日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] Frontiers in solar physics

2022年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横山 央明(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:今田 晋亮(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、鳥海 森(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、コンビーナ:Sterling Alphonse(NASA/MSFC)、座長:横山 央明(京都大学大学院理学研究科)

10:15 〜 10:30

[PEM14-05] 太陽対流層での角運動量輸送の空間スケール分解による差動回転の理解

*森 敬都1堀田 英之1 (1.千葉大学大学院理学研究科)

キーワード:太陽、乱流、差動回転

太陽対流層を包括した3次元磁気流体計算で再現された熱対流・乱流をスペクトル解析することで、実際に角運動量を運んでいる乱流スケールを調査した。
太陽は、赤道が速く極が遅い差動回転(自転)をしていることが知られている。この差動回転は、太陽内部の乱流的な熱対流によって形成されていると考えられている。太陽が自転していることで、乱流がコリオリ力によって影響を受け、非等方的になることで角運動量を運び、差動回転を形成するというアイディアだ。これまでに数値シミュレーションによる差動回転の研究は多くあるが、そのほとんどは乱流を経度平均した「平均流」とそれ以外の「乱流」に分けてそれぞれの角運動量を調べている。しかし、実際はここで定義された「乱流」には、大小さまざまなスケールがあり、「乱流」とひとくくりにしてしまうと角運動量を運ぶ支配的なスケールを議論することが難しくなる。
本研究では、各緯度、各動径位置で経度方向にフーリエ変換を行い乱流のスケールごとの角運動量輸送の効率を調べた。ただ、単純にフーリエ変換をおこなってしまうと場所ごとに違うスケールを示してしまうので、同じスケールを示すように調整もおこなっている。本研究では、自転角速度を変えた三つの計算について解析を行なった。計算結果には赤道が速く自転する太陽型と極が速い反太陽型が含まれている。
太陽型、反太陽型の差動回転で比較したところ、太陽型のケースでは特定の空間スケールに特徴的な分布を見つけることができた。反太陽型の乱流を空間スケール分解すると、スケールが小さくなるにつれて赤道付近から中緯度で、 動径方向内向きの角運動量輸送が支配的になっていることが分かった。太陽型の場合は、中緯度の100 Mmほどの大きなスケールで動径方向外向きの角運動量輸送 が起きていることが分かった。太陽型では、赤道付近の動径方向外向きの角運動量輸送により、複数セルをもつ子午面流分布が形成され、赤道が速く自転する差動回転分布が形成されていると考えられる。また、反太陽型では、赤道から中緯度にかけての動径方向内向きの角運動量輸送により、単一セルの子午面流が形成され、子午面流による角運動量輸送は極向きになることで反太陽型の差動回転が形成されていると結論づけられた。