域が存在しないことから、貫入岩露出の可能性が低い。一方で、LGA20上にあるLomonosovクレーターのリムにおいて、下部地殻物質 (ここでは主に斜方輝石と斜長石からなるノーライトと考えられる) と比較して鉄量が高く (12-14 wt%)、玄武岩組成に近い鉱物量比を持つ領域を発見した。Lomonosovクレーターのリムに存在することは、これらの物質がLomonosovクレーター形成以前は地下に存在したことを示している。また、これらの物質は玄武岩質物質と下部地殻物質の中間的な鉄・チタン量、鉱物量比を持つことから、それらの混合物であると考えられる。このことから発見された高鉄量物質はLGAを構成する貫入岩が露出したものである可能性が高い。その場合、iSALEによるLomonosovクレーターの掘削深度の見積もりから、マグマ貫入の深さの下限値は約7㎞と推定される。
天体衝突によるクレーター形成において、地下からの掘削物をクレーターの周辺に堆積・露出させる。そこで本研究では月周回衛星かぐや(SELENE)搭載のマルチバンドイメージャ(MI)の反射率マップを用いて、LGA上に形成されたクレーター周辺の鉄・チタン量、鉱物の相対量を求め、貫入岩物質の探索を行うことで、LGA形成仮説の検証を行った。
解析にはLGA形成後に大規模なマグマ噴出のない月裏側北半球にある2つのLGA(LGA1,LGA20)を用いた。LGA1では鉄量・チタン量ともに高い領域が存在しないことから、貫入岩露出の可能性が低い。一方で、LGA20上にあるLomonosovクレーターのリムにおいて、下部地殻物質 (ここでは主に斜方輝石と斜長石からなるノーライトと考えられる) と比較して鉄量が高く (12-14 wt%)、玄武岩組成に近い鉱物量比を持つ領域を発見した。Lomonosovクレーターのリムに存在することは、これらの物質がLomonosovクレーター形成以前は地下に存在したことを示している。また、これらの物質は玄武岩質物質と下部地殻物質の中間的な鉄・チタン量、鉱物量比を持つことから、それらの混合物であると考えられる。このことから発見された高鉄量物質はLGAを構成する貫入岩が露出したものである可能性が高い。その場合、iSALEによるLomonosovクレーターの掘削深度の見積もりから、マグマ貫入の深さの下限値は約7㎞と推定される。