11:00 〜 13:00
[MZZ47-P05] 全岩Sr同位体組成によるマンガンクラストの燐灰化年代の推定
キーワード:海洋鉄マンガンクラスト、ストロンチウム同位体、燐灰土
海洋のマンガンクラストには,下部層もしくは全体が燐灰化作用を被っているものがある。これがいつ起こったのかという問題はなかなか難しい。
マンガンクラストには様々な年代決定法があるが,Pb・Nd・Osなど重い同位体による層序学やBe年代決定法では,燐灰化している部分とその上部の燐灰化していない部分の境界の年代をもって,その燐灰化作用が起こった上限の年代を押さえることができる。一方,それがいつから継続していたのか,という問いには答えられない。
Hein et al. (1993)やHyeong et al. (2013)は,海山域から得られる燐灰土のSr同位体層序学から西太平洋における燐灰化作用の発生年代を見積もっている。それによると,西太平洋における燐灰化作用は36Ma〜12Ma間に起こり,とくに始新世−漸新世境界付近にそのピークがある.
原理的には,燐灰化したマンガンクラストについても同様の手法を用いれば,マンガンクラストが燐灰化作用が受けた年代を見積もることができるはずだが,実際には,化学的な手法により燐灰石相のSrのみを抽出することは極めて困難である(例えば,VonderHaar et al., 1995)。一般にマンガンクラストは多孔質であり,鉄マンガン酸化物に取り込まれたSrは絶えず新しい海水のそれと置換しており(例えば,Ito et al., 1998),その影響を排除することは非常に難しい。
これらの点を踏まえ本研究においては,西太平洋の小笠原海台・松原海山から得られた燐灰土試料と燐灰化したマンガンクラストを用いて,全岩Sr同位体組成を検討した。
分析の結果は,アパタイト相に取り込まれた燐灰化作用が起こったときの海水Sr同位体組成は保持される,燐灰化作用を受けたクラストに含まれるケイ酸塩相中Srは無視できるほど小さい,アパタイト相以外に含まれるSr同位体組成はすべて現在の海水Srにより置換されている,という仮定を置くと,非常に単純に解釈できることがわかった。
本仮定に基づくと,本海域における燐灰化作用は最低4度起こっており,そのときの海水Sr同位体組成(年代)は0.70745(白亜紀),0.70770(49Ma)〜0.70782(34Ma),0.70798(29.8Ma),0.70880(14.6Ma)である。松原海山から得られたD886は白亜紀の燐灰土を基盤として鉄マンガン酸化物が成長し,34Maに現在の深さ0.8mm〜2cm部分がまとめて燐灰化したと思われる。その後,表面から0.8mm部分が成長した。一方,小笠原海台から得られたD858はやや複雑で,深さ73mm〜75mmの部分が49Ma,63mm〜70mmが34Ma,53mm〜62mm部分が14.6Maと三回の燐灰化作用を被っている可能性が示された。また,燐灰化作用を受けていない表層約50mm部分は14.6Ma以降に成長したと思われる。
今後,上記仮定の妥当性については検討する必要があるが,手法が簡便であるにもかかわらず,一つのクラスト内での複数の燐灰化作用の年代を決定できるポテンシャルを持っており,将来に期待できる。
マンガンクラストには様々な年代決定法があるが,Pb・Nd・Osなど重い同位体による層序学やBe年代決定法では,燐灰化している部分とその上部の燐灰化していない部分の境界の年代をもって,その燐灰化作用が起こった上限の年代を押さえることができる。一方,それがいつから継続していたのか,という問いには答えられない。
Hein et al. (1993)やHyeong et al. (2013)は,海山域から得られる燐灰土のSr同位体層序学から西太平洋における燐灰化作用の発生年代を見積もっている。それによると,西太平洋における燐灰化作用は36Ma〜12Ma間に起こり,とくに始新世−漸新世境界付近にそのピークがある.
原理的には,燐灰化したマンガンクラストについても同様の手法を用いれば,マンガンクラストが燐灰化作用が受けた年代を見積もることができるはずだが,実際には,化学的な手法により燐灰石相のSrのみを抽出することは極めて困難である(例えば,VonderHaar et al., 1995)。一般にマンガンクラストは多孔質であり,鉄マンガン酸化物に取り込まれたSrは絶えず新しい海水のそれと置換しており(例えば,Ito et al., 1998),その影響を排除することは非常に難しい。
これらの点を踏まえ本研究においては,西太平洋の小笠原海台・松原海山から得られた燐灰土試料と燐灰化したマンガンクラストを用いて,全岩Sr同位体組成を検討した。
分析の結果は,アパタイト相に取り込まれた燐灰化作用が起こったときの海水Sr同位体組成は保持される,燐灰化作用を受けたクラストに含まれるケイ酸塩相中Srは無視できるほど小さい,アパタイト相以外に含まれるSr同位体組成はすべて現在の海水Srにより置換されている,という仮定を置くと,非常に単純に解釈できることがわかった。
本仮定に基づくと,本海域における燐灰化作用は最低4度起こっており,そのときの海水Sr同位体組成(年代)は0.70745(白亜紀),0.70770(49Ma)〜0.70782(34Ma),0.70798(29.8Ma),0.70880(14.6Ma)である。松原海山から得られたD886は白亜紀の燐灰土を基盤として鉄マンガン酸化物が成長し,34Maに現在の深さ0.8mm〜2cm部分がまとめて燐灰化したと思われる。その後,表面から0.8mm部分が成長した。一方,小笠原海台から得られたD858はやや複雑で,深さ73mm〜75mmの部分が49Ma,63mm〜70mmが34Ma,53mm〜62mm部分が14.6Maと三回の燐灰化作用を被っている可能性が示された。また,燐灰化作用を受けていない表層約50mm部分は14.6Ma以降に成長したと思われる。
今後,上記仮定の妥当性については検討する必要があるが,手法が簡便であるにもかかわらず,一つのクラスト内での複数の燐灰化作用の年代を決定できるポテンシャルを持っており,将来に期待できる。