日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2022年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山本 衛(京都大学生存圏研究所)、コンビーナ:小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:小川 泰信(国立極地研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

10:45 〜 11:15

[PEM12-07] 惑星間空間シンチレーション観測を用いた太陽風研究と太陽圏科学

★招待講演

*岩井 一正1徳丸 宗利1藤木 謙一1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:太陽風、太陽圏、コロナ質量放出、宇宙天気、惑星間空間シンチレーション、フェーズドアレイ

太陽から噴き出す高速のプラズマ流である太陽風は地球を含む全ての惑星系を包含する広大な領域「太陽圏」を形成している。太陽風は時に秒速800kmもの高速になって地球に到来し、地球周辺環境に大きな擾乱を与える。この擾乱によって、通信障害や人工衛星障害など、社会インフラが甚大な被害を被る場合もある。太陽風中の擾乱が電波を散乱することで惑星間空間シンチレーション(IPS)現象が発生する。地上の電波望遠鏡を用いたIPS観測はグローバルな太陽圏構造を理解する上で重要な手法となってきた。名古屋大学では327MHz帯域において、最大約4000平方メートルの物理開口面積を持つシリンドリカルパラボラアンテナからなる独自のIPS観測装置を開発し、国内3カ所に設置することで、地上電波観測から太陽風の観測に取り組んできた。得られた太陽風データはグローバルな太陽圏構造の理解に貢献することに加え、惑星間空間を伝搬中のコロナ質量放出現象を効率良く検出し、その地球への到来予測を可能とすることで、宇宙天気予報の高精度化にも貢献してきた。一方、太陽風の加速過程の理解や、太陽風予測の高精度化にはIPS観測の稠密化が必要であることがわかってきた。そこで、本研究では次世代の太陽風観測装置の計画を進めている。本計画では、多数のアンテナから構成される平面フェーズドアレイアンテナを建設し、そこに研究代表者らの開発したデジタルフェーズドアレイ装置を搭載することで、多数の方向を同時に観測できる次世代太陽風観測装置を開発する。これを用いた太陽風の多方向同時観測で、既存装置の10倍の太陽風観測を実現する。本計画は太陽風の理解や宇宙天気予報の高精度化に大きく貢献することに加えて、多様な関連プロジェクトとの連携から太陽地球系の包括的理解にも貢献できると考えられる。