日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ48] 再生可能エネルギーと地球科学

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、コンビーナ:野原 大輔(電力中央研究所)、コンビーナ:島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、コンビーナ:宇野 史睦(日本大学文理学部)、座長:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)

16:15 〜 16:30

[MZZ48-09] 人口変動に基づく木質バイオマス利用将来推計モデルの構築

*小野 遼河1、福田 陽一朗2藤井 賢彦1,3 (1.北海道大学大学院 環境科学院、2.北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所、3.北海道大学大学院 地球環境科学研究院)


キーワード:再生可能エネルギー、木質バイオマス、推計モデル

近年、日本における木質バイオマス発電所の基数は年々増加傾向にある。しかし2020年1月現在、外国から輸入した木質チップやパーム椰子殻を燃料として利用する施設が、国内で稼働する木質バイオマス発電所の総設備容量の6割強、固定価格買取制度で認定を受けた木質バイオマス発電所では認定容量の9割を占めており、国内で産出される木質バイオマス資源の発電利用は限定的である。外材を利用することにより、大量かつ安価にエネルギー源を得られるメリットがある一方で、過去に2度発生したオイルショックと同様に、国外の情勢不安により、価格の高騰や供給安定性への影響が懸念される。そこで、国内における木質バイオマスエネルギーによって、どの程度エネルギーを賄うことが可能であるか検討する必要がある。また、日本では少子高齢化による人口減少により、2050年の国内総人口は2015年比で約20%減少すると推計されている。そこで、人口ひいてはエネルギー需要の減少を考慮した将来推計が必要である。
本研究では、カーボンニュートラルの取り組みの目標年とされている2050年までの既存の木質バイオマス発電所における木質バイオマスの利用状況を明らかにするために、資源量とエネルギー需要を推計し、木質バイオマスをエネルギー利用した際の経済性と環境影響を評価した。経済性の評価指標としてライフサイクルコスト(LCC)を、環境影響の評価指標としてライフサイクルCO2(LCCO2)をそれぞれ用いた。LCC、LCCO2は、それぞれ製品・サービスのライフサイクル全体である資源の採取から処分に至るまでの総コスト、CO2排出量の総量である。システム境界は、建設以降の段階、すなわち発電所の建設時から利用を経て、廃棄に至るまでとした。
研究対象地は、離島を除く北海道全域とした。北海道は、都道府県のうち最も森林面積が大きく、間伐などにより発生する木質バイオマスが豊富に存在する。また、北海道には道内の木材の利用を想定した2,000 kW以上の定格出力を持つ発電所が4カ所存在する。そこで、本研究ではこれら4カ所の木質バイオマス発電所における木質バイオマス(森林間伐材、製材工場からの端材・廃材、建築廃材、果樹剪定枝、公園剪定枝)の利用を想定した。
本研究におけるデータの集計方法として、ユニバーサル横メルカトル座標系において縦横各1 kmのメッシュを作成し、各メッシュにおける木質バイオマス資源の資源量を低位発熱量(MJ/年)ベースで推計し集計する方法を用いた。さらに、メッシュ毎のバイオマスの利用にかかるコスト(JPY/年)とCO2排出量(CO2/年)を計算した。利用する資源の量と場所の選択は構築したモデルを基に行った。モデルは各メッシュにおける資源利用コストを低位発熱量で除して得られる発熱量あたりのコスト(JPY/MJ)が最も小さい1 kmメッシュから順に利用すると仮定した。利用する資源の累積熱量が各発電所において発電に必要とする資源の総熱量を上回った時点での累積コスト及びCO2排出量を算出した。発電所において発電に必要とする資源の総熱量は、北海道における電力需要量に北海道の全発電所の出力に対する木質バイオマス発電所の出力の比を乗じ、その値に木質バイオマス発電所における発電効率で除することにより算出した。将来における発電所必要熱量は2020年における木質バイオマス発電所の必要熱量に人口比を乗ずることで推計した。モデルの使用言語はPython3.8.12を用いた。
本連合大会においては、構築したモデルの詳細を説明すると共に、本モデルで得られた将来推計の結果について発表する。