日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (5) (Ch.05)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、コンビーナ:三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:中村 匡(福井県立大学)、座長:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)

11:00 〜 13:00

[PEM16-P08] 相対論的Maxwell混合分布モデル

*上野 玄太1銭谷 誠司2 (1.統計数理研究所、2.神戸大学)

キーワード:PICシミュレーション、特殊相対論、粒子分布関数、統計モデル、EM アルゴリズム、Maxwell分布

相対論的プラズマの分布関数を解析するため、複数の相対論的Maxwell分布が構成する混合分布モデルを提案した。まず、従来なされていなかった、バルク速度がゼロでない場合の正規化定数の導出を含め、相対論的Maxwell分布の基本的な特性をまとめた。また、相対論的Maxwell分布のパラメータ(バルク速度、温度)の最尤推定量が満たす単純な方程式を導出した。次に、相対論的Maxwell分布の重み付き和で表現される相対論的Maxwell混合モデル(Relativistic Maxwellian mixture model, R-MMM)を提案した。R-MMMのパラメータ、すなわち各成分分布の混合比率、バルク速度、および温度を推定するためのEMアルゴリズムを開発した。特に、EMアルゴリズムのMステップにおいては、完全データの対数尤度の条件付き期待値を最大化することが保証されている解を持つ方程式を導出した。EMアルゴリズムのパラメータの初期値には、データを成分分布の数と同数のグループに分割し、各グループで得られる最尤推定値またはモーメント法による推定値を使用する。相対論的な電子-陽電子プラズマのPICシミュレーションの結果に2成分R-MMMを適用し、シミュレートされた分布関数を2個の成分に分離した。その結果、各成分のマクロ量の情報を抽出が可能となった。例えば、一方の成分のバルク速度は大きく、もう一方の成分はほぼ停滞していること、2個の成分の温度はほぼ同じで、PICシミュレーションの初期温度と一致していることが分かった。これらのパラメータに基づいて、衝撃波や不連続性などの大規模なプラズマ環境を推測することが可能であると考えられる。

参考文献

Genta Ueno and Seiji Zenitani, "Relativistic Maxwellian mixture model", Physics of Plasmas 28, 122106 (2021) https://doi.org/10.1063/5.0059126