日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ48] 再生可能エネルギーと地球科学

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、コンビーナ:野原 大輔(電力中央研究所)、コンビーナ:島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、コンビーナ:宇野 史睦(日本大学文理学部)、座長:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)

15:30 〜 15:45

[MZZ48-06] 我が国の地熱発電量増大に向けた技術課題について

*鈴木 陽大1浅沼 宏1 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所)

キーワード:地熱、超臨界、資源評価、AI、温泉、モニタリング

資源エネルギー庁は,2030年度における地熱発電導入見込量を140~155万kWと設定しているが,2020年3月末時点における地熱発電設備容量は59.3万kWにとどまり,目標達成には地熱発電量の大幅な増大が不可欠である。本発表では以下の3テーマ(次世代技術開発,資源量評価,社会受容性)を中心に,日本の地熱発電量増大に必要な技術課題等について議論する。

次世代技術開発
地熱発電量の大幅な増大には,従来型の地熱開発を着実に進めていくとともに,革新的な地熱開発技術についても研究を進めていくことが重要である。海洋プレートの沈み込みに起源を有する超臨界地熱システムは,脆性-延性遷移(BDT)領域付近またはそれ以深に位置し,超臨界流体(純水の場合は374℃以上,22.1MPa以上,海水の場合は406℃以上,29.8MPa以上)を含むため,地熱発電量の大幅な増大と,CO2排出量の削減が見込まれる。また,超臨界地熱発電技術は,「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において,温室効果ガス排出量を大幅に削減する有望な革新的技術として重要視されている。超臨界地熱発電技術開発では,これまで未開発であった地下深部に賦存する資源を対象とすることから,地質,地化学,地球物理学的知見を活用した地下深部情報の詳細評価や,酸性および高温環境下に耐える新しい資機材開発等多くの課題が存在する。本発表では日本における超臨界地熱発電技術開発の現状と将来的な課題等の概要について報告する。

資源量評価
村岡ほか(2008)は,日本初となるGISを用いた全国地熱ポテンシャルマップを作成し,蒸気フラッシュ型地熱発電に重要な150℃以上の浅部熱水系資源量を2,347万kWと推定した。これは世界3位の値であり,日本が地熱資源大国とされる所以である。全国地熱ポテンシャルマップは地熱開発有望地域を示唆するとともに,地熱資源の81.9%が国立公園の特別保護地区・特別地域内に賦存することを示すなど多くの知見をもたらしたが,必ずしも新規の地熱開発に必要な情報が得られる訳ではなかった。本発表では全国地熱ポテンシャルマップの課題とともに,AIや統計学的手法による,あらゆる地球科学情報を活用したアップデートの必要性について議論する。

社会受容性
日本は地熱資源大国であると同時に温泉資源大国でもある。日本の温泉産業は世界最大の市場規模を有しており,国内観光産業の根幹をなしている。そのため,日本における地熱開発は周辺温泉への影響評価が重要視され,過去には地元温泉事業者からの理解が得られずに開発が中止された事例も存在する。モニタリングによる温泉泉質データの連続観測および解析は温泉の水理特性の推定に繋がり,温泉事業者の理解促進に有効であるが,スケール付着に代表される地化学的課題等も存在する。本発表では,温泉モニタリングの重要性や技術課題を中心に,地熱開発の社会受容性について議論する。