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[O08-P14] 2021年7月13日に観測された雷光と気象記録による雷放電を伴う積乱雲の特定
キーワード:巨大積乱雲、オーバーシュート、高高度発光現象、高感度CCDカメラ
$1.動機・目的
本校では,長期間にわたり高高度発光現象の研究を続けている.しかし,その発生要因については未だに不明である.そこで本研究では,この理由を解明する第一歩として,2021年7月13日に本校から観測された多数の雷光と気象記録により,この雷放電を伴う積乱雲を特定し,その方法を確立する.また,積乱雲の発達衰退過程やその成因を解明することを目的に研究を行った.
$2.仮説
2021年7月13日に観測された雷光は,同日昼過ぎに本校北側に発生した積乱雲のものである.
発生の原因は積乱雲内の強い上昇気流によるものである.
$3.方法
高感度CCDカメラ(WAT-100N)で撮影された雷光を,動体検知ソフトで常時監視し,パソコンに自動記録をする. 次に本校のカメラで撮影された映像から雷光のみを抽出してカメラの視野角を元に雷光の方向を特定する.さらに,気象衛星による可視画像や赤外画像,雨雲のレーダーエコー画像,そしてBlitzの対地雷データによる対地雷件数の時間変移動画を元に,雷光を発する積乱雲の位置を特定する.最後に気象庁が公開している天気図やアメダス,ラジオゾンデによる高層気象と照合させて,雷光や落雷,積乱雲の発達衰退過程を調べる.
$4.結果と考察
4-1.観測された雷光の方向
図1は北西方向に向けたC1カメラの観測方位を,左側,中央,右側に分けて示したものである.観測された雷光は,19:30において中央で多いが,20:00では少なくなる.逆に左側では19:30においては少ないが,20:00では多くなることから,雷光源は19:00には本校の北西に存在していたが,20:00にかけて雷光源は西に移動したことがわかる.図2は北方向に向けたC2カメラの観測方位を同様に示したものである.観測された雷光は, 19:30には左側で最も多く次が中央であり,時間と共に減少している.このことから,雷光源はC2カメラの方位角から19:00には本校の北に存在し,位置を変えずに時間と共に衰退していることがわかる.
4-2.雷放電を伴う積乱雲の特定
雷光源の方向を踏まえ,雷光を引き起こす積乱雲を衛星画像やレーダーエコー画像,Blitzの対地雷データより特定した.図3は衛星画像,図4はBlitzの対地雷データである.全データよりこの時間帯には,C1カメラの北西方向の愛知県西部名古屋市上空とC2カメラの北方向の愛知県東部東栄町上空にオーバーシュートを伴う巨大積乱雲が存在している.さらに可視画像より,この積乱雲は15:00周辺で多く発生した積乱雲群が一つに合体してできた巨大積乱雲であると分かった.なお,オーバーシュートとは,積乱雲内の上昇気流が激しくなり,頂部が圏界面を突き破って成層圏まで達している積乱雲のことである.この積乱雲の内部では,激しい対流により莫大な電荷が蓄積され,その後の絶縁破壊により雷光が多数発生したものと考えられる.
4-3.巨大積乱雲が発生した原因
発生した巨大積乱雲は以下の原因により形成されたもとの考えられる.
①強い日射による地表気温の上昇
②図5のとおり梅雨前線に流れ込む南からの湿った水蒸気の供給とこれが中央,南アルプスに衝突して発生した強い上昇気流
③輪島のラジオゾンデの記録から予想される上空への寒気の流入
$5.結論
雷放電を伴う積乱雲は,愛知県名古屋市と東栄町上空に発達した2つの巨大積乱雲に特定することができる.この巨大積乱雲は積乱雲群が合体して形成され,絶縁破壊による雷放電を繰り返した.
本校では,長期間にわたり高高度発光現象の研究を続けている.しかし,その発生要因については未だに不明である.そこで本研究では,この理由を解明する第一歩として,2021年7月13日に本校から観測された多数の雷光と気象記録により,この雷放電を伴う積乱雲を特定し,その方法を確立する.また,積乱雲の発達衰退過程やその成因を解明することを目的に研究を行った.
$2.仮説
2021年7月13日に観測された雷光は,同日昼過ぎに本校北側に発生した積乱雲のものである.
発生の原因は積乱雲内の強い上昇気流によるものである.
$3.方法
高感度CCDカメラ(WAT-100N)で撮影された雷光を,動体検知ソフトで常時監視し,パソコンに自動記録をする. 次に本校のカメラで撮影された映像から雷光のみを抽出してカメラの視野角を元に雷光の方向を特定する.さらに,気象衛星による可視画像や赤外画像,雨雲のレーダーエコー画像,そしてBlitzの対地雷データによる対地雷件数の時間変移動画を元に,雷光を発する積乱雲の位置を特定する.最後に気象庁が公開している天気図やアメダス,ラジオゾンデによる高層気象と照合させて,雷光や落雷,積乱雲の発達衰退過程を調べる.
$4.結果と考察
4-1.観測された雷光の方向
図1は北西方向に向けたC1カメラの観測方位を,左側,中央,右側に分けて示したものである.観測された雷光は,19:30において中央で多いが,20:00では少なくなる.逆に左側では19:30においては少ないが,20:00では多くなることから,雷光源は19:00には本校の北西に存在していたが,20:00にかけて雷光源は西に移動したことがわかる.図2は北方向に向けたC2カメラの観測方位を同様に示したものである.観測された雷光は, 19:30には左側で最も多く次が中央であり,時間と共に減少している.このことから,雷光源はC2カメラの方位角から19:00には本校の北に存在し,位置を変えずに時間と共に衰退していることがわかる.
4-2.雷放電を伴う積乱雲の特定
雷光源の方向を踏まえ,雷光を引き起こす積乱雲を衛星画像やレーダーエコー画像,Blitzの対地雷データより特定した.図3は衛星画像,図4はBlitzの対地雷データである.全データよりこの時間帯には,C1カメラの北西方向の愛知県西部名古屋市上空とC2カメラの北方向の愛知県東部東栄町上空にオーバーシュートを伴う巨大積乱雲が存在している.さらに可視画像より,この積乱雲は15:00周辺で多く発生した積乱雲群が一つに合体してできた巨大積乱雲であると分かった.なお,オーバーシュートとは,積乱雲内の上昇気流が激しくなり,頂部が圏界面を突き破って成層圏まで達している積乱雲のことである.この積乱雲の内部では,激しい対流により莫大な電荷が蓄積され,その後の絶縁破壊により雷光が多数発生したものと考えられる.
4-3.巨大積乱雲が発生した原因
発生した巨大積乱雲は以下の原因により形成されたもとの考えられる.
①強い日射による地表気温の上昇
②図5のとおり梅雨前線に流れ込む南からの湿った水蒸気の供給とこれが中央,南アルプスに衝突して発生した強い上昇気流
③輪島のラジオゾンデの記録から予想される上空への寒気の流入
$5.結論
雷放電を伴う積乱雲は,愛知県名古屋市と東栄町上空に発達した2つの巨大積乱雲に特定することができる.この巨大積乱雲は積乱雲群が合体して形成され,絶縁破壊による雷放電を繰り返した.