11:00 〜 13:00
[MZZ49-P01] アナトリア中部チャタルフユック遺跡におけるゴミ堆積層の色解析に基づく構成粒子の端成分推定
キーワード:チャタルフユック、ゴミ堆積物、非負値行列因子分解、アナトリア
アナトリア中部のチャタルフユック遺跡は、およそ9100年前~7600年前にかけての大規模集合住宅遺跡である。住居の間に点在する中庭には、住居からのゴミなどが堆積してできたミドンと呼ばれる堆積物が溜まっており、当時の生活環境を記録していると期待される(e.g., Sillito et al. 2011; 2013)。
千葉工大地球学研究センターでは、複数のミドン堆積物を対比してつなぎ合わせチャタルフユックにおける約1500年間に及ぶ生活記録を連続的に復元することを目的とした計画を開始した(詳細は、多田隆治ほか, 本セッション)。2021年に予察調査として、ミドン堆積物から長さ50 cm、奥行き5 cm、幅3cm弱のスラブ状試料を、層厚およそ1.4 m分切り出し採取した。本発表ではスラブ状試料を高解像度カメラで撮影した写真の色を利用した、構成粒子の端成分推定について報告する。端成分の推定には、多変量解析手法の一つである非負値行列因子分解(NMF; Lee and Seung 1999)法を用いた。
堆積物の色は構成粒子の種類や量比を反映すると考えられるため、色のデータ分布から構成粒子の端成分を推定できると期待できる。深海堆積物について分光色測計で測定した可視光スペクトルを用いてNMF法による端成分推定を行った例があるが(Heslop et al. 2007)、写真から抽出したRGB値をもとに端成分推定ができれば、より簡便・迅速にデータを取得でき端成分強度の2次元マップの作製も可能となるため、遺跡内堆積物の予察調査で有用になると考えられる。
NMF法を適用するためには、使用するデータが物質量に比例した線形結合可能なパラメータである必要がある。しかし、画像データとして保存されているRGB値はエンコーディングの際に非線形な変換をされているため、そのままNMF法を適用することはできない。そこで、試料と同時に色既知のカラーチャート及びグレースケールを撮影し、写真上のRGB値と反射率としてのRGB値との関係を表す補正式を導出し、写真から抽出した堆積物試料のRGB値を、反射率としてのRGB値に補正した。さらに、クベルカムンク関数により吸光度相当の値 (吸収係数/散乱係数)に変換した。散乱係数を一定と仮定すると、ランベルトベールの法則から、クベルカムンク関数で変換した値は、物質量に比例した線形結合可能な量とみなせる。
一般にNMF法では一意な解が得られない。そこで、一意な解を得るために各端成分の強度の和が1であるという制約(Du et al. 2005)を与えた。また、NMF法を実行するためには、反復計算に用いる初期値を与える必要があるほか、端成分数を事前に指定する必要がある(Lee and Seung 1999)。初期値の設定はHeslop et al. (2007)に従って、Fuzzy C-means法(Zadeh 1965)によるクラスター分けを利用した。各クラスターの重心を端成分の初期値、各クラスターへの所属度を端成分強度の初期値として用いた。まず端成分数を3個としてNMF法を実行し、端成分数を1つずつ増やした計算も繰り返し行って、計算の結果追加された端成分が写真上で粒子として確認できた場合にそれを端成分として採用した。
チャタルフユックのミドン堆積物から採取した試料の写真について上記の解析を行った結果、5つの端成分、1)黒色の礫や細粒粒子、2)白色~黄白色の礫とその破片、3)暗褐色の細粒粒子、4)赤褐色~黄褐色の細粒粒子、5)灰色~暗灰色の細粒粒子が推定された。先行研究によるミドン堆積物の薄片観察結果(Sillito et al. 2011; 2013)と比較すると、それぞれ、炭や微粒炭、しっくいの破片、日干しレンガの破片、糞や腐った果実、灰、に対応する可能性が考えられる。各端成分の寄与率の分布や、現地で予察的に行ったポータブルXRF分析結果との対応については多田隆治ほか(本セッション)で報告する。
千葉工大地球学研究センターでは、複数のミドン堆積物を対比してつなぎ合わせチャタルフユックにおける約1500年間に及ぶ生活記録を連続的に復元することを目的とした計画を開始した(詳細は、多田隆治ほか, 本セッション)。2021年に予察調査として、ミドン堆積物から長さ50 cm、奥行き5 cm、幅3cm弱のスラブ状試料を、層厚およそ1.4 m分切り出し採取した。本発表ではスラブ状試料を高解像度カメラで撮影した写真の色を利用した、構成粒子の端成分推定について報告する。端成分の推定には、多変量解析手法の一つである非負値行列因子分解(NMF; Lee and Seung 1999)法を用いた。
堆積物の色は構成粒子の種類や量比を反映すると考えられるため、色のデータ分布から構成粒子の端成分を推定できると期待できる。深海堆積物について分光色測計で測定した可視光スペクトルを用いてNMF法による端成分推定を行った例があるが(Heslop et al. 2007)、写真から抽出したRGB値をもとに端成分推定ができれば、より簡便・迅速にデータを取得でき端成分強度の2次元マップの作製も可能となるため、遺跡内堆積物の予察調査で有用になると考えられる。
NMF法を適用するためには、使用するデータが物質量に比例した線形結合可能なパラメータである必要がある。しかし、画像データとして保存されているRGB値はエンコーディングの際に非線形な変換をされているため、そのままNMF法を適用することはできない。そこで、試料と同時に色既知のカラーチャート及びグレースケールを撮影し、写真上のRGB値と反射率としてのRGB値との関係を表す補正式を導出し、写真から抽出した堆積物試料のRGB値を、反射率としてのRGB値に補正した。さらに、クベルカムンク関数により吸光度相当の値 (吸収係数/散乱係数)に変換した。散乱係数を一定と仮定すると、ランベルトベールの法則から、クベルカムンク関数で変換した値は、物質量に比例した線形結合可能な量とみなせる。
一般にNMF法では一意な解が得られない。そこで、一意な解を得るために各端成分の強度の和が1であるという制約(Du et al. 2005)を与えた。また、NMF法を実行するためには、反復計算に用いる初期値を与える必要があるほか、端成分数を事前に指定する必要がある(Lee and Seung 1999)。初期値の設定はHeslop et al. (2007)に従って、Fuzzy C-means法(Zadeh 1965)によるクラスター分けを利用した。各クラスターの重心を端成分の初期値、各クラスターへの所属度を端成分強度の初期値として用いた。まず端成分数を3個としてNMF法を実行し、端成分数を1つずつ増やした計算も繰り返し行って、計算の結果追加された端成分が写真上で粒子として確認できた場合にそれを端成分として採用した。
チャタルフユックのミドン堆積物から採取した試料の写真について上記の解析を行った結果、5つの端成分、1)黒色の礫や細粒粒子、2)白色~黄白色の礫とその破片、3)暗褐色の細粒粒子、4)赤褐色~黄褐色の細粒粒子、5)灰色~暗灰色の細粒粒子が推定された。先行研究によるミドン堆積物の薄片観察結果(Sillito et al. 2011; 2013)と比較すると、それぞれ、炭や微粒炭、しっくいの破片、日干しレンガの破片、糞や腐った果実、灰、に対応する可能性が考えられる。各端成分の寄与率の分布や、現地で予察的に行ったポータブルXRF分析結果との対応については多田隆治ほか(本セッション)で報告する。