日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (Ch.04)

コンビーナ:Huixin Liu(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、コンビーナ:Deng Yue(University of Texas at Arlington)、座長:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、新堀 淳樹(名古屋大学宇宙地球環境研究所)


11:00 〜 13:00

[PEM13-P13] 令和三年八月の福徳岡ノ場の噴火で励起された大気モードのQZSSによる観測

*藤本 達也1日置 幸介1 (1.北海道大学)

キーワード:GNSS、GPS、QZSS、TEC、福徳岡ノ場

プリニー式の連続的火山噴火は、数分の特徴的な周期を持つ大気の固有振動をしばしば励起する。またそれらは近傍のGNSS局のデータを用いて電離圏全電子数(TEC)の振動として観測することができる。これまで2010年インドネシア・ムラピ火山の噴火(Cahyadi et al., 2020)、2014年のインドネシア・ケルート火山の噴火(Nakashima et al., 2015)、2015年のチリ・カルブコ火山の噴火(Shults et al., 2016)などの事例が報告されているが、国内での観測例はなかった。伊豆小笠原弧の南硫黄島近傍に位置する福徳岡ノ場の2021年8月13日の噴火はプリニー式噴火と考えられ、日本列島に漂着した大量の軽石は社会問題となった。本研究ではGEONET GNSS点が設置されている小笠原父島および母島、また硫黄島の計5点のデータを用いて、火山噴火前後のTECを解析した。硫黄島の2点以外ではGPSに加えてGLONASS, Galileo, QZSSのデータも取得しており、本研究ではそれらすべてのGNSSのデータを利用した。その結果UT 5:16頃に始まって数時間継続した周期4分程度のTECの振動が、速度約0.8 km/sで火山から同心円状に広がってゆく様子が確認された。これは日本国内の火山噴火による大気モードの励起の初めての観測例である。また今回用いられたQZSSのPRN7は静止衛星であり、従来のGPSのような位置が時々刻々変化する数時間の細切れデータではなく、同じ位置のTEC連続データが得られる。今回はその特徴を利用して、(1)長期間の解析で高分解能の周波数スペクトルの取得、(2)大気モードの強さの時間的な推移の把握、を行った。その結果、3.7, 4.4, 4.8, 5.4 mHzの大気自由振動やそのオーバートーンのピークが確認できた。また急激に始まった振動の振幅が数時間の時定数で小さくなってゆく様子もとらえることができた。従来TECの研究に用いられていたL1, L2の周波数に加えて、今回はL5の新しい搬送波周波数の位相も用いた。L1, L2, L5の三周波法で受信機内部ノイズと実際の電離圏の変動を識別することができるが、今回のデータから噴火で励起された大気モードのdecayを求め、周波数ピークの強さの変化から見たdecayと調和的であることを示した。