日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P61~P80

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

15:30 〜 17:00

[O08-P80] BNCTにおけるα線の生成量が最大となる照射方法の考察

*宮澤 亜紀1、*貫輪 美博2 (1.立教女学院高等学校、2.埼玉県立川越女子高等学校)


キーワード:放射線治療、中性子

1.背景・目的
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)とは、腫瘍細胞に特異的に集積するホウ素薬剤を患者に投与し、腫瘍へ中性子を照射することで、10Bと中性子との核反応が起こり、その結果生成されるα粒子やリチウム粒子により腫瘍細胞を殺傷する治療法である。従来の治療では完治が難しいがんにも有効とされており、患者の負担が少ないためQOL向上が見込まれている。しかし完全な実用化には至っておらず、様々な課題が存在する。私たちはその中でも自宅でシミュレーションを用いた実験が可能な照射システムの研究に興味を持った。α粒子とリチウム粒子が多く生成されるほど病巣部における線量を増やすことができ、患者の負担を軽減することができるため、それらが最も生成される中性子ビームのエネルギーを調べることを目的としてシミュレーションを行った。

2.研究方法
シミュレーションではGeant4というプログラムを使用した。Geant4とは、物質中の粒子の飛跡をシミュレーションするソフトウェアである。本研究では深度40mmの頭頸部がんを想定したため、人体のモデルとして水ブロック(一辺120mm)を配置し、ホウ素が集積した腫瘍細胞としてホウ素ブロック(一辺40mm)をその内部に配置した。その上で中性子のエネルギーの値を1.0〜15keVまで1.0keVずつ変化させ、実験データからα粒子とリチウム粒子の数を数えた。

3.結果
1.0keV〜15keVのエネルギーにおいてα粒子とリチウム粒子は生成されなかった。

4.考察
先行研究と結果が一致しなかったことから、今回使用したGeant4の物理モデルの設定が不十分であったこと、照射した中性子の数が少なかったこと、プログラムにおける粒子の検出精度が低かったことが考えられる。今後は今回の研究よりも照射するビームのエネルギーを細かく変化させたり、さらに高いエネルギーに設定させたりして再度実験を行い、物理モデルを見直したいと思う。中性子のエネルギーを変えて実験するだけでなく、α粒子とリチウム粒子が最も生成されるビームの照射角度についてもシミュレーションを行う予定である。