日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[M-ZZ52] 地質と文化

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (38) (Ch.38)

コンビーナ:鈴木 寿志(大谷大学)、コンビーナ:先山 徹(NPO法人地球年代学ネットワーク 地球史研究所)、コンビーナ:川村 教一(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科、MZZ52_2PO1)

11:00 〜 13:00

[MZZ52-P01] 兵庫県淡路島に分布する凝灰岩製中世石造物石材の産地の推定

*川村 教一1 (1.兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

キーワード:凝灰岩、石造物、讃岐層群、二上層群、採石地、中世

沼島を含む兵庫県淡路島の南部には、凝灰岩類製の中世石造物(層塔、五輪塔など)が点在している。これらの石造物に利用されている凝灰岩類は島内には分布せず、島外から持ち込まれたものである。石材産地の候補として、香川県東部のさぬき市津田町の火山、あるいは志度町(奥田、2010)と言われている。先行研究のうち火山への対比の根拠は色調と岩石種のみで、岩石記載の点から不十分である。一方、奥田(2010)は石材の岩相記載を報告しているが対比候補として志度町付近のいずれの採石地跡かには言及していない。これらのことは、本地域に見られる凝灰岩石材の流通を議論するための基礎資料が整っていないことを意味する。石造物の採石地の対比のためには、石材と採石地双方の岩石学的な調査結果に基づく議論が必要であった。そこで演者は、まず淡路島内のこれら石造物の岩相観察と帯磁率測定を行った。
調査地点は、兵庫県洲本市五色町都志大日(五輪塔)、同町上堺(五輪塔)、同町下堺(五重塔)、南あわじ市沼島(五輪塔・宝篋印塔)である。いずれも中世の石造物と考えられている。現地では石造物表面の肉眼観察による岩相記載ならびに帯磁率測定を行った。
調査した凝灰岩類の石材は淡灰色~灰色の火山礫凝灰岩である。讃岐層群の凝灰岩類の分布地に知られている中世採石地跡の岩石の特徴と比較すると、高松市牟礼町牟礼(八栗寺)付近、さぬき市志度町大串の岩石とは帯磁率の範囲が一致しない。一方、さぬき市志度町小田および津田町火山の帯磁率の範囲に、淡路島の石材は収まる。岩相については、小田の凝灰岩は一部の層準を除いて火山礫を含む割合が低いのに対し、火山の凝灰岩は火山礫が小田よりも多い。この点からは淡路島の石材は火山の火山礫凝灰岩に類似する。
 
本研究費用の一部には日本学術振興会科研費(基盤研究(B)課題番号21H00621,研究代表者 先山 徹)を使用した。