日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、コンビーナ:三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:中村 匡(福井県立大学)、座長:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)

10:15 〜 10:30

[PEM16-06] 宇宙プラズマ中の低周波域アンテナ特性に関する粒子シミュレーション

*草地 恒史郎1三宅 洋平2臼井 英之3小嶋 浩嗣4深澤 伊吹4栗田 怜4 (1.神戸大学、2.神戸大学計算科学教育センター、3.神戸大学 大学院 システム情報学研究科、4.京都大学生存圏研究所)

キーワード:アンテナインピーダンス、粒子シミュレーション、低周波域プラズマ波動、プラズマ分散関係

宇宙空間のプラズマ電磁界環境を理解するために、科学衛星にプラズマ波動観測器が搭載される。プラズマ波動の観測には、ダイポールアンテナによる電界センサー(以降、アンテナと呼ぶ)がよく用いられている。宇宙空間ではプラズマの挙動により電磁界環境が変化するため、衛星に搭載されたアンテナの特性は地上とは異なる。観測した波動データは、アンテナ特性を考慮して較正が行われるため、プラズマ中におけるアンテナ特性の解明はプラズマ波動観測データの正しい理解に役立つ。これまで電子運動が関与する高周波域でのアンテナ特性は数多く研究されてきた[1][2][3]が、イオン運動が重要となる低周波域のアンテナ特性については、まだ未解明な部分が多い。現在検討されている極域編隊探査FACTORSでも、イオン加熱や加速に関連したイオンモードプラズマ波動の観測が予定されている。
 そこで本研究では、イオンの運動が関係する低周波域のアンテナ特性について、アンテナインピーダンスという観点から、粒子シミュレーションを用いて解析を行った。シミュレーションではPIC法を採用しプラズマ粒子と3次元のシミュレーションで満たされた領域の中央にダイポールアンテナを置き、その中央で電流励振することによってアンテナインピーダンスを取得するデルタギャップ給電法[4]を用いた。全てのシミュレーション結果に共通した特徴として、インピーダンス共振がみられたのは、地上の半波長ダイポールアンテナとは異なり、アンテナ長より十分に短い波長に対応する波数域の波動分散特性を反映していた。この波数域に注目した結果、低域混成波、イオンサイクロトロン高調波と思われる波動によるインピーダンス共振を観測することができた。さらに (1)イオンの温度、(2)アンテナに対する背景磁場の角度、(3)背景磁場強度を変化させてシミュレーションを行うことにより、インピーダンス共振の強弱のプラズマ環境依存性を調査した。


参考文献

[1]D.T.Nakatani, H.H.Kuehl, “Input impedance of a short dipole antenna in a warm anisotropic plasma, 1, Kinetic theory”, Radio Science, Vol. 11 No. 5, pp. 433-444 (1976)

[2]S.Adachi, T.Ishizone and Y.Mushiake, “Transmission line theory of antenna impedance in a magnetoplasma”, Radio Science, Vol. 12 No. 1, pp. 23-31 (1977)

[3]Y.Miyake, H.Usui, H.kojima, Y.Omura, and H.Matsumoto “Electromagnetic Particle-In-Cell simulation on the impedance of a dipole antenna surrounded by an ion sheath”, Radio Science, Vol. 43, RS30004 (2008)

[4]Raymond Luebbers, Li Chen, Toru Uno, and Saburo Adachi, “Fdtd calculation of radiation patterns, impedance, and gain for a monopole antenna on a conducting box”, IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 40 No. 12, pp. 1577-1583(1992)