15:00 〜 15:15
[MIS26-04] 日本海東縁酒田沖における高分解能三次元反射法地震探査
キーワード:表層型メタンハイドレート、高分解能探査、三次元反射法地震探査
日本近海には、天然ガスハイドレートの賦存が知られている(佐藤ほか、1996)。太平洋側には、海底下の砂層堆積物の粒子の隙間をメタンハイドレートが充填するタイプの『砂層型』メタンハイドレートの賦存が知られ、これまで多くの研究がおこなわれてきた。一方で、日本海側には海底付近の泥質堆積層の中に比較的塊状にメタンハイドレートが賦存する『表層型』メタンハイドレートの存在が知られている。
産業技術総合研究所では、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一環として、表層型メタンハイドレートの資源量の把握や回収方法の検討・開発、環境への影響の評価に至るまで、包括的な研究開発を実施しており、現在は、海洋産出試験の実施場所の検討を行っている。その一つの候補として、日本海東縁の山形県酒田市沖海域があげられている。酒田市沖海域には、紡錘形を成す海丘(以後、酒田海丘(仮称)と呼ぶ)があり、これまでに、船舶およびAUVを用いた音響マッピング、海洋電磁探査(CSEM)、掘削同時検層(LWD)、サンプル採取等がなされてきた。それらの結果、特にLWDの結果より、酒田海丘頂部の海底下浅部には、表層型メタンハイドレート(MH)の賦存が強く示唆されている。
本研究ではこれらの既存調査結果を参照し、同海域の表層型メタンハイドレート賦存域を対象として、海底面付近から海底面下数百メートルまでの精密地下構造を三次元的に把握することを目的として、約4 km×10 km(160本の調査測線を設定)の範囲で実施された、高分解能三次元反射法地震探査(HR3D: High-Resolution 3D Seismic Reflection Survey)について紹介する。
データ取得に用いた船舶は、総トン数188トン、船体寸法38m×8.5m×3.6mの『つしま』である。発震に用いたのは、チャンバーサイズ150立方インチのGIガンであり、6.25m毎に発震を行った。受振には、100m長のストリーマーケーブルを6本平行に曳航した。各ストリーマーケーブルには6.25m間隔で16個のハイドロフォンセンサーが付いている。ストリーマーケーブル長が100mと短く、速度解析が困難であるため、500mの測線間隔で二次元反射法データを補助的に取得し、得られた速度情報をHR3Dのデータ処理に用いた。
データ処理においては、共通反射点記録でデータを並べ替えたのち、航跡の曲がりなどにより取得することができなかったBinのデータを周囲のBinのデータより補間により再構成した。また、海域の反射法探査に特徴的な、多重反射波やゴースト反射の抑制処理を実施した後、共通反射点重合および重合後マイグレーション処理を実施した。
高周波数の震源を用いたため、高分解能な結果を得ることが可能となり、微細な地質構造や断層を検出することが可能となった。特に三次元マイグレーションを行ったことにより、非常に明瞭な三次元断面を得ることができた。その結果、海底(深度約500m)~深度約900mまでの地質構造を、精度良く三次元的に求めることができ、特に海丘の北西側斜面に多数存在する、高角正断層の走向・傾斜などの地質的特徴を捉えることができた。
本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。山形県、山形県漁業協同組合の関係者の皆様にご協力をいただいた。反射法データ取得は株式会社地球科学総合研究所に担当いただいた。
参考文献:
佐藤・前川・奥田(1996):天然ガスハイドレートのメタン量と資源量の推定、地質学会誌、102、959-971.
産業技術総合研究所では、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一環として、表層型メタンハイドレートの資源量の把握や回収方法の検討・開発、環境への影響の評価に至るまで、包括的な研究開発を実施しており、現在は、海洋産出試験の実施場所の検討を行っている。その一つの候補として、日本海東縁の山形県酒田市沖海域があげられている。酒田市沖海域には、紡錘形を成す海丘(以後、酒田海丘(仮称)と呼ぶ)があり、これまでに、船舶およびAUVを用いた音響マッピング、海洋電磁探査(CSEM)、掘削同時検層(LWD)、サンプル採取等がなされてきた。それらの結果、特にLWDの結果より、酒田海丘頂部の海底下浅部には、表層型メタンハイドレート(MH)の賦存が強く示唆されている。
本研究ではこれらの既存調査結果を参照し、同海域の表層型メタンハイドレート賦存域を対象として、海底面付近から海底面下数百メートルまでの精密地下構造を三次元的に把握することを目的として、約4 km×10 km(160本の調査測線を設定)の範囲で実施された、高分解能三次元反射法地震探査(HR3D: High-Resolution 3D Seismic Reflection Survey)について紹介する。
データ取得に用いた船舶は、総トン数188トン、船体寸法38m×8.5m×3.6mの『つしま』である。発震に用いたのは、チャンバーサイズ150立方インチのGIガンであり、6.25m毎に発震を行った。受振には、100m長のストリーマーケーブルを6本平行に曳航した。各ストリーマーケーブルには6.25m間隔で16個のハイドロフォンセンサーが付いている。ストリーマーケーブル長が100mと短く、速度解析が困難であるため、500mの測線間隔で二次元反射法データを補助的に取得し、得られた速度情報をHR3Dのデータ処理に用いた。
データ処理においては、共通反射点記録でデータを並べ替えたのち、航跡の曲がりなどにより取得することができなかったBinのデータを周囲のBinのデータより補間により再構成した。また、海域の反射法探査に特徴的な、多重反射波やゴースト反射の抑制処理を実施した後、共通反射点重合および重合後マイグレーション処理を実施した。
高周波数の震源を用いたため、高分解能な結果を得ることが可能となり、微細な地質構造や断層を検出することが可能となった。特に三次元マイグレーションを行ったことにより、非常に明瞭な三次元断面を得ることができた。その結果、海底(深度約500m)~深度約900mまでの地質構造を、精度良く三次元的に求めることができ、特に海丘の北西側斜面に多数存在する、高角正断層の走向・傾斜などの地質的特徴を捉えることができた。
本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。山形県、山形県漁業協同組合の関係者の皆様にご協力をいただいた。反射法データ取得は株式会社地球科学総合研究所に担当いただいた。
参考文献:
佐藤・前川・奥田(1996):天然ガスハイドレートのメタン量と資源量の推定、地質学会誌、102、959-971.