16:15 〜 16:30
[PEM15-04] ピックアップイオンが励起する不安定性のハイブリッドシミュレーション
キーワード:ピックアップイオン、プラズマ不安定性、ハイブリッドシミュレーション
中性粒子が電荷交換や光イオン化などによってイオン化し、太陽風の電場や磁場の力を受ける現象をピックアップという。このイオン化した粒子はピックアップイオンと呼ばれ、太陽風と共に動くことになる。ピックアップイオンはジャイロ運動するため、速度空間上では太陽風速度を中心としたリング状の分布を形成する。リング分布は不安定であるため様々な波動を励起し、波動によりピッチ角散乱を受けたピックアップイオンはシェル分布になっていくことが知られている。ピックアップイオンの起源として、星間ガス中の中性水素や、惑星・彗星から放出される重たい原子・分子が挙げられる。
これらの波については、特に陽子がリング分布を形成する場合についてよく研究されており(Min et al. 2017)、3つの不安定モードが知られている。AIC(Alfven-ion-cyclotron)モードは、磁場に対して平行な方向に成長する。多くの場合、最終的にはこの波が支配的になるが、太陽風の陽子によってサイクロトロン減衰を受け、成長しない場合もあることが知られている。これに対してミラーモードは、磁場に対して斜め方向に成長し、実周波数を持たないという特徴が良く知られている。IB(Ion-Bernstein)モードもミラーモードと同様、斜め方向に成長するが、有限の実周波数を持ち、ミラーモードに比べて短波長である。
本発表では、リング分布から励起される不安定性について二次元のハイブリッドシミュレーションを行った結果を報告する。特にピックアップイオンが陽子よりも重たいイオンの場合についてのシミュレーション結果は報告されていないことから、ピックアップイオンの質量依存性を調べることを本研究の目的とする。ピックアップイオンの初期分布としてリング分布を用いており、パラメータは先行研究であるMin et al. (2017) のものを参考にした。ピックアップイオンが陽子の場合については、結果はMin et al. (2017)で示された線形成長率とよく一致することを確認した。どの線形モードも飽和後は、徐々に長波長側にパワーがシフトしていき、最終的には長波長のAICが支配的となった。一方、ピックアップイオンの質量を陽子の4倍にした場合(He2+)、AICの線形成長率は陽子の時に比べてあまり変わらないのに対し、ミラーモードとIBは大きく下がることが分かった。これらの線形理論の値は、シミュレーションの結果と良く一致していた。また非線形段階では陽子の時と同様、AICが支配的となった。ただし、どの線形モードも陽子に比べて長波長の波が成長し、準線形・非線形段階では更に長波長側にシフトしていくため、シミュレーションの領域サイズ依存性については、今後のさらなる検討が必要である。
このような不安定性は衝撃波の下流においても重要なことが知られており、ピックアップイオンの存在下における衝撃波のダイナミクスについても、ピックアップイオンの質量依存性に着目して研究を進める予定である。
これらの波については、特に陽子がリング分布を形成する場合についてよく研究されており(Min et al. 2017)、3つの不安定モードが知られている。AIC(Alfven-ion-cyclotron)モードは、磁場に対して平行な方向に成長する。多くの場合、最終的にはこの波が支配的になるが、太陽風の陽子によってサイクロトロン減衰を受け、成長しない場合もあることが知られている。これに対してミラーモードは、磁場に対して斜め方向に成長し、実周波数を持たないという特徴が良く知られている。IB(Ion-Bernstein)モードもミラーモードと同様、斜め方向に成長するが、有限の実周波数を持ち、ミラーモードに比べて短波長である。
本発表では、リング分布から励起される不安定性について二次元のハイブリッドシミュレーションを行った結果を報告する。特にピックアップイオンが陽子よりも重たいイオンの場合についてのシミュレーション結果は報告されていないことから、ピックアップイオンの質量依存性を調べることを本研究の目的とする。ピックアップイオンの初期分布としてリング分布を用いており、パラメータは先行研究であるMin et al. (2017) のものを参考にした。ピックアップイオンが陽子の場合については、結果はMin et al. (2017)で示された線形成長率とよく一致することを確認した。どの線形モードも飽和後は、徐々に長波長側にパワーがシフトしていき、最終的には長波長のAICが支配的となった。一方、ピックアップイオンの質量を陽子の4倍にした場合(He2+)、AICの線形成長率は陽子の時に比べてあまり変わらないのに対し、ミラーモードとIBは大きく下がることが分かった。これらの線形理論の値は、シミュレーションの結果と良く一致していた。また非線形段階では陽子の時と同様、AICが支配的となった。ただし、どの線形モードも陽子に比べて長波長の波が成長し、準線形・非線形段階では更に長波長側にシフトしていくため、シミュレーションの領域サイズ依存性については、今後のさらなる検討が必要である。
このような不安定性は衝撃波の下流においても重要なことが知られており、ピックアップイオンの存在下における衝撃波のダイナミクスについても、ピックアップイオンの質量依存性に着目して研究を進める予定である。