11:00 〜 13:00
[MIS25-P02] 三宅島の割れ目噴火口洞窟と火星アルシア火山における類似洞窟の存在可能性
キーワード:割れ目噴火口、火山洞窟、アルシア火山、三宅島
[はじめに]
地球上の玄武岩火山に出来る地下空洞として溶岩チューブ洞窟の数が圧倒的に多いが,Pit craterやFissure vent等の割れ目にできる噴火口洞窟としての地下空洞も存在する. 日本には富士山(小御岳氷穴第一,第二,第三,弓射塚氷穴,雷穴),伊豆大島(C-9噴火口洞窟),三宅島(三宅島A-3,B-5,B-9 Rift cave),八丈島(永劫Rift cave第一,第二,第三)などに存在する[1].火成活動のあった火星でも大量の玄武岩溶岩流を流したため溶岩チューブ洞窟が圧倒的と考えられるが,噴火口洞窟の存在可能性も否定できない.ここでは三宅島の例を取り上げ噴火口洞窟の特徴の紹介を行い,火星アルシア火山での類似洞窟の存在可能性について検討した.
[三宅島の1983年割れ目噴火口洞窟]
三宅島の1983年噴火により割れ目から溶岩が流出した[2,3].その結果形成された割れ目噴火口洞窟(fissure vent cave)の特徴は,割れ目に沿ってマグマがスコリア層を割って上昇して出来た噴火口で火口直径に対して幅は極めて狭いが,深さが大きく、深部構造はマグマだまりの大きさやマグマのドレンバックの様子によって様相が異なる. 縦孔壁面には薄い溶岩の層(3~5cm)がスコリア層に残り,極めて剝がれやすい.マグマの上昇による充填やドレンバックの繰り返しによっては何層も薄い層が壁面に形成される場合もある.1983年噴火で形成された三宅島の割れ目噴火口洞窟の深さは14m~33m,幅は数m,割れ目空洞の長さは最大52mある[4].図1に1983年溶岩流の位置,図2に割れ目噴火口洞窟の位置,図3,4,5に洞窟断面図,写真1,写真2にA-3 Rift caveの洞口部,割れ目噴火口内部,写真3に壁面に付着した生成鉱物[5]を示す.
[火星アルシア火山の縦孔]
アルシア火山の山腹急斜面と裾野にいくつかの縦孔が発見されている[6,7].縦孔下に想定される溶岩チューブ洞窟の空洞高さの推定を表面傾斜度とアルシア火山の溶岩降伏値から行った[8].斜面が急こう配であると溶岩流の厚さが十分でなく大きな溶岩チューブを形成できない.アルシア火山の山腹急斜面(傾斜度1.0°~3.5°)の縦孔における推定値は縦孔深さと大きな乖離があり,噴火口洞窟(pit crater cave,fissure vent cave)の可能性が高い.一方,裾野の緩斜面(傾斜度0.12°~0.54°)にある縦孔では推定チューブ高さとほぼ同等な値を示すことから溶岩チューブ洞窟の存在可能性が高いと考えられる[9].
[おわりに]
火星の縦孔下の空洞がどのようなものであるか明らかにするための縦孔内部構造の探査が,火成活動の理解ためにまず必要である.噴火口洞窟によりテクトニクス[10]や噴火の形態,溶岩チューブ洞窟により噴火後の溶岩流動機構に迫れるのではないかと期待される.
参考文献:
[1]小川孝徳(1988):日本の火山洞窟,洞人,第7巻,第3号,p69-80
[2]大島治(1984):三宅島1983年噴火:火口列と溶岩流(日本火山学会 1984年度春季大会講演要旨),1984年火山,29巻 2号 p119-120
[3]大島治(1985):60A三宅島1983年噴火の火口列と溶岩流その後(日本火山学会 1985年度秋季大会講演要旨),1985年火山30巻 4号 p.322-323,
[4]Takanori Ogawa(1991):The rift caves in Japan,6th International Symposium on Vulcanospeleology 1991,p249-258
[5]T.Sameshima, T.Ogawa, and N.Kashima(1988): 5th International Symposium on Vulcanospeleology,Excursion Guide Book,p75-78
[6] G.E.Cushing etal(2007):Geophys.Res.Letters,Vol.34,L17201
[7]G.Cushing(2012): CANDIDATE CAVE ENTRANCES ON MARS,Journal of Cave and Karst Studies, April 2012
[8]本多力(2017):P117火星のArsia Monsの縦穴における溶岩チューブ洞窟の存在可能性,日本火山学会秋季大会
[9]本多力(2021):MIS12-P02月・火星における溶岩チューブ洞窟と噴火口洞窟の存在可能性について,日本地球惑星科学連合2021年大会
[10]J.Perala(2015): Pit Craters of Arsia Mons Volcano, Mars, and Their Relation to Regional Volcano-Tectonism, the Department of Earth Sciences, Uppsala University
地球上の玄武岩火山に出来る地下空洞として溶岩チューブ洞窟の数が圧倒的に多いが,Pit craterやFissure vent等の割れ目にできる噴火口洞窟としての地下空洞も存在する. 日本には富士山(小御岳氷穴第一,第二,第三,弓射塚氷穴,雷穴),伊豆大島(C-9噴火口洞窟),三宅島(三宅島A-3,B-5,B-9 Rift cave),八丈島(永劫Rift cave第一,第二,第三)などに存在する[1].火成活動のあった火星でも大量の玄武岩溶岩流を流したため溶岩チューブ洞窟が圧倒的と考えられるが,噴火口洞窟の存在可能性も否定できない.ここでは三宅島の例を取り上げ噴火口洞窟の特徴の紹介を行い,火星アルシア火山での類似洞窟の存在可能性について検討した.
[三宅島の1983年割れ目噴火口洞窟]
三宅島の1983年噴火により割れ目から溶岩が流出した[2,3].その結果形成された割れ目噴火口洞窟(fissure vent cave)の特徴は,割れ目に沿ってマグマがスコリア層を割って上昇して出来た噴火口で火口直径に対して幅は極めて狭いが,深さが大きく、深部構造はマグマだまりの大きさやマグマのドレンバックの様子によって様相が異なる. 縦孔壁面には薄い溶岩の層(3~5cm)がスコリア層に残り,極めて剝がれやすい.マグマの上昇による充填やドレンバックの繰り返しによっては何層も薄い層が壁面に形成される場合もある.1983年噴火で形成された三宅島の割れ目噴火口洞窟の深さは14m~33m,幅は数m,割れ目空洞の長さは最大52mある[4].図1に1983年溶岩流の位置,図2に割れ目噴火口洞窟の位置,図3,4,5に洞窟断面図,写真1,写真2にA-3 Rift caveの洞口部,割れ目噴火口内部,写真3に壁面に付着した生成鉱物[5]を示す.
[火星アルシア火山の縦孔]
アルシア火山の山腹急斜面と裾野にいくつかの縦孔が発見されている[6,7].縦孔下に想定される溶岩チューブ洞窟の空洞高さの推定を表面傾斜度とアルシア火山の溶岩降伏値から行った[8].斜面が急こう配であると溶岩流の厚さが十分でなく大きな溶岩チューブを形成できない.アルシア火山の山腹急斜面(傾斜度1.0°~3.5°)の縦孔における推定値は縦孔深さと大きな乖離があり,噴火口洞窟(pit crater cave,fissure vent cave)の可能性が高い.一方,裾野の緩斜面(傾斜度0.12°~0.54°)にある縦孔では推定チューブ高さとほぼ同等な値を示すことから溶岩チューブ洞窟の存在可能性が高いと考えられる[9].
[おわりに]
火星の縦孔下の空洞がどのようなものであるか明らかにするための縦孔内部構造の探査が,火成活動の理解ためにまず必要である.噴火口洞窟によりテクトニクス[10]や噴火の形態,溶岩チューブ洞窟により噴火後の溶岩流動機構に迫れるのではないかと期待される.
参考文献:
[1]小川孝徳(1988):日本の火山洞窟,洞人,第7巻,第3号,p69-80
[2]大島治(1984):三宅島1983年噴火:火口列と溶岩流(日本火山学会 1984年度春季大会講演要旨),1984年火山,29巻 2号 p119-120
[3]大島治(1985):60A三宅島1983年噴火の火口列と溶岩流その後(日本火山学会 1985年度秋季大会講演要旨),1985年火山30巻 4号 p.322-323,
[4]Takanori Ogawa(1991):The rift caves in Japan,6th International Symposium on Vulcanospeleology 1991,p249-258
[5]T.Sameshima, T.Ogawa, and N.Kashima(1988): 5th International Symposium on Vulcanospeleology,Excursion Guide Book,p75-78
[6] G.E.Cushing etal(2007):Geophys.Res.Letters,Vol.34,L17201
[7]G.Cushing(2012): CANDIDATE CAVE ENTRANCES ON MARS,Journal of Cave and Karst Studies, April 2012
[8]本多力(2017):P117火星のArsia Monsの縦穴における溶岩チューブ洞窟の存在可能性,日本火山学会秋季大会
[9]本多力(2021):MIS12-P02月・火星における溶岩チューブ洞窟と噴火口洞窟の存在可能性について,日本地球惑星科学連合2021年大会
[10]J.Perala(2015): Pit Craters of Arsia Mons Volcano, Mars, and Their Relation to Regional Volcano-Tectonism, the Department of Earth Sciences, Uppsala University