日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P61~P80

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

15:30 〜 17:00

[O08-P70] タンクモデル法を応用した新たな地下水位予測モデルの開発ー新宿区立おとめ山公園周辺地域を例としてー

*下河邊 太智1 (1.海城高等学校)


キーワード:湧水、地下水位、タンクモデル

神田川の北崖にあたる落合崖線上に位置する新宿区立おとめ山公園には、新宿区で唯一の湧水が現存している。被舗装面積の増加や地下水の汲み上げに伴う地下水面の低下などによって都内で多くの湧水が姿を消している現状において、当公園の湧水は貴重な存在であり、その保全のためには当地域での地下水涵養・流動プロセスを把握し、さらには湧出量および地下水位を予測するモデルを開発することが有効である。そのために、本校地学部では当公園の湧水の湧出量の観測を10年以上にわたってほぼ毎日行い、さらに湧水の涵養域にある2つの井戸(井戸A,Bとする)において地下水位を観測してきた。その結果、井戸Aでは、降雨時に上昇しその後下降しある一定の水位に近づくという不圧地下水に典型的な水位変動が観測されたのに対し、井戸Bではある一定の水位(T.P.28.9m)を下回ると急激に水位が下降するようになるという特殊な水位変動が観測された。当地域の地質は下位から武蔵野礫層、凝灰質粘土層、武蔵野ローム層となっており、武蔵野礫層と武蔵野ローム層が帯水層となっている。T.P.28.9mが武蔵野ローム層の下端にあたることと、2つの井戸のうち武蔵野礫層の深さまで到達しているのは井戸Bだけであることから、井戸Bでの特殊な水位変動はその水位が2つの帯水層の影響を受けているために起こっていると推定した。すなわち、武蔵野ローム層内に地下水面が存在する期間は井戸Bの水位はその地下水面を反映するが、武蔵野ローム層内に地下水面が存在しない期間は井戸Bの水位は武蔵野礫層内の地下水の水理水頭を反映すると考えられる。この特殊な水位変動のメカニズムについてより定量的な検証をするために、降水量から湧出量と地下水位を算出するモデルを設計した。過去には、井戸Aの地下水位と湧出量を直列2段タンクモデルにおける下段タンク水位と流出量にそれぞれ対応させて湧出量の長期変化の要因について考察した研究が行われている(高野,2015)。しかし、井戸Bの特殊な水位変動はタンクモデルのタンク水位に対応させるだけでは表現できないため、タンクモデルを応用した新たなモデルを考案した。通常の直列タンクモデルに井戸を模したもう1つのタンクを並列させ、井戸を模したタンクの水位が2つの帯水層を模したタンクそれぞれの水位の影響を受けるようにした。このモデルに井戸A,Bの地下水位とおとめ山公園の湧出量を対応させ、集団混合が取り入れられた大域的探索手法であるSCE-UA法を用いて観測データからモデルのパラメータを同定した。その結果、モデルが高い精度で地下水位と湧出量を再現できることが示され、推定した水位変動メカニズムが妥当であったことが検証された。また、このモデルが将来の湧出量や地下水位の予測において活用できることが期待される。