13:45 〜 15:15
[O08-P04] 火山ガス簡易測定法の開発と指宿・霧島・桜島における実証
キーワード:火山ガス
火山防災のためには,火山の地球物理的観測と共に火山ガス観測が重要である。そこで,我々は,市販ガスセンサーや温度ロガーなどを活用した簡易な火山ガス測定法と,大気汚染分析で多用されているアルカリろ紙による火山ガスの化学分析方法を採用した。その実証と平穏期のデータ蓄積のために,桜島及び霧島と指宿火山群において測定を始めた。得られたデータを基に,火山や噴火履歴,ガス濃度の比等で比較して,本測定法を評価して有効性を考察する。
① 市販ガスセンサーを用いた火山ガス濃度測定の工夫
火山ガスはアルカリ水溶液で吸収させて化学分析する方法が多く用いられているが高価な化学分析機器と時間を必要とするため、簡便で廉価な測定をするために市販センサーを用いた方法を考えた。市販センサーは日常生活での使用を想定して作られており,耐えられる温度や測定できるガス濃度の上限が低くなっている。そのため,高温で水蒸気濃度が高く,酸性ガスが含まれる火山ガスを,ポリエチレンシリンジで採取し,そのガスを気温程度に冷やし,ガスセンサーを入れた密閉容器に封入して薄め(約20分の1),Fig.2のような換算式を用いて測定を行った。
実証試験として霧島と指宿の噴気帯で測定し,Table3のように火山ガス濃度等を測定することができた。
② 噴気温度の連続測定の工夫(市販室温測定用データロガーの改造)
火山の噴気帯で測定するため,電源の確保が難しい。そのため乾電池で半年稼働する市販温度センサー(INKBIRD社製TH2)を購入した。この温度センサーは内蔵サーミスタによる温度センサーのために,通常は噴気孔での測定はできない。そこで,内蔵サーミスタチップを取り外し,導線で伸ばしてガラス管に封入し,本体をタッパにいれテフロンチューブで防水して用いた。(ステンレス管に封入された温度センサー(INKBIRD社製TH1)も試したが,ステンレス管は2週間の測定で火山ガスによる腐食が起こり使用できないことが分かった。) このセンサーは,熱電対温度計で校正して用い,指宿火山群のスメ谷で噴気温度の連続測定を行いFig.7のように10分ごとの連続測定(2022/03/11~3/31)ができた。
③ 火山ガスの長期測定のためのアルカリろ紙法の工夫
火山ガスの自動測定装置の自作には腐食性のある気体を定期的に分収する機械部分やガスセンサー,さらにその電気信号を記録するデータロガー部分,加えて電源のないフィールドで測定するための電源確保など,温度測定に比べて課題が多い。
そこで,酸性の大気汚染物質をアルカリ塩をしみこませたろ紙に接触させて測定する方法を採用した。この方法は,簡易に安価に測定できることから一定地域で大量に測定点を取る場合に適している。桜島の火山ガス観測で行う場合,降灰や雨や風の影響を避けながら,大気と平均的に安定して接触させるためのろ紙を入れるシェルター容器を工夫(不織布でカバーし火山灰の侵入を防ぐ対策を施した。)し,炭酸ナトリウム溶液に浸し炭酸塩を利用して,火山ガス中の二酸化炭素を除く酸性ガス観測に用いることができないかと考えた。校正は,自作シェルター容器にアルカリろ紙を入れて桜島の大気測定局の測定値で行う。また,アルカリろ紙として東洋ろ紙のペーパークロマトグラフィ用ろ紙を用いた。
本年3月27日より観測を開始したので,5月の大会ではその結果を報告したい。
参考文献
1)平林順一・大場 武・野上健治,1991-1992年霧島新燃岳の活動と火山ガス組成,火山第 41巻 (1996),第6号 263-267頁
2)篠原宏志,火山噴煙観測の新手法,産総研TODAY,p36~37,https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j
/aistinfo/aist_today/vol06_06/vol06_06_p36_p37.pdf
3)山田 悦他,パッシブサンプラー法による京都山間部における大気汚染物質濃度の経年変化観測(1996~2005),分析化学/61 巻 (2012) 4 号 ,p391~326
4)平林順一, 桜島における火山ガスの成分変化と火山活動,京大防災研究所年報第24号B-1,昭和56年4月,p11~20
5)光永晴美他, 有害物質を使用しないアルカリろ紙法による大気中硫黄酸化物分析法の確立,分析化学 67 巻 (2018) 12号 ,p743~747
6) 全環研東海・近畿・北陸支部,パッシブ簡易測定法の実用化検討,全国環境研会誌,Vol.29,No.1(2004)
① 市販ガスセンサーを用いた火山ガス濃度測定の工夫
火山ガスはアルカリ水溶液で吸収させて化学分析する方法が多く用いられているが高価な化学分析機器と時間を必要とするため、簡便で廉価な測定をするために市販センサーを用いた方法を考えた。市販センサーは日常生活での使用を想定して作られており,耐えられる温度や測定できるガス濃度の上限が低くなっている。そのため,高温で水蒸気濃度が高く,酸性ガスが含まれる火山ガスを,ポリエチレンシリンジで採取し,そのガスを気温程度に冷やし,ガスセンサーを入れた密閉容器に封入して薄め(約20分の1),Fig.2のような換算式を用いて測定を行った。
実証試験として霧島と指宿の噴気帯で測定し,Table3のように火山ガス濃度等を測定することができた。
② 噴気温度の連続測定の工夫(市販室温測定用データロガーの改造)
火山の噴気帯で測定するため,電源の確保が難しい。そのため乾電池で半年稼働する市販温度センサー(INKBIRD社製TH2)を購入した。この温度センサーは内蔵サーミスタによる温度センサーのために,通常は噴気孔での測定はできない。そこで,内蔵サーミスタチップを取り外し,導線で伸ばしてガラス管に封入し,本体をタッパにいれテフロンチューブで防水して用いた。(ステンレス管に封入された温度センサー(INKBIRD社製TH1)も試したが,ステンレス管は2週間の測定で火山ガスによる腐食が起こり使用できないことが分かった。) このセンサーは,熱電対温度計で校正して用い,指宿火山群のスメ谷で噴気温度の連続測定を行いFig.7のように10分ごとの連続測定(2022/03/11~3/31)ができた。
③ 火山ガスの長期測定のためのアルカリろ紙法の工夫
火山ガスの自動測定装置の自作には腐食性のある気体を定期的に分収する機械部分やガスセンサー,さらにその電気信号を記録するデータロガー部分,加えて電源のないフィールドで測定するための電源確保など,温度測定に比べて課題が多い。
そこで,酸性の大気汚染物質をアルカリ塩をしみこませたろ紙に接触させて測定する方法を採用した。この方法は,簡易に安価に測定できることから一定地域で大量に測定点を取る場合に適している。桜島の火山ガス観測で行う場合,降灰や雨や風の影響を避けながら,大気と平均的に安定して接触させるためのろ紙を入れるシェルター容器を工夫(不織布でカバーし火山灰の侵入を防ぐ対策を施した。)し,炭酸ナトリウム溶液に浸し炭酸塩を利用して,火山ガス中の二酸化炭素を除く酸性ガス観測に用いることができないかと考えた。校正は,自作シェルター容器にアルカリろ紙を入れて桜島の大気測定局の測定値で行う。また,アルカリろ紙として東洋ろ紙のペーパークロマトグラフィ用ろ紙を用いた。
本年3月27日より観測を開始したので,5月の大会ではその結果を報告したい。
参考文献
1)平林順一・大場 武・野上健治,1991-1992年霧島新燃岳の活動と火山ガス組成,火山第 41巻 (1996),第6号 263-267頁
2)篠原宏志,火山噴煙観測の新手法,産総研TODAY,p36~37,https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j
/aistinfo/aist_today/vol06_06/vol06_06_p36_p37.pdf
3)山田 悦他,パッシブサンプラー法による京都山間部における大気汚染物質濃度の経年変化観測(1996~2005),分析化学/61 巻 (2012) 4 号 ,p391~326
4)平林順一, 桜島における火山ガスの成分変化と火山活動,京大防災研究所年報第24号B-1,昭和56年4月,p11~20
5)光永晴美他, 有害物質を使用しないアルカリろ紙法による大気中硫黄酸化物分析法の確立,分析化学 67 巻 (2018) 12号 ,p743~747
6) 全環研東海・近畿・北陸支部,パッシブ簡易測定法の実用化検討,全国環境研会誌,Vol.29,No.1(2004)