日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM10] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (5) (Ch.05)

コンビーナ:佐藤 由佳(日本工業大学)、コンビーナ:家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、藤本 晶子(九州工業大学)、コンビーナ:今城 峻(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)、座長:佐藤 由佳(日本工業大学)、家田 章正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、藤本 晶子(九州工業大学)、今城 峻(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)


11:00 〜 13:00

[PEM10-P04] あらせ衛星,EMCCD 全天カメラ,EISCAT レーダーによる磁気共役同時観測を用いた脈動オーロラ電子のエネルギーに関する研究

*伊藤 ゆり1細川 敬祐1小川 泰信2三好 由純3大山 伸一郎3中村 紗都子3笠原 禎也4松田 昇也4篠原 育5 (1.電気通信大学、2.国立極地研究所、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所、4.金沢大学、5.宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究所)


キーワード:脈動オーロラ

オーロラは,明瞭な形状の「ディスクリートオーロラ」と曖昧な形状の「ディフューズオ ーロラ」に分類される.ディフューズオーロラの多くは準周期的に明滅を繰り返しており,この明滅が脈を打つ様に見えることから脈動オーロラ(Pulsating Aurora: PsA)と呼ばれている.磁気圏の電子のうち,磁気赤道面付近で発生する自然電磁波「コーラス波動」と波動粒子相互作用を起こし,電離圏まで到達して PsA の発光に寄与するものを「PsA 電子」と呼ぶ.近年の研究によって,PsA の発生時に,放射線帯を起源とする準相対論的高エネルギー電子 (相対論的電子) が同時に降下していることが示唆されている.このことは,PsA の形態や PsA 電子のエネルギーを観測することによって,放射線帯電子を含む磁気圏の高エネルギー電子の消失過程を 2 次元的に可視化できる可能性を示している.しかし,これまでの研究では,PsA の形態と PsA 電子のエネルギーがどのような関係を持ち,どのような物理過程によって制御されているのかが理解されていない.
本研究では,磁気圏を飛翔するジオスペース探査衛星「あらせ」,高速撮像全天カメラ 「EMCCD カメラ」,大型の大気レーダー「EISCAT-UHF レーダー」の観測を複合的に用いて,PsA の形態と PsA 電子のエネルギー特性の関係を調べた.特に,コーラス波動,PsA,電子密度の高度分布の衛星・地上同時観測が成立し,かつ PsA の形態遷移が顕著に識別できる 2021 年 1 月 12 日 01:00:00–05:00:00 UT のイベントについて解析を行った.EISCAT-UHF レーダーによる電子密度の高度分布と GLOW モデル (Solomon et al., 2017) から PsA 電子のエネルギーを推定した結果,あらせ衛星の観測データから算出したコーラス波動の共鳴エネルギーとの間に整合性が認められた.このことから,本イベントにおける PsA が,コーラス波動による波動粒子相互作用によって駆動されていることが分かる.また,PsA の形態に伴って PsA 電子のエネルギーが変化する傾向も見て取ることができた.具体的には,PsA の空間構造が明瞭である場合(輪郭がはっきりとしている場合)に,20 keV を超えるような高いエネルギーを持った電子の降下が見られることが明らかになった.この事実は,PsA の形態と PsA 電子のエネルギーの変化が,「ダクト」と呼ばれる電子密度が周囲よりも低い,あるいは高い管状の領域の存在およびコーラス波動の高緯度への伝搬によって制御されていることを示唆する.さらに,真夜中よりも朝側の方が PsA のエネルギ ーが高いという過去の観測的事実が,真夜中から朝側にかけての領域ではダクトが形成されることが多く,その結果として,コーラス波動が高い緯度まで伝搬ができるようになるためである,という推測もできる.発表では,具体的な解析手法と解析事例を紹介し,PsA の形態と降下電子エネルギーを制御しているメカニズムを議論する予定である.