日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ48] 再生可能エネルギーと地球科学

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、コンビーナ:野原 大輔(電力中央研究所)、コンビーナ:島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、コンビーナ:宇野 史睦(日本大学文理学部)、座長:宇野 史睦(日本大学文理学部)

14:03 〜 14:18

[MZZ48-02] Auto-Encoderを用いたエリアPV発電予測のための気象画像情報の圧縮に関する一検討

*森 友輔1、若尾 真治1大竹 秀明2、高松 尚宏2、大関 崇2 (1.早稲田大学、2.産業技術総合研究所)


キーワード:太陽光発電、エリアPV出力予測、オートエンコーダ、畳み込みニューラルネットワーク、潜在空間

現在、電力系統への大量導入が進んでいる太陽光発電(photovoltaics : PV)には、日射量に応じて出力が変動する特性がある。電力系統においては電力の需要と供給はバランスさせる必要があり、PVの変動する発電出力の特性は電力系統のバランスを乱す可能性がある。その対策として、PV出力の予測情報を基に需給の調整を行うといったエネルギーマネジメントが実施されている。しかしながら、予測情報には誤差があり、特に、予測を大きく外した場合には需給調整の際に電力系統に悪影響を与える可能性がある。したがって、PV出力の予測においては平均的な誤差だけでなく大外しも削減する必要がある。筆者らは日本の東京電力管内のエリアPV出力(管内全体のPVの出力)の予測について検討を行ってきた[1]。具体的には、Auto-Encoderを用いて東京電力エリアを含む地域の気象画像の情報を圧縮し、圧縮した情報を用いてエリアPV出力を予測する手法を提案した[1]。本稿では、Auto-Encoderによって3つの気象要素(日射量、下層雲量、積算降水量)の画像を圧縮する際に適切なAuto-Encoderの潜在空間の次元数について検討を行った。
本稿では、予測モデルとして、図1に示す畳み込みニューラルネットワークを用いたAuto-Encoderの構造を使用する[1]。Auto-Encoderとは中間に低次元の潜在空間を持つニューラルネットワーク構造の1つであり、Encoderを通して潜在空間に圧縮された情報が、Decoderを通して元の情報を再現できるように学習させることで、画像の特徴を損なうことなく入力の情報を圧縮することが可能である。本稿ではAuto-Encoderを用いて低次元の潜在空間に気象画像の情報を圧縮し、圧縮した潜在空間の情報を用いて独立に形成した全結合のニューラルネットワークを通してエリアPV出力を予測する。予測モデルの学習の際にはAuto-Encoderによる画像の再現とエリアPV出力の予測を同時に学習させる。開発手法により、計算負荷を抑えながら、データ量として膨大な気象の空間情報を効果的に活用して、精度よくエリアPV発電量の予測を行うことができる。
入力の気象画像のデータとしては気象庁のメソアンサンブル予報システム(Meso-scale Ensemble Prediction System : MEPS)のコントロールランであるメンバー00のメソモデル(Meso-Scale Model : MSM)による数値予報値を用いる。関東地域における5kmメッシュ上の予報値を用いて1枚60×60ピクセルのサイズの画像を使用する[1]。使用する気象要素としては日射量、下層雲量、積算降水量を使用する。
以上の条件のもと、潜在空間の次元数を変化させてエリアPV出力の予測を行うために適切な潜在空間の次元数について検討した。4か月の期間においてエリアPV発電量予測を実施した際の予測誤差と画像再現の誤差を計算した結果、60×60×3のサイズの情報を圧縮するために必要な潜在空間の次元数としては15程度であることが確認された。
今後の検討としては、メンバー00(MSM)に加え、MEPSの摂動ランであるメンバー01~20の情報も提案の予測モデルに入力し、その予測精度について検証を行う。

謝辞
本研究のMEPSの使用に関してご協力いただいた気象庁、気象研究所に深謝の意を表する。

参考文献
[1]森友輔, 若尾真治, 大竹秀明, 高松尚宏, 大関崇, “Auto-Encoderを用いたエリアPV発電予測に関する基礎的検討,” 電気学会2021年12月1日新エネルギ-・環境研究会, pp.67-72, 2021