日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-01] 地球・惑星科学トップセミナー

2022年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、コンビーナ:道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、座長:東宮 昭彦(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)

11:30 〜 12:15

[O01-02] いま熱い!月探査のこれまでとこれから

★招待講演

*大竹 真紀子1 (1.会津大学)

キーワード:月探査、SLIM、LUPEX

はじめに:これまでの月探査で得られた情報をもとに,国内でも複数の無人・有人探査が計画・検討されるなど,今,月探査を取り巻く環境は大きく動き,また活発になっています.セミナーでは月周回衛星「かぐや」などこれまでの月探査で何が明らかとなったのか,これまでの成果をもとに現在どのような月探査ミッションが進行中なのか,また近い将来に向け検討されているアルテミス計画(NASAが提案している月面探査プログラム.月での人類の持続的な活動を目指す)やゲートウェイ計画(月周辺に国際宇宙ステーションの小型版を構築する計画)についても紹介します.いまとても熱い月探査について広い分野の方(特に若い方)に知っていただき,興味を持って参加してくださる方が増えればと願っています.

これまでの月探査:月周回衛星「かぐや」(SELENE)は2007年に打ち上げられた日本が行った初めての大型の月探査ミッションです.14個もの観測機器を搭載し,18ヶ月ミッション期間に全球の多数の観測データを取得し,月の地殻を構成する新しい岩石種やマントル起源だと考えられる岩石路頭,月にダイナモが存在していた証拠,約20億年前に起こった活発な火成活動の発見など月の形成・進化の過程を理解する上で重要な成果がれられています.「かぐや」を中心に近年の月探査で得られた成果を紹介します.

進行中の月探査:「かぐや」の成功を受け,JAXAでは2022年度の打ち上げに向け,小型月着陸実証機SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)を開発しています.SLIMは小型軽量な探査機システムと重力天体への高精度着陸技術の2つを実証するミッションです.技術実証に加えてさらなる成果の拡大を目指して,月面での観測を行うマルチバンド分光カメラを搭載します.「かぐや」によって発見された,マントル起源だと考えれる岩石の露出領域をピンポイントで狙って着陸し,マルチバンド分光カメラで観測することで,それら岩石の起源を確かめ,また含まれる鉱物の量比,化学組成を調べます.着陸は月表側の「うさぎ」の耳の付け根あたり,約200mの直径を持つ“SHIOLI”と名付けたクレータを狙います.SLIMで実証する月面への着陸技術は,今後日本が行う月や火星などへの着陸探査に生かさる予定です.SLIMのさらに次には,月極域探査LUPEX(Lunar Polar Exploration mission)をインドの宇宙機関との共同ミッションとして検討しており,検討ではインドが着陸機を,日本が探査ローバの開発を担います.近年の探査データから月の極域には水氷が濃集していると考えられており,LUPEXでは月極域に着陸し,その場で直接水氷を観測し,含有量や不純物の有無を観測することで,月極域の水を将来,燃料等の資源として利用可能かどうかを調査します.

これからの月探査:NASAはこれまでに,アルテミス計画と呼ばれる月面探査プログラムを提案しており,その中では月面への有人探査やゲートウェイ(月近傍有人拠点)の構築が計画されています.日本もこの計画に参加しており,これら活動の推進に向けて,JAXAには新しい部署,国際宇宙探査センターが作られていますし,将来の月探査を担う宇宙飛行士の募集も始まっています.さらに,JAXA等,各国の宇宙機関だけでなく,民間企業による月探査計画も始まっています.このように月探査は今とても熱く,いろいろな参加・貢献の仕方がある,面白い時代に突入しています.