日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG18] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

2022年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:坂谷 尚哉(立教大学 理学部 物理学科)、コンビーナ:小川 和律(宇宙航空研究開発機構)、吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、コンビーナ:横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、座長:吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、坂谷 尚哉(立教大学 理学部 物理学科)、小川 和律(宇宙航空研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[PCG18-01] イオン化レートの向上を目指した,惑星探査機搭載用電子衝突法イオン源の開発

*川島 桜也1柳瀬 菜穂1斎藤 義文2平原 聖文3横田 勝一郎4笠原 慧1 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所、3.名古屋大学、4.大阪大学)


キーワード:宇宙探査、電子銃、イオン源

天体の保持する大気の化学組成・同位体組成の測定は,その天体の進化の描像や揮発性物質の起源を議論する上で不可欠である.このような大気の組成測定において,中性粒子質量分析器は有効なツールである.過去の例では例えば,火星からの大気散逸レートを測定することで古代火星の表層環境の推定に貢献したNGIMS/MAVEN(Mahaffy et al. 2015)などがある.将来ミッションにおいては,詳細化する惑星大気学の研究に合わせて希ガスや微量同位体などの希薄成分の測定が期待されており,惑星探査用中性粒子質量分析器の高感度化は重要な課題である.特に本研究では,イオン源におけるイオン化レートを向上させることによる高感度化への貢献を目指して研究開発を行っている.
 惑星探査機搭載用中性粒子質量分析器のイオン源は,その簡便性から電子衝突法に基づいて設計されてきた.その電子源としては,従来3%Re-Wフィラメントが用いられている(e.g., Mahaffy et al. 2012).一方で本開発では,Y2O3コーティングを施したIrフィラメントを用いている.Richardson-Dushmanの式によれば,低い仕事関数を持つ素材は,同じ作動温度でもより高い電子エミッション量を達成可能であり,実際に実験からは >2 mAの電子エミッションが十分達成可能であることを確認している(この電子エミッション量は,過去に報告されている探査用イオン源の最大電子エミッション量~200 μA(e.g., Mahaffy et al., 2012)の10倍以上の値である).また実験用試作機を用いたイオン化実験からは,サンプルガス分圧とイオン電流量の線形性(~1×104 nA/Pa)が確認できており,さらに冗長性のために2台搭載した切り替え可能な光学系についてそのイオン化レートが1%以内で一致していることも確認できている.加えて実験用試作機を用いた装置耐久試験(ON/OFF = 30min/1hour × 100cycle,8hour/1hour × 100cycle)からは,素早いON/OFFを伴う断続的な長時間使用においても,高いイオン化レートが持続することを確認している.