日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P01~P20

2022年5月29日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

13:45 〜 15:15

[O08-P13] 堆砂垣による磐田市遠州灘鮫島海岸の海岸保護

*市川 舜1、*鈴木 洸希1、*加藤 来歩1、相曽 俊弥1、熊倉 陸哉1、中野 晃佑1 (1.静岡県立磐田南高等学校)


キーワード:堆砂垣、砂質堆積物、堆積作用

1.動機・目的
 令和元年東日本台風の高潮によって磐田市遠州灘鮫島海岸の微地形が変化した.そこで,海岸の保全を目的とし,堆砂垣を設置した.

2.仮説
 粒径が0.3mm前後の砂は風速5~6 m/sで移動を始める.調査期間の最大風速5m/s以上の風向は西寄りが多い.このことから,西に直交する向きに堆砂垣を設置することで飛砂を防ぎ,海岸浸食を抑制する効果がある.

3.方法・結果
東西方向(A),南北方向(B),北東-南西方向(C),北西-南東方向(D)に堆砂垣をそれぞれ600cmの間隔を空けて設置した.(図1)7月19日から12月27日までの期間で堆砂垣周辺の砂質堆積物について検討した.

3-1.水準測量
 堆砂垣を囲む300cm×300cmの範囲内の30地点での高低差を,オートレベルを用いて調べた.(図2)結果をもとに,断面図を作成した.(図3)また,30地点の高低差の変化量の合計値を,砂質堆積物の増加量として検討した.AとC,BとDのコンター図と断面図は似ている.増加量はAが-119,Bが-120, Dが-56と減少し,Cが+25と増加していた.

3-2.粒度分析法
堆砂垣を挟んで両側の表層の砂質堆積物を採取し,ふるいを用いて平均粒径を調べた.(図4)堆砂垣ごとの砂質堆積物の平均粒径は0.5mm前後で似た傾向を示した.

3-3.鉱物分析法
12月27日に採取した砂質堆積物の鉱物組成を双眼実体顕微鏡で調べた.(図5)A,B,Dは似た傾向を示すが,Cは有色鉱物よりも無色鉱物の割合が高い.

4.結果
以上の結果を表1に示す.これよりCのみが特に断面図と鉱物組成において異なる傾向を示したことが分かる.これはBに西寄りの風が衝突し,風勢が減衰されたことで,C付近における飛砂の堆積作用が大きくなり,浸食作用が小さくなることが原因と考える.Aは風に対して平行なため,堆積作用が小さいと考える.

5.堆砂垣Bの砂質堆積物の堆積過程
 Cに影響を及ぼし,仮説と異なる結果となったBの砂質堆積物の性質をもとに堆積過程について検討した.

5-1.粒度分析法
 12月27日の風上側と風下側の平均粒径はそれぞれ0.58mm,0.46mmとなり,平均粒径の差は約0.16mmであった.
(図6)

5-2.砂質堆積物の写真を用いた輝度測定
 砂質堆積物の色が風上側と風下側で異なるため,カメラで撮影し,天体画像処理ソフト「マカリ」を用いて明るさを計測した.風上側では146c,風下側では156 cd/m2となった.

5-3.鉱物分析法
 風上側と風下側で色の明るさが異なっていることから,鉱物の種類にも違いがあると考え,鉱物分析を行った.風上側では石英や長石などの無色鉱物が,風下側では有色鉱物や岩片の割合が大きい.(図7)

5-4.密度測定
 5-3から密度も異なると考え,比重瓶を用いて密度測定を行った.
12月27日の風上側,風下側の密度はそれぞれ1.86g/cm,1.83 g/cmとなった(図8)

5-5.質量測定
 砂質堆積物の動きやすさを比較するために風に対して垂直な面の単位断面積あたりの質量を求めた.質量を求める計算式は(4/3)×半径×密度を用いた
 風上側では1.43g,風下側では1.02gとなり,風上側には風下側よりも動きにくい粒子が堆積していた.

5-6. 考察
風上側には粗い黒色の動きにくい砂が堆積していた.一方,風下側には細かく白色の動きやすい砂が堆積していた.これは風上側の動きやすい砂が西寄りの風によって風下側に運ばれたことが原因と考える.

6.結論
①図5より風に直交する堆砂垣には風上側に飛砂を堆積させる作用がある.
②砂質堆積物のうち,動きやすいものが移動し,風下側に堆積する.
③連続して設置することで風下側での堆積作用を大きくすることができる.