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[O08-P16] 洋野町「辰の口」は三陸ジオパーク・ジオサイトになれるか
キーワード:地球環境、地質、岩石、化石
三陸ジオパークは、青森県から宮城県にかけての太平洋岸に、南北約300㎞の海岸線をもつ。マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニアの属する八戸市水産科学館マリエントはその北端部にある(図1)。筆者らは、2018年度から郷土を学習する活動として三陸ジオパークについて学習してきた。巡検と観察、討論を元に協同学習を進め、知識の共有と情報発信の態度を育成するため「ジオ紙芝居」を作成し、実演してきた。その成果をJpGUと日本ジオパーク全国大会において発表してきた。
2022年度のジオパークに関係する活動は、岩手県九戸郡洋野町小子内にある通称「辰の口」(写真1)について、巡検と予備学習、その振り返りと講義・討論を実施した。ここでは「辰の口」のジオサイトとしての適性と登録の可能性について検討した。
通称「辰の口」は洋野町の沿岸に位置し、種市層の海食崖から突出した長さ約43m、高さ約12mの小さな岬である。 種市層は,本州最北部に分布する上部白亜系一古第三系の特色ある砂岩を基本とする堆積層である。
その名称の由来は、一日にして「辰の口」が開いたという昔話にある。その昔話について、時代背景や人々のくらし、ふくまれる教訓と戒めについて話し合った。地域の地形や地質の理解、共有地の持続的利用、防災の心得などが含まれることがわかった。このことから、ジオ紙芝居により、三陸ジオパークの設立趣旨の「ジオ」「エコ」「ヒト」の3要素のつながりを学び、楽しむことができると考えた。ジオ紙芝居は「昔話辰の口」・「種市層と辰の口」・「種市層の堆積環境」の3巻を作成し、クラブ内で発表した。また、ジオサイト登録にむけて応用可能な観光パンフレットも作成した。
次に昔話にある「辰の口」が開いたという地形の変化について検討した。過去の資料は洋野文化遺産活用地域活性実行委員会による洋野ヒストリアにある2枚のみで、南側から撮影した写真によるニ次元的な変化が検討可能である。2021年に撮影した写真とあわせて約90年間の変化について計測し検討した。約90年間の水平方向のニ次元的浸食は最大約3m、全体の平均が約1.5~2mだった。最も海水のあたる頻度の高い下部の浸食が上部より小さい傾向があった。地形の変化は、風化と波浪、津波による影響が考えられる。洋野町の海岸部で東日本大震災津波による大きな地形変化は報告されていない。以上から、口が開いた地形の変化は、風化による散発的なノジュール塊の崩落が原因と考えた。昔話の大きな声は、水面に落ちた音ではないかと予想された。
以上を元に、三陸ジオパークのジオサイトとしての適性と不適性について検討した。三陸ジオパークの設定主旨と三つの基本方針とを配慮して検討をすすめた。適性が高い要素として、地形と地層の観察に適する、希少性と学術的価値が高い、昔話に持続性と防災の戒めが含まれているなどが挙げられた。不適格要素として、知名度が低い、保護や保全の取り組みがない、崩壊、崩落のおそれが挙げられた。ほかに交通の便については、意見が分かれた。
結論として、活用と保護・保全の取り組みがないこととやがて全体の崩落による消失の可能性があるためジオサイトの可能性は低いと考えた。洋野町は沿岸部にみちのく潮風トレイルが通っていて、三陸ジオパークの2つのジオサイトがあるが、三陸復興国立公園には含まれていない。新たなコンテンツの発見とジオサイトの設定とは地域振興のために大切であるため、これからも活動を継続していきたい。
2022年度のジオパークに関係する活動は、岩手県九戸郡洋野町小子内にある通称「辰の口」(写真1)について、巡検と予備学習、その振り返りと講義・討論を実施した。ここでは「辰の口」のジオサイトとしての適性と登録の可能性について検討した。
通称「辰の口」は洋野町の沿岸に位置し、種市層の海食崖から突出した長さ約43m、高さ約12mの小さな岬である。 種市層は,本州最北部に分布する上部白亜系一古第三系の特色ある砂岩を基本とする堆積層である。
その名称の由来は、一日にして「辰の口」が開いたという昔話にある。その昔話について、時代背景や人々のくらし、ふくまれる教訓と戒めについて話し合った。地域の地形や地質の理解、共有地の持続的利用、防災の心得などが含まれることがわかった。このことから、ジオ紙芝居により、三陸ジオパークの設立趣旨の「ジオ」「エコ」「ヒト」の3要素のつながりを学び、楽しむことができると考えた。ジオ紙芝居は「昔話辰の口」・「種市層と辰の口」・「種市層の堆積環境」の3巻を作成し、クラブ内で発表した。また、ジオサイト登録にむけて応用可能な観光パンフレットも作成した。
次に昔話にある「辰の口」が開いたという地形の変化について検討した。過去の資料は洋野文化遺産活用地域活性実行委員会による洋野ヒストリアにある2枚のみで、南側から撮影した写真によるニ次元的な変化が検討可能である。2021年に撮影した写真とあわせて約90年間の変化について計測し検討した。約90年間の水平方向のニ次元的浸食は最大約3m、全体の平均が約1.5~2mだった。最も海水のあたる頻度の高い下部の浸食が上部より小さい傾向があった。地形の変化は、風化と波浪、津波による影響が考えられる。洋野町の海岸部で東日本大震災津波による大きな地形変化は報告されていない。以上から、口が開いた地形の変化は、風化による散発的なノジュール塊の崩落が原因と考えた。昔話の大きな声は、水面に落ちた音ではないかと予想された。
以上を元に、三陸ジオパークのジオサイトとしての適性と不適性について検討した。三陸ジオパークの設定主旨と三つの基本方針とを配慮して検討をすすめた。適性が高い要素として、地形と地層の観察に適する、希少性と学術的価値が高い、昔話に持続性と防災の戒めが含まれているなどが挙げられた。不適格要素として、知名度が低い、保護や保全の取り組みがない、崩壊、崩落のおそれが挙げられた。ほかに交通の便については、意見が分かれた。
結論として、活用と保護・保全の取り組みがないこととやがて全体の崩落による消失の可能性があるためジオサイトの可能性は低いと考えた。洋野町は沿岸部にみちのく潮風トレイルが通っていて、三陸ジオパークの2つのジオサイトがあるが、三陸復興国立公園には含まれていない。新たなコンテンツの発見とジオサイトの設定とは地域振興のために大切であるため、これからも活動を継続していきたい。