日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P021~P40

2022年5月29日(日) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

13:45 〜 15:15

[O08-P33] 琵琶湖の環境変動と連動したビワオオウズムシの消長-湖底モニタリングの最新成果

*佐藤 瑠乃1、佐藤 爽音2、熊谷 道夫3 (1.滋賀県立膳所高等学校、2.京都市立銅駝美術工芸高等学校、3.立命館大学)


キーワード:ビワオオウズムシ、琵琶湖、地球温暖化

琵琶湖の固有種であるビワオオウズムシの生態は不明な点が多いが、周辺環境変化に伴い個体数が大きく変化することが知られている。2019年から2020年にかけて琵琶湖の全循環が停止による、ビワオオウズムシ減少が危惧されている。琵琶湖の全循環とは、表面付近の水にたっぷり含まれる酸素が湖底まで届くことから「琵琶湖の深呼吸」と呼ばれる生態系を維持し環境を守る湖に起きる自然現象のことである。琵琶湖北湖では、春から夏、温度上昇により、表水層と深水層の間の急激な水温差が起こる水温躍層が形成される。水温躍層形成下では、上下方向の湖水混合が無く、深水層では、溶存酸素が供給されず、溶存酸素の消費が進行する。晩秋から冬、表層水温が低下すると、表層から深水層の混合が進行し、水温と溶存酸素濃度が一様になる現象を全循環と言う。このため全循環は単なる水の循環ではなく、琵琶湖の生物や琵琶湖の環境に大きな影響を与える。この全循環が、1979年からの観測史上初めて、平成30年度に今津沖(琵琶湖北湖)の一部水域にて確認されず、2年連続で全循環は未確認となった。水深90m付近の酸素量がほぼゼロとなり、生物の生存が厳しくなる貧酸素(1ℓ当たり2㎎未満)状態も水深70m付近まで広がり、底生生物への影響、琵琶湖環境悪化が懸念された。我々は2020年6月からトラップを琵琶湖に設置し、1年以上のモニタリングを実施した。2021年2月から3月にかけ3匹のビワオオウズムシの成虫を捕獲したが、成層期には皆無であった結果から、詳細な調査が必要と判断し、2021年7月に3台のAUV(自律型水中ロボット)を用いた琵琶湖北湖における大規模な湖底探索を実施した。
 調査は7月23日~27日の5日間にわたって実施した。AUVを用いて湖底の画像や映像を撮影し、膨大なデータの中からビワオオウズムシを探し出した。調査の結果、琵琶湖湖底にビワオオウズムシの生存が確認され、個体の大きさや個体数、生息環境等の多数のデータが得られた。琵琶湖湖底の濁度は、2012年7月の調査において濁度の数値が4FTU以下であったのに対し、今回の2021年7月の調査では濁度の値が4~6NTUであった。両者は同じ単位である。このことは湖底環境における濁りが深刻な問題になってきていることを示す。また、2012年7月の湖底水温は7.2~7.3℃であったのに対して、今回は8.4~8.6℃であった。10年間で1℃以上の水温上昇があったことは、北方系で冷水を好むといわれている(6℃~8℃)ビワオオウズムシによって、急激な水温上昇は大きなストレスになっている可能性がある。今後もモニタリングを継続することは、琵琶湖や地球環境悪化の指標となるであろう。