15:30 〜 17:00
[O08-P48] 中庭内のエアコン排熱が中庭内部の循環に及ぼす影響
キーワード:ヒートアイランド現象、都市キャニオン、エアコン排熱、加古川市
[動機と目的]都市部におけるヒートアイランド現象には、2つの建物と道路の連続によって構成される「都市キャニオン」内の空気循環が影響していることが知られている。このキャニオン内部には、上空とは独立した気層があり、上空に道路と直交した方向に風が吹くとキャニオン内部に螺旋状の循環が生じる。しかし、これまでの都市気候研究では、実験室規模や都市全域における研究が多く、街路スケールの実測研究はほとんど見られなかった。そのため、キャニオン内部での空気循環やその影響はあまり知られていなかった。私たちの加古川東高校は、この地域の海風と垂直に2棟の校舎が並び、中庭内にエアコンの室外機がある。私たちは、「校舎と中庭」を切り取られた都市キャニオンとみたて、都市部と同様に、校舎間に存在する空間内に空気循環が存在していると考えた。また、室外機の排気口は循環の上昇気流方向と一致していると考えられることから、室外機の排気が空気循環を強化し、内部の気温に影響を与えているという仮説を立て、研究を進めた。
[方法]観測は、海風の強まる夏場の2021年8月11日午後に、エアコンをオン、オフの時に分けて行った。ヘリウムを注入して上昇率を計測し、回収用の釣り糸を付けたパイロットバルーンを中庭から放球した。これを3地点から順次行い、その様子を2地点から撮影した。オンの時5本、オフの時6本の計11本のデータを得た。動画をもとにクリノメーターを用いてバルーンの角度を計測し、3秒ごとの3次元座標を計算した。その後、風船の軌道から上昇率を引いた各地点の風のベクトルを割り出した。上空の風を計測するために、屋上に風向風速計を設置し、10分間ごとの平均の風速と10分ごとの風向(16方位)を計測した。また、下降気流は本館1階横の中庭に超音波風向風速計を設置した。サンプリングレート4/秒で風向(水平方向、上下)と風速を計測した。校舎の中庭側5カ所(本館1、2、4階、普通教室棟1、4階)、普通教室棟屋上1カ所に遮光装置の付いた温度計を取り付け、各地点の気温推移を測定した。なお、観測時は曇天で、日射による影響は少なかったと考えられる。各地点については図1参照。
[結果]図2は風船の軌道に基づいたベクトル図である。図より校舎間で対流が生じていることが分かる。またエアコンオフ時の本館上端に近い部分に矢印が集中しており、オフ時の方が下降気流が弱いことがわかる。このように予想に反した結果となったのは、偶然観測当日の海風がエアコンオン時よりもオフ時の方が強かったためと考えられる。観測期間内における上空の風は同一ではなく、オフ時の方が約2倍強かった(図3)。そこでオン、オフ時それぞれの屋上の風速を1とした下降気流比を算出すると、オン時が0.76、オフ時が0.37となった。よって、屋上の風に対する下降気流の比率はオンのときのほうが約2倍高くなり、循環が強化されていることが分かる。
温度は、エアコンオンとオフの移行期を10分として、その前後50分をエアコンオン、オフ時の気温サンプルとした。屋上の観測値を周辺の気温と考え、各地点における屋上との温度差の平均値、最大値、最小値をエアコンオン時とオフ時に分け算出した(図4)。エアコンオン時は、オフ時と比べ屋上との気温差が大きく、最大値と最小値の差も大きくなる。つまり、キャノピー層外との気温差が拡大する傾向にある。
[結論]観測より、加古川東高校の校舎間で風が循環していることが分かった。また、エアコンオン時とオフ時で上空の風速が大きく違ったため、循環の強化が具体的には見られなかったが、屋上の風と下降気流の風速の比を考えると、室外機の排気が循環を強化しているといえる。また、エアコンがオフの時よりもオンの時の方が各地点の平均気温が高かったことから、中庭内に排熱が滞留していることが分かった。今後の展望として、中庭内の断面で等温図を作り、より詳しい温度分布を計測したい。また、今回は上空の風が大きく違ったため、データの整合性が低かったことから、シミュレーションを用いて観測との照合を予定している。シミュレーションでも中庭内に循環が存在することを確認しており(図5)、今後はエアコンの排気による影響を調べていきたい。
[方法]観測は、海風の強まる夏場の2021年8月11日午後に、エアコンをオン、オフの時に分けて行った。ヘリウムを注入して上昇率を計測し、回収用の釣り糸を付けたパイロットバルーンを中庭から放球した。これを3地点から順次行い、その様子を2地点から撮影した。オンの時5本、オフの時6本の計11本のデータを得た。動画をもとにクリノメーターを用いてバルーンの角度を計測し、3秒ごとの3次元座標を計算した。その後、風船の軌道から上昇率を引いた各地点の風のベクトルを割り出した。上空の風を計測するために、屋上に風向風速計を設置し、10分間ごとの平均の風速と10分ごとの風向(16方位)を計測した。また、下降気流は本館1階横の中庭に超音波風向風速計を設置した。サンプリングレート4/秒で風向(水平方向、上下)と風速を計測した。校舎の中庭側5カ所(本館1、2、4階、普通教室棟1、4階)、普通教室棟屋上1カ所に遮光装置の付いた温度計を取り付け、各地点の気温推移を測定した。なお、観測時は曇天で、日射による影響は少なかったと考えられる。各地点については図1参照。
[結果]図2は風船の軌道に基づいたベクトル図である。図より校舎間で対流が生じていることが分かる。またエアコンオフ時の本館上端に近い部分に矢印が集中しており、オフ時の方が下降気流が弱いことがわかる。このように予想に反した結果となったのは、偶然観測当日の海風がエアコンオン時よりもオフ時の方が強かったためと考えられる。観測期間内における上空の風は同一ではなく、オフ時の方が約2倍強かった(図3)。そこでオン、オフ時それぞれの屋上の風速を1とした下降気流比を算出すると、オン時が0.76、オフ時が0.37となった。よって、屋上の風に対する下降気流の比率はオンのときのほうが約2倍高くなり、循環が強化されていることが分かる。
温度は、エアコンオンとオフの移行期を10分として、その前後50分をエアコンオン、オフ時の気温サンプルとした。屋上の観測値を周辺の気温と考え、各地点における屋上との温度差の平均値、最大値、最小値をエアコンオン時とオフ時に分け算出した(図4)。エアコンオン時は、オフ時と比べ屋上との気温差が大きく、最大値と最小値の差も大きくなる。つまり、キャノピー層外との気温差が拡大する傾向にある。
[結論]観測より、加古川東高校の校舎間で風が循環していることが分かった。また、エアコンオン時とオフ時で上空の風速が大きく違ったため、循環の強化が具体的には見られなかったが、屋上の風と下降気流の風速の比を考えると、室外機の排気が循環を強化しているといえる。また、エアコンがオフの時よりもオンの時の方が各地点の平均気温が高かったことから、中庭内に排熱が滞留していることが分かった。今後の展望として、中庭内の断面で等温図を作り、より詳しい温度分布を計測したい。また、今回は上空の風が大きく違ったため、データの整合性が低かったことから、シミュレーションを用いて観測との照合を予定している。シミュレーションでも中庭内に循環が存在することを確認しており(図5)、今後はエアコンの排気による影響を調べていきたい。