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[MIS26-06] 酒田沖メタンハイドレート胚胎域表層堆積物における底生生物群集の特徴
キーワード:海洋堆積物、メタンハイドレート、底生生物群集、環境DNA、炭素・窒素同位体、日本海
世界各地の海底に胚胎しているメタンハイドレートは将来的なエネルギー資源としてのポテンシャルを有しており, 日本周辺海域でも開発に向けた調査が進められている. 海底資源開発のためには周辺環境への影響評価が必要不可欠であり, 開発場所の底生生物群集の特徴の解明はその基礎となる. 本研究では, 表層型メタンハイドレート胚胎域と考えられている酒田海丘(仮称)において, 地下からのメタンの噴出場所の特徴である微生物バイオマットの周辺とリファレンスサイトにて, 底生生物と堆積物コア試料を採取した. 堆積物コア試料では, 18Sおよび16S rRNA遺伝子の環境DNAメタバーコーディングと有機物炭素・窒素安定同位体組成解析を行った. 分析の結果は, バイオマット内部堆積物中で環形動物の高い相対存在比を示しており, 特にノリコイソメ科とカザリゴカイ科が見られた. またこれらの種の餌と考えられる硫黄酸化細菌やメタン酸化細菌がバイオマット中で特徴的に存在していた. バイオマット内部堆積物の有機物炭素同位体比は–30から–45‰ VPDBで, 一般的な海洋堆積物と比べて非常に低く, メタンの噴出に由来した生物群集の存在を示唆していた. メタンの噴出によるバイオマットの形成が酒田海丘の底生生物群集構造に影響している可能性がある. 将来的には生物中の同位体組成解析によって, 酒田海丘のさらなる生態系の理解が期待される. 本研究は経済産業省のガスハイドレート開発促進事業の一部として実施した.