日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09] 宇宙天気・宇宙気候

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (Ch.03)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、コンビーナ:Pulkkinen Antti A(NASA Goddard Space Flight Center)、坂口 歌織(情報通信研究機構)、コンビーナ:塩田 大幸(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、坂口 歌織(情報通信研究機構)、塩田 大幸(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

11:00 〜 13:00

[PEM09-P04] 昭和基地におけるミリ波観測から導出したオゾン鉛直分布の評価および新たな多輝線分光観測のための観測手法と解析プログラムの開発

*水野 亮1、範 士迅1長浜 智生1中島 拓1、後藤 宏文1大山 博史2 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.国立環境研究所)

キーワード:ミリ波分光、オゾン、南極

我々は2011年から南極昭和基地において、太陽活動が大気組成に与える影響を明らかにすべくミリ波分光計を用いて一酸化窒素やオゾン等の大気微量分子の観測を行ってきた。また2020年には、超伝導受信機の多チャンネル化とデジタル分光計を広帯域化した第2世代のミリ波分光計により、一酸化窒素とオゾンを含む多輝線の同時分光観測が可能となった。
しかしその一方、データ解析面、特にオゾンの鉛直分布解析の開発がやや遅れがちであった。これまで20年以上オゾンの観測を継続している陸別でのデータに比べ昭和でのオゾン観測から導出したオゾン混合比はばらつき大きいという問題があった。今回、(1)過去10年あまりのデータを有する第1世代ミリ波分光計観測データの見直しと、(2)第2世代ミリ波分光計による新たな周波数スイッチング法によるオゾン観測データの解析プログラムの開発を行った。
(1)に関しては、下層大気の吸収を補正するための光学的厚みの計算が適切になされていなかったこと、および光学的厚みが空間的非一様(すなわち、雲の厚みが空の方向で大きく変化する気象状況)の場合に高度角スイッチングで観測する2方向の空で光学的厚みの差が大きく補正するのが困難であったことが大きな原因であったことが明らかになった。そこで、リトリーバル解析の初期推定値として用いているオゾン鉛直分布気候値からフォワードモデルで計算したスペクトルと実際の観測スペクトルの強度比に相当するスペクトルスケール因子(SPSF)と昭和基地で気象庁が行なっているオゾンゾンデから得られたオゾンの鉛直分布から計算したスケール因子(OSSF)を組み合わせることで、適切に校正されたスペクトルデータを選別するスクリーニング条件を経験的に導いた。
(2)に関しては、それまで周波数をスイッチする前と後の2つのデータを合成して一つのデータを得るリフォームという操作(Nagahama et al. 1998など)をして、そのスペクトルデータをリトリーバル解析にかけていたが、今回は2本のオゾンスペクトルが隣接していた(約 180 MHz離れている)こともあり、リフォームをせずに、フォワードモデルの方を周波数スイッチング観測を再現するように改変し、リトリーバル解析を行うようにした。周波数スイッチングでは、高度角スイッチングと異なり、同じ方向の空を観測しているために、空の非一様性の影響は受けにくいと考えられる。太陽活動に伴う高エネルギー粒子の影響の研究では、短期間のオゾンの変動を十分な精度で評価しなければならないため、導出したオゾン混合比のばらつき(=標準偏差)を抑えることが重要である。
衛星測器AURA/MLSとの比較で(1)の第1世代のオゾンデータについては、新たなスクリーニング条件を用いることで現時点で、標準偏差を21 - 55kmの範囲で22%以下だったものから17%以下に改善できた。(2)の周波数スイッチングデータの解析では 33 - 60kmの範囲で10%以下まで抑えられていることが確認できている。今後、経験則を用いてさらに光学的厚みの補正法の改善を行ないさらにデータの精度を高めていく予定である。発表では、その時点で達成できた解析結果の精度について報告し議論する。