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[O08-P02] 部分月食と火山大噴火の関連性についての研究
キーワード:月食、火山爆発指数、ダンジョンスケール、ターコイズフリンジ
2021年11月19日の部分月食を反射式天体望遠鏡による眼視観測とデジタル一眼レフカメラによる撮影を行った。皆既月食時の明るさは、直近の火山の大噴火と関連性があると考えられる。火山の大噴火は、火山の爆発指数(VEI)で表現される。過去の月食と火山の大噴火について調べてみたところ、1982年メキシコのエルチチョン火山の大噴火(VEI=5)と1982年12月30日の皆既月食、1991年フィリピンのピナツボ火山の大噴火(VEI=6)1993年6月3日の皆既月食は、それぞれ火山の大噴火により大量に放出された火山灰粒子が上空の成層圏にたくさん到達したことによって、月食の明るさがダンジョンスケールでL=0、L=1のとても暗い皆既月食であったことが知られている。2021年8月13日~15日にかけて小笠原諸島、硫黄島の南方にある海底火山の福徳岡ノ場火山が多量の軽石を噴出する大噴火をした(VEI=4)。その噴煙は、高度19㎞に達しており、成層圏に火山灰微粒子を大量に放出したと推定した。それにより、今回の部分月食はL=1または2の暗めの赤色を予想していたが、実際の月食は、それよりも明るいもので、ダンジョンスケールでL=3(明るい赤)であった。その原因は今回の福徳岡ノ場火山の大噴火が海底火山の噴火であったことで、火山の噴火後、大量に噴出された火山灰は海水に邪魔されて、それほど多くは成層圏には到達しなかったと思われる。2022年1月15日にはトンガの海底火山が大噴火した。VEI=6で噴煙の高さは58kmで非常に大きいものであった。海底火山の噴火ではあるが、非常にその規模が大きい噴火であることから、2022年11月8日の皆既月食はL=0~1程度のかなり暗いものになると予想している。当日は月食観測をすることでこの予想を確かめたい。また、近年月食時に話題になっている現象としてターコイズフリンジがある。この現象は月食時、太陽光が地球の成層圏を通過する際、成層圏中のオゾン層が赤い光を吸収することによって青い光が選択的に強調される現象と言われている。このことから月食時、地球の成層圏中のオゾン層の濃度が月食時のターコイズフリンジの見え易さに関係していることが推定される。2021年の部分月食は明るさは明るかったものの、ターコイズフリンジは見え方が薄かった。この原因は福徳岡ノ場火山の大噴火により、成層圏オゾン層が攪乱されたことによる影響があったのではないかと考えた。従って、次回2022年11月8日の皆既月食は暗いだけでなく、ターコイズフリンジもとても見にくい月食になるものと予想した。