日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06] 地球惑星科学のパブリックリレーションズ

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:目代 邦康(東北学院大学)、コンビーナ:岡田 小枝子(総合地球環境学研究所)、大庭 雅寛(国立大学法人 東北大学)、座長:目代 邦康(東北学院大学)、岡田 小枝子(総合地球環境学研究所)、大庭 雅寛(国立大学法人 東北大学)

14:15 〜 14:30

[O06-03] アクション・リサーチが拓く新しい地震学

★招待講演

*大木 聖子1 (1.慶應義塾大学 環境情報学部)

キーワード:アクション・リサーチ、リスク・コミュニケーション、サイエンス・コミュニケーション、自然災害

科学研究のパブリックリレーションズの多くは,1)研究者コミュニティが伝えたい内容をいかにわかりやすく伝えるか,に注力している.いわゆる一般公開や講演会などのイベントの多くがこれに分類されるが,こういった情報に関心をもっているのは科学への興味や信頼がもともと高い層であろう.

地球惑星科学は自然科学としての側面だけでなく,持続可能な社会の構築や減災・防災に資する学問としても期待されている.このような観点からは,地球惑星科学そのものへの関心は薄くとも,例えば「地震は予知できないのか」「なぜあのような被害が出たのか」といった社会的関心が高い(高まるタイミングのある)分野と言える.1)に挙げた対話が,科学に関心を抱く個からの需要に答えるもの,あるいは研究者コミュニティが積極的に伝えたい研究成果であるとすると,あらたに,2)社会が知りたいと思っていることに傾聴して,その答えとなるものを発信する役割が必要であると言える.これは時として,科学の限界や不定性などの研究者コミュニティが積極的には公開したくない情報を含む.そのためパブリックリレーションズを担当する者や部署は,パブリック側からは期待する回答が得られなかったと失望され,研究者コミュニティからは余計なことを広報していると低評価される状況に追い込まれかねない.しかし長い目で見たときの信頼関係の構築においては重要な要素である.

地球惑星科学が社会や個人の安全や安心に資する分野でもある以上,その情報伝達にはサイエンス・コミュニケーションだけではなく,リスク・コミュニケーションあるいはクライシス・コミュニケーションの要素が含まれる.特にリスク・コミュニケーションの観点からは,3)パブリック側が未だ言語化できていないリスクや疑問を共にあぶり出し,その解決方策を共に見出す役割も求められる.これは単なるパブリックリレーションズの範疇を超えて,より多くのステークホルダーと共に,共通のベターメントに向かって相互作用を及ぼし続ける「アクション・リサーチ」と呼ばれる研究ジャンルである.本発表では地震防災を例に挙げて,パブリックリレーションズに関する上記の3つの事例とその成果を紹介する.