14:45 〜 15:00
[MIS26-03] 丹後半島北方の表層型MH賦存域におけるAUV調査に基づく、音響空白域、ポックマーク、マウンドの特徴
キーワード:表層型メタンハイドレート(MH) 、AUV 、音響マッピング 、音響空白域、ポックマーク、マウンド
非在来型燃料資源であるメタンハイドレート(MH)は、日本周辺海域に砂層型、表層型の2つのタイプが分布していることが知られている。このうち主として日本海及び北海道周辺海域に分布する表層型MHは、海底面から深さ約100 mよりも浅い海底下に断続的に賦存する。産業技術総合研究所では、経済産業省からの委託により平成25(2013)年度から表層型MHの分布や産状などの資源量の把握に関する調査を実施してきたが、令和元(2019)年度からは生産技術の開発や環境影響評価を含めた総合調査を開始した。この中で、詳細データが揃っている3海域(酒田沖、上越沖、丹後半島北方)をモデル調査海域として、将来の海洋産出試験に必要なデータを取得する海洋調査を実施している。
若狭湾や丹後半島の北方およそ100 km沖合にある丹後半島北方海域では、これまでに広域及び詳細地形地質調査、高分解能三次元地震探査、海洋電磁探査、掘削同時検層、掘削試料採取、ROVによる海底観察及び試料採取が行われてきた。本発表では、上記のうち第七開洋丸搭載マルチビーム測深器(最終出力の水平分解能50 m)、AUV Deep1搭載マルチビーム測深器(同3 m)、サイドスキャンソナー(同1.2 m)及びサブボトムプロファイラ(SBP;垂直分解能6–10 cm)を用いた音響調査で取得された地形、後方散乱強度、浅部地質構造のデータを中心に解析した結果について報告する。
調査海域は、大陸棚より深い水深の平坦面である縁辺台地から北に延びる地形的高まりの北端部である。調査海域の中央には、南北方向に伸長し上面が比較的平坦な高まりと、高まり頂部にマウンドが複数認められる。掘削同時検層及び掘削試料採取によってマウンド直下に表層型MHの胚胎が確認されている。高まりの西側は隠岐トラフと境界を共有する急崖で、地滑り地形が連なっている。東側は若狭海盆南西端へ繋がる緩斜面に相当し、斜面の一部に馬蹄形を呈する緩やかな地滑り地形が認められる。高まりの頂部から東側緩斜面にかけて広くポックマークが分布している。ポックマークの直径は数十〜500 m程度と様々で、高まり頂部では配列するように、東側緩斜面中部から若狭海盆にかけては不規則に分布するように見える。一部のポックマークは隣接するマウンドを伴うが、ほとんどのポックマークはマウンドを伴わず単独で存在する。ポックマークは地形データでは明瞭だが、音波の後方散乱強度は低い傾向にあり、広く堆積物に覆われていることが示される。一方でマウンドの後方散乱強度は高い傾向がある。
SBP断面では、調査海域では良く成層した複数の反射面(=地層面)が広く分布しており、反射面はポックマーク直下にも連続して認められる。ポックマーク直下の反射面は下方へ撓む様子を示し、顕著な断層が認められない場合が多い。下方へ撓む反射面は、その形状からいくつかのユニットに区分でき,ユニット区分は複数のポックマークで共通している。ポックマーク直下で撓む反射面が側方へ連続することから、ポックマークの成因は地層の崩壊を伴う堆積物の放出ではないことが考えられる。
SBP断面に見られる音響空白域(Acoustic blanking:音響信号の減衰が著しいまたは遮蔽され内部構造が観察できない部分)がマウンド直下で顕著に現れる一方、起伏が殆どない海底面の直下にもしばしば現れ、ポックマーク直下には稀である。音響空白域と接する反射面との境界が、曖昧な場合と明瞭な場合があり、後者の一部には音響空白域と隣接する反射面の接点から回折波が現れる場合がある。音響空白域と隣接する反射面との境界が「曖昧な」領域は調査海域の北側に見られ、境界が「明瞭な」領域は調査海域の南側に顕著である。この違いは、音響空白域の成因の違い(1.音波が吸収される領域か、2.音波がより上位で遮蔽され届かない領域か)に起因する可能性があり、前者では音響信号の減衰しやすい地質体の貫入が、後者ではより上位に音響信号を遮蔽する物質(表層型MHまたはカーボネイトクラストが想定される)が海底下浅部に存在する可能性が示唆される。また回折波が現れる領域は、調査海域の北東側の一部に見られ、回折波を形成しやすい地質境界(音響インピーダンス・コントラストの高い物質が局地的に存在する、または地層が急に途切れる場合など)がそこに存在することが示唆される。これら地域性は、表層型MHに関連する海底下浅部の環境が局地的に異なる可能性を示唆する。
本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。
若狭湾や丹後半島の北方およそ100 km沖合にある丹後半島北方海域では、これまでに広域及び詳細地形地質調査、高分解能三次元地震探査、海洋電磁探査、掘削同時検層、掘削試料採取、ROVによる海底観察及び試料採取が行われてきた。本発表では、上記のうち第七開洋丸搭載マルチビーム測深器(最終出力の水平分解能50 m)、AUV Deep1搭載マルチビーム測深器(同3 m)、サイドスキャンソナー(同1.2 m)及びサブボトムプロファイラ(SBP;垂直分解能6–10 cm)を用いた音響調査で取得された地形、後方散乱強度、浅部地質構造のデータを中心に解析した結果について報告する。
調査海域は、大陸棚より深い水深の平坦面である縁辺台地から北に延びる地形的高まりの北端部である。調査海域の中央には、南北方向に伸長し上面が比較的平坦な高まりと、高まり頂部にマウンドが複数認められる。掘削同時検層及び掘削試料採取によってマウンド直下に表層型MHの胚胎が確認されている。高まりの西側は隠岐トラフと境界を共有する急崖で、地滑り地形が連なっている。東側は若狭海盆南西端へ繋がる緩斜面に相当し、斜面の一部に馬蹄形を呈する緩やかな地滑り地形が認められる。高まりの頂部から東側緩斜面にかけて広くポックマークが分布している。ポックマークの直径は数十〜500 m程度と様々で、高まり頂部では配列するように、東側緩斜面中部から若狭海盆にかけては不規則に分布するように見える。一部のポックマークは隣接するマウンドを伴うが、ほとんどのポックマークはマウンドを伴わず単独で存在する。ポックマークは地形データでは明瞭だが、音波の後方散乱強度は低い傾向にあり、広く堆積物に覆われていることが示される。一方でマウンドの後方散乱強度は高い傾向がある。
SBP断面では、調査海域では良く成層した複数の反射面(=地層面)が広く分布しており、反射面はポックマーク直下にも連続して認められる。ポックマーク直下の反射面は下方へ撓む様子を示し、顕著な断層が認められない場合が多い。下方へ撓む反射面は、その形状からいくつかのユニットに区分でき,ユニット区分は複数のポックマークで共通している。ポックマーク直下で撓む反射面が側方へ連続することから、ポックマークの成因は地層の崩壊を伴う堆積物の放出ではないことが考えられる。
SBP断面に見られる音響空白域(Acoustic blanking:音響信号の減衰が著しいまたは遮蔽され内部構造が観察できない部分)がマウンド直下で顕著に現れる一方、起伏が殆どない海底面の直下にもしばしば現れ、ポックマーク直下には稀である。音響空白域と接する反射面との境界が、曖昧な場合と明瞭な場合があり、後者の一部には音響空白域と隣接する反射面の接点から回折波が現れる場合がある。音響空白域と隣接する反射面との境界が「曖昧な」領域は調査海域の北側に見られ、境界が「明瞭な」領域は調査海域の南側に顕著である。この違いは、音響空白域の成因の違い(1.音波が吸収される領域か、2.音波がより上位で遮蔽され届かない領域か)に起因する可能性があり、前者では音響信号の減衰しやすい地質体の貫入が、後者ではより上位に音響信号を遮蔽する物質(表層型MHまたはカーボネイトクラストが想定される)が海底下浅部に存在する可能性が示唆される。また回折波が現れる領域は、調査海域の北東側の一部に見られ、回折波を形成しやすい地質境界(音響インピーダンス・コントラストの高い物質が局地的に存在する、または地層が急に途切れる場合など)がそこに存在することが示唆される。これら地域性は、表層型MHに関連する海底下浅部の環境が局地的に異なる可能性を示唆する。
本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。