日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ49] 人新世の地球システム論:環境・都市・社会

2022年5月27日(金) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、コンビーナ:山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、コンビーナ:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、コンビーナ:原田 尚美(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:原田 尚美(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

11:30 〜 11:45

[MZZ49-04] アナトリア中部チャタルフユック遺跡におけるゴミ堆積層の連続層序復元と高時間解像度生活環境変動解析に向けて:予察的研究

*多田 隆治1多田 賢弘1鈴木 健太1、森脇 涼太1、トルカン アリ2、松井 孝典1 (1.千葉工業大学地球学研究センター、2.アナドゥル大学)

キーワード:チャタルフユック、ゴミ堆積物、堆積シークエンス層序、生活環境

アナトリア中部のコンヤ平野南西部に位置するチャタルフユック遺跡は、今から9100年前~7600年前にかけての約1500年間に渡って栄えた世界最古の大規模集合住宅遺跡で、14層以上の建築層が識別され、建物内部の保存状態も良く、多数の人骨や遺物を産するため、当時の人々の生活様式や生活環境とその時代変化を詳しく知ることが出来る。こうした考古学的価値の高さから、世界遺産にも指定されている。
集合住宅には所々に中庭が存在し、そこには周囲の住宅から生活ごみが廃棄されて堆積し、それらはミドン堆積物と呼ばれる。但し、単なるゴミ捨て場とは異なり、一時的に動物が入れられたり、焚火をしたりと集団生活における公共スペースであったらしい。ミドン堆積物は、一般に数mm~数cmの層の積み重なりからなり、その層厚は、厚いもので~2mに達する。数十年~数百年の期間堆積し続けたと言われるが、その詳細は調べられていない。ほぼ全ての建築層層準で複数のミドン堆積物が見られることから、これらのミドン堆積物を対比し、1本の記録につなぎ合わせることが出来れば、チャタルフユックにおける約1500年間に及ぶ人々の生活記録を年あるいは季節単位で連続的に復元できると期待される。
これまでの発掘に於いて、ミドン堆積物の多くは、遺跡、遺物の発掘過程で除去され、廃棄されてきた。その結果、これまでの発掘で見出されたミドン堆積物のほとんどは既に消失し、展示用にごく一部が残されるのみである。個別の研究者により採取されたミドン堆積物試料は系統的には保管されておらず、系統的研究は行われていなかった。また、トルコでは、考古学試料の国外持ち出しはほとんど不可能なので、極力現場でデータを取得し、トルコ国内の研究機関で分析を行う必要がある。
そこで本予察研究では、発掘現場を乱すことなく、迅速かつ的確にミドン堆積物を観察・記録し、試料を採取する試みを行った。対象としたのは、東側の丘の北区の展示ドーム内にあるミドン堆積物で、層厚は約2mである。自作のスライド式の丸ノコガイドをミドン堆積物の断面に当て、鉛直方向の長さ50㎝、奥行き5㎝、幅3㎝弱の長板状試料を切り出した。採取した試料は、表面を水で濡らして剃刀の刃で削ったのち、白色灯による照明の元、高解像度カメラで撮影した。そして、ポータブルXRF(Elio Map)を用いて、元素組成の半定量分析を行った。
撮影画像の各ピクセルからRGB値を抽出し、因子分析により色端成分を抽出し、各画像内領域における色端成分の寄与率(~含有量)を求めた(詳しくは、多田賢弘の本セッション発表を参照)。一方、XRF分析の結果からも端成分を抽出し、色端成分との関係を調べた。
発表当日は、ミドン堆積物の現場での非破壊分析から、何がどこまでわかるかについて発表したい。