11:00 〜 13:00
[PPS01-P09] 速度分布関数の空間変化を考慮した磁気圏プラズマの沿磁力線数密度・圧力分布モデルの開発
キーワード:分散性Alfvén波、電子加速過程、数値シミュレーション、木星-イオ系、プラズマ分布
木星探査機Junoの観測により、木星メインオーバルにて数百eVから数百keVまでの幅広いエネルギー帯におけるオーロラ電子降下が確認された[Mauk et al., 2017]。観測された電子のエネルギー分布ならびにピッチ角分布から、分散性Alfvén波(DAWs)による電子加速が木星におけるオーロラ形成過程において重要な役割を果たしていることが示唆された[Saur et al., 2018]。地球極域でも、数keVまでのエネルギー帯におけるDAWsによるオーロラ電子降下が確認された[Chaston et al., 2002]。磁化惑星におけるDAWsによる電子加速過程の重要性が高まる一方で、電子加速が効率的に生じる領域や、加速エネルギーの上限値を決める主要因については未解明の問題が残されている。
DAWsによる電子加速過程を考察するためには、DAWsの特性、すなわち分散関係を定める背景プラズマの数密度と圧力の空間分布を明らかにする必要がある。背景プラズマの空間分布に関する過去の研究では、数密度分布に関する理論・経験モデルや圧力分布に関する理論モデル[e.g., Angerami and Thomas, 1964; Phipps et al., 2018]が提案されてきた。一方で、温度分布が数密度分布とは独立に与えられるなど、数密度と圧力の分布をの双方を矛盾なく記述する理論モデルは提案されていない。以上の背景の下、本研究では、磁力線に沿った数密度と圧力の分布を速度分布関数に基づき求める理論モデルPlasma Distribution Solver (PDS)を開発した。PDSはStatic Vlasov Code (SVC) [Ergun et al., 2000; Su et al., 2003; Matsuda et al., 2010]を基に開発された。SVCは、プラズマの速度空間上のaccessibility [e.g., Persson, 1966; Chiu and Schulz, 1978]を考慮して、速度分布関数から磁力線沿いの数密度分布を求める理論モデルである。我々はSVCにおける速度分布関数の空間変化の与え方を再検討して、適切な実装を図ることでより現実的なプラズマ分布を求めることを可能にし、さらにその速度分布関数から圧力を計算した。
本講演では、本研究により開発されたPDSを木星-イオ系に適用し、過去の研究で用いられたSVCで得られるプラズマ分布との違いを調べた結果について報告する。PDSとSVCの結果では数密度の分布の傾向が異なり、特にauroral cavityでは、PDSでは2 cm-3で一定になっている一方で、SVCでは0.5 ~ 6 cm-3の間で磁束密度に比例して変化する様相が示された。この違いは、PDSとSVCにおける速度分布関数の取り扱いの違いによる影響を顕著に示すものである。さらに、数密度分布からAlfvén速度を算出し、イオから木星電離圏に到達するまでの時間を算出したところ、PDSでは370秒と見積もられた。したがって、Alfvén波の伝播を解く際にPDSの解を背景場として用いる場合、少なくともこの時間スケールでは境界条件が変動しないという仮定を用いることと等価となる。本講演ではさらに、PDSにより得られた結果の詳細を報告するとともに、プラズマ密度分布に関するSVCとの比較ならびにプラズマ分布から得られるDAWsの特性の空間変化について議論する。
DAWsによる電子加速過程を考察するためには、DAWsの特性、すなわち分散関係を定める背景プラズマの数密度と圧力の空間分布を明らかにする必要がある。背景プラズマの空間分布に関する過去の研究では、数密度分布に関する理論・経験モデルや圧力分布に関する理論モデル[e.g., Angerami and Thomas, 1964; Phipps et al., 2018]が提案されてきた。一方で、温度分布が数密度分布とは独立に与えられるなど、数密度と圧力の分布をの双方を矛盾なく記述する理論モデルは提案されていない。以上の背景の下、本研究では、磁力線に沿った数密度と圧力の分布を速度分布関数に基づき求める理論モデルPlasma Distribution Solver (PDS)を開発した。PDSはStatic Vlasov Code (SVC) [Ergun et al., 2000; Su et al., 2003; Matsuda et al., 2010]を基に開発された。SVCは、プラズマの速度空間上のaccessibility [e.g., Persson, 1966; Chiu and Schulz, 1978]を考慮して、速度分布関数から磁力線沿いの数密度分布を求める理論モデルである。我々はSVCにおける速度分布関数の空間変化の与え方を再検討して、適切な実装を図ることでより現実的なプラズマ分布を求めることを可能にし、さらにその速度分布関数から圧力を計算した。
本講演では、本研究により開発されたPDSを木星-イオ系に適用し、過去の研究で用いられたSVCで得られるプラズマ分布との違いを調べた結果について報告する。PDSとSVCの結果では数密度の分布の傾向が異なり、特にauroral cavityでは、PDSでは2 cm-3で一定になっている一方で、SVCでは0.5 ~ 6 cm-3の間で磁束密度に比例して変化する様相が示された。この違いは、PDSとSVCにおける速度分布関数の取り扱いの違いによる影響を顕著に示すものである。さらに、数密度分布からAlfvén速度を算出し、イオから木星電離圏に到達するまでの時間を算出したところ、PDSでは370秒と見積もられた。したがって、Alfvén波の伝播を解く際にPDSの解を背景場として用いる場合、少なくともこの時間スケールでは境界条件が変動しないという仮定を用いることと等価となる。本講演ではさらに、PDSにより得られた結果の詳細を報告するとともに、プラズマ密度分布に関するSVCとの比較ならびにプラズマ分布から得られるDAWsの特性の空間変化について議論する。