11:00 〜 13:00
[PEM10-P15] 時空間GNSS-TECトモグラフィー手法を用いたはやぶさ2のカプセル再突入に伴う電離層擾乱の検知
キーワード:GNSS-TEC、トモグラフィー、電離層
はやぶさ2は2020年12月6日に小惑星リュウグウの試料と共にカプセルの地球への再突入を成功させました。カプセルを地球に再突入をさせる際に、電離層を貫き、大気圏に秒速約12kmの速度で侵入し、大気との相互作用により衝撃波を発生させる。その衝撃波は地上に達するだけでなく、電離層での衝撃波の生成およびその伝搬も予想され、GNSS観測に基づくTotal Electronic Contents (TEC)解析により、電離層中を伝搬する衝撃波のエネルギー伝搬を観測することができる。一般に、ロケットやミサイルなどの飛翔体でも電離層を貫くような場合にも、GNSSのTEC解析によって、その軌跡を追うことができる。しかしながら、衝撃波は生成されるが化学推進燃料を燃焼させるため、水蒸気が発生し、電離層中の電子と水蒸気が結合することで、電離層中の電子を枯渇させることが知られている。よって、TEC解析による飛翔体の解析では、化学反応による電子の枯渇が強く観測されることから、電離層の力学的応答を通常の人工的な飛翔体から推定することは困難である。このような背景のなか、近年の電離層の研究において地震動や津波のような力学的な電離層擾乱を観測するなど、電離層観測の重要性が高まっており、特に力学的応答特性を明らかにすることは、より定量的な議論には必要である。
我々ははやぶさ2のカプセルの地球への再突入に伴う電離層の擾乱を地上における高サンプリングのキャンペーンGNSS観測を実施しTEC解析をおこなうことで、カプセルの突入による電離層の擾乱を捉えることを試みた。そのために、カプセルが到着予定地のオーストラリアのウーメラ近郊に高サンプリングのGNSS観測網を構築してカプセルの地球への再突入に伴う電離層の擾乱を観測した。これらのGNSS観測データはGNSS衛星の動きに伴う見かけ上のTEC変化が含まれる。それらを考慮する必要があることから、TECによる電離層の時空間TECトモグラフィー手法を構築し、本観測に適用した。
本研究ではオーストラリアのウーメラ上空を120kmから420kmを7層に、カプセル再突入の領域をおよそ50×50程度の空間ブロック(30kmから50km)に分割した。このブロック分割により未知数の数は、18000程度でありそれぞれブロック内でのTEC変化量を各時間ステップ事に求めることで、時空間TECトモグラフィーを構築した。解の安定性のために、先験情報として空間的に隣り合わせのブロックにスムージングを導入しダンピングパラメータにより制御を行った。また、TECの観測データは時間方向に連続であることから、得られた時間変化も連続であることから、時間方向には平滑化の先験情報を導入せず、時間ステップ毎に独立してTEC変化量を推定した。このため、時空間TECトモグラフィー解析の並列計算が容易になり、効率的な計算が可能となる。なお、解析の時間ははやぶさ2の本体の最接近時間の前後およそ10分程度とした。
解析データはオーストラリア国内を主とする392GNSS観測点のうち、ブロックの設定領域にGNSS衛星と観測点間の波線が通過する可能性がある観測点を288観測点を選定した。それらの観測点とGNSS衛星と組み合わせによって得られたTECデータは12万トレース程度となり、この組み合わせをデータセットとした。このデータの中で各時間ステップ毎にそれぞれのブロックを通過する組み合わせを抽出して、解析データとしてもちいた。時間ステップ毎にデータ数は異なるがおよそ700から1200程度のTECデータを各時間ステップ毎に用いている。
観測データのノイズリダクショが90%以上を時空間TECトモグラフィー手法によって説明できるモデルを構築した。一方、ダンピングパラメータの選択により、ノイズリダクションが70%から95%程度に変化し、統一的なダンピングパラメータの選択について検討する必要がある。解析の結果、はやぶさ2の再突入に伴う電離層擾乱の時空間変動を捉えることができたため、その詳細について紹介する。
図はGNSS-TECの解析の一例を示している。緑の四角ははやぶさ2の場所を示している。
我々ははやぶさ2のカプセルの地球への再突入に伴う電離層の擾乱を地上における高サンプリングのキャンペーンGNSS観測を実施しTEC解析をおこなうことで、カプセルの突入による電離層の擾乱を捉えることを試みた。そのために、カプセルが到着予定地のオーストラリアのウーメラ近郊に高サンプリングのGNSS観測網を構築してカプセルの地球への再突入に伴う電離層の擾乱を観測した。これらのGNSS観測データはGNSS衛星の動きに伴う見かけ上のTEC変化が含まれる。それらを考慮する必要があることから、TECによる電離層の時空間TECトモグラフィー手法を構築し、本観測に適用した。
本研究ではオーストラリアのウーメラ上空を120kmから420kmを7層に、カプセル再突入の領域をおよそ50×50程度の空間ブロック(30kmから50km)に分割した。このブロック分割により未知数の数は、18000程度でありそれぞれブロック内でのTEC変化量を各時間ステップ事に求めることで、時空間TECトモグラフィーを構築した。解の安定性のために、先験情報として空間的に隣り合わせのブロックにスムージングを導入しダンピングパラメータにより制御を行った。また、TECの観測データは時間方向に連続であることから、得られた時間変化も連続であることから、時間方向には平滑化の先験情報を導入せず、時間ステップ毎に独立してTEC変化量を推定した。このため、時空間TECトモグラフィー解析の並列計算が容易になり、効率的な計算が可能となる。なお、解析の時間ははやぶさ2の本体の最接近時間の前後およそ10分程度とした。
解析データはオーストラリア国内を主とする392GNSS観測点のうち、ブロックの設定領域にGNSS衛星と観測点間の波線が通過する可能性がある観測点を288観測点を選定した。それらの観測点とGNSS衛星と組み合わせによって得られたTECデータは12万トレース程度となり、この組み合わせをデータセットとした。このデータの中で各時間ステップ毎にそれぞれのブロックを通過する組み合わせを抽出して、解析データとしてもちいた。時間ステップ毎にデータ数は異なるがおよそ700から1200程度のTECデータを各時間ステップ毎に用いている。
観測データのノイズリダクショが90%以上を時空間TECトモグラフィー手法によって説明できるモデルを構築した。一方、ダンピングパラメータの選択により、ノイズリダクションが70%から95%程度に変化し、統一的なダンピングパラメータの選択について検討する必要がある。解析の結果、はやぶさ2の再突入に伴う電離層擾乱の時空間変動を捉えることができたため、その詳細について紹介する。
図はGNSS-TECの解析の一例を示している。緑の四角ははやぶさ2の場所を示している。