日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09] 宇宙天気・宇宙気候

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (Ch.03)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、コンビーナ:Pulkkinen Antti A(NASA Goddard Space Flight Center)、坂口 歌織(情報通信研究機構)、コンビーナ:塩田 大幸(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、坂口 歌織(情報通信研究機構)、塩田 大幸(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

11:00 〜 13:00

[PEM09-P10] 静止軌道高エネルギー陽子線計測装置(CHARMS-p)の開発状況

*大辻 賢一1、三谷 烈史2 (1.国立研究開発法人情報通信研究機構、2.国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:宇宙天気、高エネルギー陽子、シリコン半導体検出器、チェレンコフ光検出器

太陽で発生する爆発現象であるフレアや太陽プラズマの噴出現象であるコロナ質量放出(Coronal Mass Ejection: CME)では、陽子や電子、重イオンが加速されて数MeV~数GeV ものエネルギーを持つ粒子として地球に飛来することがある。特に高エネルギー陽子に着目した観点においてはこの現象をSEPイベント(Solar Energetic Particle Event)と呼び、宇宙飛行士や高高度・高緯度を飛行する航空機内の乗客・乗員の被ばくや、シングルイベントに代表される衛星障害など、様々な影響をもたらす。このため、これらの宇宙天気的被害を引き起こす高エネルギー陽子を監視する必要がある。現在情報通信研究機構では、静止軌道衛星に搭載可能な宇宙環境計測装置(CHARMS: charging and radiation monitors for space weather)の開発を進めている。その中で、静止軌道における高エネルギー陽子線のエネルギースペクトルを取得可能な計測装置として、陽子線計測装置(CHARMS-p)の概念設計を行った。
CHARMS-pでは、現在運用中のひまわり衛星に搭載されている宇宙環境モニター(SEDA)の測定エネルギーレンジ(20 MeV-80 MeV)を下限10 MeV、上限1 GeVまで拡大することを計画している。これにより、米国NOAAの静止気象衛星GOESに搭載されているSGPS(Solar and Galactic Proton Sensor)と同様のエネルギーレンジを持たせ、静止軌道高エネルギー陽子環境を相補的に計測することを目的としている。また、情報通信研究機構における宇宙天気予報業務で行っている10 MeV以上の高エネルギー陽子フラックス値の監視を、自国の衛星による観測データで実施することが可能となり、安定的な宇宙天気監視に資する。
高エネルギー陽子はフラックス値の変動が非常に大きく、SEPイベントが発生した際には104 [cm-2 sr-1 s-1]を超える一方で、静穏時には1を下回るため、ダイナミックレンジを大きく(~106)とる必要がある。一方で信号処理速度には上限が存在するため、単一の計測装置で低フラックス時に合わせた設計とするとイベント発生時には信号処理が飽和してしまう。また上述の通りエネルギーレンジも幅広いため、特に高エネルギー側(~1 GeV)の陽子を検出するためには従来のシリコン半導体検出器の積層枚数が非現実的なまでに増大してしまう。これらの課題を解決するため、概念設計ではシリコン半導体検出器とチェレンコフ光検出器を並列で組み合わせたハイブリッド方式とし、低エネルギー帯(10 MeV~250 MeV)をシリコン半導体検出器、高エネルギー帯(250 MeV~1 GeV)をチェレンコフ光検出器でそれぞれ測定する手法を採用した。本ポスター講演では高エネルギー陽子線計測装置の概要を紹介するとともに、チェレンコフ光検出装置による高エネルギー粒子検出の要素試験結果について報告を行う。