日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT45] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (39) (Ch.39)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、コンビーナ:市原 美恵(東京大学地震研究所)、コンビーナ:乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、座長:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)

11:00 〜 13:00

[MTT45-P02] 多地点観測を用いたインフラサウンドイベント自動検出システムの構築および気象影響評価

*山本 大誠1山本 真行1 (1.高知工科大学)

キーワード:インフラサウンド、気象、雷、風、雨

本研究では、高知工科大学香美キャンパス(高知県香美市)周辺に設置した複数台のインフラサウンドセンサを用い、閾値と多地点観測を用いたイベント自動検出システムの構築を行った。インフラサウンド観測では津波や、火山噴火、落雷など様々なイベントを検知することが出来るが、観測では常に風によるノイズや、設置が室内であれば扉の開閉など様々な波形を検知する。その為イベントを自動検出することは困難であり、システムの開発が求められてきた。これまでの研究から雨量や風速等の気象条件がインフラサウンド計測に影響を与えることは確認されてきたが、どの程度の影響を与えるのかの調査は十分でなかった。
インフラサウンドセンサとしてSAYA ADXⅢ-INF04LE(以下INF04)を用いた。イベント検出には1地点閾値検出と3地点同時検出の2段階で行った。1地点閾値検出では各観測点にて観測したデータから閾値を超える信号を検出し、イベントと見做す。しかしこの手法だけでは風によるノイズや扉の開閉など局地的に大きな信号もイベントと見做してしまう。そこで閾値検出を3地点以上で行った後、3地点同時検出として検出時刻差の計算を行う。同一イベントの場合、時刻差の最大値は直線を音速で伝搬した際である為、その時刻差以内であれば同一のイベントとして検出させた。
インフラサウンド観測に気象条件が与える影響の評価については、香美キャンパス内の屋外観測小屋にてインフラサウンドと風速、雨量の同時観測を行った。気象センサとして、米国Onset Computer社製の風速計(S-WSB-M003)と雨量計(S-RGB-M002)を用いた。
観測期間は3地点が同時稼働していた2020年10月24日から2021年10月12日まで(2021年3月22日から5月6日を除く)の308日間である。閾値1 Paでは、各観測点において閾値を超える数千件のイベントが検出された。検出された全イベントの時刻を用いて3同時地点検出を行った結果11件のイベントが検出された。この11件の内訳では、9件が雷鳴と思われるイベント、残り2件が突風および未知波源によるノイズと推定された。
一方、最大瞬間風速によるインフラサウンドHF帯(0.1~50 Hz)最大値の変動を統計的に調べた結果、例えば閾値1 Paの場合、風速が5 m/sを超えると最大値は閾値を超える結果となった。ある大雨の日の計測降雨量とインフラサウンドLE帯(~0.1 Hz)の比較では、観測地周辺で局地的大雨が発生したタイミングで、3地点にて対応した約200 Paの減少が見られたが、約8 km離れた別の観測点では大きな減少はなかった。
結論として、本研究室が高知県内で運用中のインフラサウンドセンサINF04を用い、閾値と複数観測点の同時性を用いたイベント自動検出システムを開発し、計308日間のデータに対し計11件のイベントが検出できた。気象とインフラサウンドの同時観測では、風速と観測値の関係や、1例のみであるが降雨量との関係性を確認できた。