日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P01~P20

2022年5月29日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

13:45 〜 15:15

[O08-P15] 太陽の黒点相対数と宇宙線検出数の相関および周期性

*三木 花1、小澤 早希1、小川 祐佳1、田邉 朋華1、加藤 陽太1、宮村 幸成1、瀧上 創希1、芳野 晴暉1 (1.静岡県立磐田南高等学校)


キーワード:宇宙線、太陽黒点、太陽活動

1.動機・目的
 本校では,1970年に15cm屈折望遠鏡が設置されてから太陽黒点の観測を継続している.しかし,黒点観測のデータが研究に利用されたことは無い.そこで,太陽活動が活発化すると増加する太陽黒点数と,地球に到来する宇宙線の数に相関が見られる,太陽活動の周期に伴って宇宙線の到来頻度も変化する,という仮説をもとに,2020年11月から宇宙線観測を開始した.
2.宇宙線とは
 宇宙線は光速に近い速度で降り注ぐ素粒子で,人間は見たり感じたりすることができない.宇宙線は大気中の原子と相互作用して,そのエネルギーから複数の粒子が生成され,シャワーのように大量の粒子の形となり地表に降り注ぐ.地表で観測される宇宙線のほとんどはミューオンである.宇宙線は,太陽からやってくる比較的低エネルギーの太陽宇宙線と太陽系外からやってくる銀河宇宙線がある.
3.方法
3-1.宇宙線の観測方法
 宇宙線の観測には本校4階に設置した宇宙線検出器「cosmic watch」を用いて常時観測を行い,宇宙線の通過時間・エネルギーなどの情報を収集し,2020年11月~2021年5月にcosmic watch1台での観測を行った.なお,シンチレータを黒いビニールテープで遮光することで,宇宙線での発光のみが光センサーで検出されるようにした. 検出器とパソコンを接続することでデータを保存し,Google Colaboratoryを用いて解析を行った.
 解析記録のうち,未処理のものをデータA,adc200以下のものをノイズとみなして取り除いたものをデータB,adc 200以下を取り除いて,さらに太陽が出ている日中(06:00~18:00)の宇宙線に絞ったものをデータCとする.
 また,ノイズ削減を目的としてcosmic watch2台を上下に重ねて設置し,両方で観測された宇宙線のみにデータを絞る2台観測を2021年6月~12月に行った.未処理のデータをデータD,日中の宇宙線に絞ったものをデータEとする.また,2台観測ではノイズは含まれないものとし,adcカットは行わない.
3-2.太陽黒点の観測方法 
 本校の15cm屈折望遠鏡の太陽投影板に円の描かれたスケッチ用紙を取りつけ,太陽像を円内に導入して黒点を用紙に記入する.その後,黒点数をf,黒点群数をg,補正係数k=1として黒点相対数R=k(10g+f)を求める.また,ベルギー王立天文台の黒点数・太陽長期観測世界データセンター(WDC-SILSO)が集約している太陽黒点相対数を使用した検討も行った.
3-3.解析
3-3-1.宇宙線と黒点相対数の相関
 データA,B,C,D,Eの1秒あたりの検出数を求めて,本校の黒点相対数,WDC-SILSOの黒点相対数との相関係数を調べた.また,adc0~100,100~200…のようにadc100ごとに分割した宇宙線データと各黒点相対数との相関係数をそれぞれ求めた.
3-3-2.宇宙線の到来頻度の周期性
 宇宙線の到来頻度の周期を確認するために,1台観測データ,2台観測データをそれぞれフーリエ変換を行った.
4.結果と考察
4-1.宇宙線と黒点相対数の相関
 宇宙線と黒点相対数の相関関係は表1のとおりである.磐田南とWDC-SILSOの相関は異なるが,データAからDにかけて似た傾向がみられる.データAについて磐田南,WDC-SILSO共に相関は弱いが,データAにはノイズが含まれているため追求しない.データB,Cは共に負の相関がみられる.データD,Eと黒点相対数(磐田南)との相関係数が小さくなっているのは,2台観測を行っていた期間の磐田南の黒点データが少ないためと考える.
 また,adc100ごとに分割した宇宙線データと黒点相対数との相関係数はグラフ1,2のようになった.2台観測データと黒点相対数(WDC-SILSO)との結果では,adc400以下では負の相関,adc400以上では正の相関と,adc400を境に相関係数の正負が逆転していた.adc400以下の宇宙線は太陽宇宙線だと考えられる.黒点相対数(磐田南)との結果は,黒点データ不足により黒点相対数(WDC-SILSO)での結果と大きく異なった.一方,1台観測のデータにはノイズが多く含まれているため,相関係数に傾向はみられなかった.
 これらの結果から,太陽活動が活発になると宇宙線の到来数は減少することがわかる.
4-2.宇宙線の到来頻度の周期性
 1台観測データ,2台観測データ共に12時間,24時間の周期がみられた.(グラフ3,4)12時間,24時間の周期は太陽の日周運動と関係していると考える.
5.結論
 黒点相対数と宇宙線の到来数には負の相関があり,太陽活動が活発になると宇宙線の到来数は減少する.また,宇宙線の到来頻度には12時間,24時間の周期がみられ,これは太陽の日周運動と関係していると考えられる.