10:45 〜 11:30
[O01-01] 海の火山に注目!
★招待講演
キーワード:西之島、福徳岡ノ場、トンガの海底火山
2020年の西之島の爆発的噴火と島の成長、2021年8月の福徳岡ノ場の噴火と漂流軽石,2022年1月のトンガの大規模噴火とそれに伴う気象津波,など、ここ数年「海の火山」が大きな話題となっています。特に、世界に衝撃を与えたトンガ海底火山でおこったような噴火は日本でもおこるのでしょうか。海の火山は、多くの場合、海底火山のほんの一部(山頂部)が海面上に出ているため、火山としての全体像が見えません。また、海底で噴火をしていても、海面上に異常が現れないこともしばしばあります。そのため、突然、爆発的な噴火をするという印象を持つのも無理ありません。私たちは、目に見えないものに対しては、漠然とした不安を持ちますし、見えない敵に立ち向かうことはできません。ですから、第一にやらなければいけないことは、海底火山の実態(つまり地形と海底堆積物、および海底噴火そのもの)を目で捉えて把握することです。人間は目から非常に多くの情報を得ることができます。地形や堆積物から、海底火山の過去が明らかになってきます。たとえば、海底カルデラをもっていれば、過去に巨大噴火をおこしたことがわかります。その場合、海底には多くの巨大な軽石が堆積しています。海洋研究開発機構(JAMSTEC)では調査船と無人探査機を用いて、海底火山を調査します。海底噴火そのものに遭遇したこともあります。2005年には無人探査機ハイパードルフィンはマリアナ海域の静穏な海の下、水深500mで猛る激しい海底噴火に遭遇したのです。
そもそもどうして火山は噴火するのでしょうか。地下で何がおこっているのでしょうか。海の火山と陸の火山は何が異なっているのでしょうか。私たちは、海底火山を目で捉え、次に、海底火山から溶岩や火山灰を採取します。これらは火山から噴出したマグマが固まったものです。火山のマグマは、人間の血液のように、内部の情報を与えてくれます。血液がドロドロだと血管を詰まらせて人体を危機に陥れるように、マグマがドロドロだと火道が詰まって内部の圧力が高まり、爆発的な噴火に至ります。また、マグマの成分には、そもそものマグマの起源の情報、つまり、マグマがどのようにしてつくられたのかという情報が刻まれています。マグマは地球をおおう地殻の下のマントルという岩石が部分的に融けたものです。我々は溶岩を顕微鏡で観察し、成分を様々な手法で分析して、マグマの起源やマグマがたどった歴史をたどっていきます。陸の地殻は30㎞以上あるため、マントルからマグマが通過する間に大きく化学組成を変化させます。ところが海の地殻は薄く、20㎞程度であるため、マグマはそれほど変化しません。そのため、海の火山のマグマは陸の火山のマグマに比べて、マグマの源の情報をより多く持っています。
西之島は、2020年の爆発的な噴火(2013年の噴火から断続的に続いている4回目のエピソード4噴火)によって面積は2.9 km2から4.4 km2、中央火口丘の高さも、160 mから250 mと巨大化し、東西570mの巨大な火口が口を開けました。今後西之島ではさらなる巨大噴火が起こって、カルデラが生成するかもしれません。2022年1月15日にトンガのフンガ火山が噴火し、噴煙の高さは30kmの成層圏に達したと言われ、また噴煙の半径が250kmを越え、爆発による衝撃波と津波が世界に広がりました。西之島・福徳岡ノ場は伊豆小笠原マリアナ弧に位置し、トンガのフンガ火山はトンガ-ケルマディック弧に位置します。前者はフィリピン海プレート上にあり、後者はインド・オーストラリアプレートにあって、いずれも太平洋プレートが沈み込むところにできた火山という共通点があり、また地殻構造も類似しています。西之島とフンガ火山は底径30kmで水深2,000 mから立ち上がる同じような規模の火山です。フンガ火山で何が起こったか、は今後の研究に委ねられていますし、我々はフンガ火山の噴火を貴重な先例として学んでいく必要があります。
従来大陸を構成する岩質は安山岩であり、海底を構成する岩質は玄武岩であると言われていましたが、この説では昔大陸が無かった時に大陸が生まれる機構が説明できませんでした。JAMSTECでは海底火山から安山岩が生み出されて大陸に成長するという説を提唱しています。西之島もフンガ火山も安山岩マグマを噴出する火山です。二つの火山を研究することによって大陸の起源もあきらかになる可能性があります。防災・減災の観点から海の火山を注視する必要がありますが、地球の46億年の歴史の中で、我々の生活する大陸をつくってきたのも海の火山です。海の火山に注目しましょう。
そもそもどうして火山は噴火するのでしょうか。地下で何がおこっているのでしょうか。海の火山と陸の火山は何が異なっているのでしょうか。私たちは、海底火山を目で捉え、次に、海底火山から溶岩や火山灰を採取します。これらは火山から噴出したマグマが固まったものです。火山のマグマは、人間の血液のように、内部の情報を与えてくれます。血液がドロドロだと血管を詰まらせて人体を危機に陥れるように、マグマがドロドロだと火道が詰まって内部の圧力が高まり、爆発的な噴火に至ります。また、マグマの成分には、そもそものマグマの起源の情報、つまり、マグマがどのようにしてつくられたのかという情報が刻まれています。マグマは地球をおおう地殻の下のマントルという岩石が部分的に融けたものです。我々は溶岩を顕微鏡で観察し、成分を様々な手法で分析して、マグマの起源やマグマがたどった歴史をたどっていきます。陸の地殻は30㎞以上あるため、マントルからマグマが通過する間に大きく化学組成を変化させます。ところが海の地殻は薄く、20㎞程度であるため、マグマはそれほど変化しません。そのため、海の火山のマグマは陸の火山のマグマに比べて、マグマの源の情報をより多く持っています。
西之島は、2020年の爆発的な噴火(2013年の噴火から断続的に続いている4回目のエピソード4噴火)によって面積は2.9 km2から4.4 km2、中央火口丘の高さも、160 mから250 mと巨大化し、東西570mの巨大な火口が口を開けました。今後西之島ではさらなる巨大噴火が起こって、カルデラが生成するかもしれません。2022年1月15日にトンガのフンガ火山が噴火し、噴煙の高さは30kmの成層圏に達したと言われ、また噴煙の半径が250kmを越え、爆発による衝撃波と津波が世界に広がりました。西之島・福徳岡ノ場は伊豆小笠原マリアナ弧に位置し、トンガのフンガ火山はトンガ-ケルマディック弧に位置します。前者はフィリピン海プレート上にあり、後者はインド・オーストラリアプレートにあって、いずれも太平洋プレートが沈み込むところにできた火山という共通点があり、また地殻構造も類似しています。西之島とフンガ火山は底径30kmで水深2,000 mから立ち上がる同じような規模の火山です。フンガ火山で何が起こったか、は今後の研究に委ねられていますし、我々はフンガ火山の噴火を貴重な先例として学んでいく必要があります。
従来大陸を構成する岩質は安山岩であり、海底を構成する岩質は玄武岩であると言われていましたが、この説では昔大陸が無かった時に大陸が生まれる機構が説明できませんでした。JAMSTECでは海底火山から安山岩が生み出されて大陸に成長するという説を提唱しています。西之島もフンガ火山も安山岩マグマを噴出する火山です。二つの火山を研究することによって大陸の起源もあきらかになる可能性があります。防災・減災の観点から海の火山を注視する必要がありますが、地球の46億年の歴史の中で、我々の生活する大陸をつくってきたのも海の火山です。海の火山に注目しましょう。