日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2022年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、コンビーナ:三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:中村 匡(福井県立大学)、座長:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、三好 隆博(広島大学大学院先進理工系科学研究科)

11:15 〜 11:30

[PEM16-09] 一様磁場中におけるカイラルプラズマ不安定性の線形解析

西田 慧1、*三好 隆博1 (1.広島大学大学院先進理工系科学研究科)

キーワード:カイラルプラズマ不安定性、カイラル磁気流体力学、線形解析

極初期宇宙や高エネルギー原子核衝突など極限的環境において、右巻きフェルミ粒子、左巻きフェルミ粒子それぞれの数密度が不均衡な物質(カイラル物質)の存在が理論的に予言される。カイラル物質中では、磁場に沿って無散逸電流を輸送するカイラル磁気効果が発現すると予想される。他方、荷電粒子群のマクロな挙動は磁気流体力学によって支配される。カイラル物質のマクロな挙動を解明するため、カイラル磁気効果を含むカイラル磁気流体力学の理論・シミュレーション研究が近年進みつつある[e.g., Rogachevskii et al., 2017; Masada et al., 2018]。しかし、カイラル磁気流体力学は、その基本的な線形安定性に関してさえ、未だ理解は不十分である。そこで本研究の目的は、抵抗性カイラル磁気流体力学の線形解析を行い、一様磁場中のカイラルプラズマ不安定性[Akamatsu and Yamamoto, 2013]を解明することにある。

カイラルプラズマ不安定性では、カイラル磁気効果による無散逸電流とその電流に誘起される磁場の正のフィードバックによって、磁場のゆらぎが増大する。特に抵抗性カイラル磁気流体力学では、カイラル磁気効果と抵抗拡散が競合し、臨界波数より小さなモードのみが成長する。さらに背景磁場のある系では、磁場のゆらぎは背景磁場を介して運動方程式と結合する。特に本研究ではランキスト数Sに注目し、背景一様磁場に平行なモード、および垂直なモードについて線形解析を行った。ここでは簡単のため、カイラル不均衡を時空間一様と仮定した。解析の結果、平行モードはあらゆるSで不安定領域が存在するのに対し、垂直モードではあるS以上では完全に安定化することを明らかにした。

参考文献:
I. Rogachevskii et al., Astrophys. J., 846:153 (2017)
Y. Masada et al., Phys. Rev. D98, 083018 (2018)
Y. Akamatsu and N. Yamamoto, Phys. Rev. Lett. 111, 052002 (2013)